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【マガシークの井上社長に聞く】 ファッションECの差別化戦略とは?

2020年 4月 3日 12:00

 マガシークは、ファッション通販サイト「マガシーク」と「dファッション」の2サイトを軸に成長を目指す。2020年3月期の取扱高は暖冬などの影響があったものの、前年比10%近い伸びとなる290億円程度で着地する見通しだ。マガシークサイトについては「ヘビーユーザーを大事にしていく」と語る井上直也社長(=写真)に、足もとの事業環境や差別化戦略などを聞いた。
 
dファッションが成長けん引 自社カードの新規会員も拡大

――ファッションECの事業環境は。

 「ファッションECではポイントやクーポン施策が当たり前になってしまい、お客様もちょっとやそっとでは反応してくれない。そういう意味でも、かなりのポイントを付与している『dファッション』と、楽天さんに勢いがある」

 ――「dファッション」は堅調か。

 「『dファッション』は1年を通じて堅調に伸びて全体をけん引した結果、全社でも前年比10%近い伸びを確保できている。ただ、2020年3月期の取扱高として300億円乗せを目指していたが、少しショートして290億円程度で着地する見込みだ」

 ――足もとではコロナウィルスの問題も。

 「コロナウィルスの問題で一番大きいのは消費ムードが下がっていること。出かけないとか、イベントがないということで消費意欲がかなり落ちている。ふたつ目は(ブランド側に)中国生産の一部商品で納期遅れの影響があると見ていて、昨年に比べるとセールの売り上げ比率が高い」

 ――どのくらいか。

 「昨年で言うと、3月中旬では新作などのプロパー品が受注の60%~65%を占めていたが、今年は50%くらいにとどまっていて、セール品が多い印象だ。アパレル各社にヒアリングしているが、品番の半分以上が中国生産という企業も少なくない。ブランドによっては4月からゴールデンウィークくらいまで納期遅延がありそうだ。とくに実店舗を持たない安価なウェブブランドは中国生産が大半で、そうしたブランドが苦戦している。大手でも予約商品をとれる状況にない。例年であれば予約商品がもっと多く、春コートも売れる時期だが出足が悪い」

 ――暖冬のインパクトもあった。

 「業界全体として秋冬物のダウンやアウターへのマイナス影響が大きかった。当社もアウター不振の影響が想定より大きく、今期の取扱高がショートした要因だ」

 ――送料を3月3日から再値上げした。

 「運送会社の運賃値上げに伴って昨年4月に送料を税別200円から300円に、今回も300円から400円に100円ずつ値上げさせて頂いた。一方でお客様都合の返品であっても返送料が無料になる『おうちde試着』施策は継続している。返品送料無料はゾゾさんにはないため、当社独自の強みとして取り組んでいきたい」

 ――ECでは送料無料のニーズが高い。

 「今回、送料を値上げさせて頂いたが、マガシークカード会員はいつでも全品送料無料で、入会金も年会費もかからずメリットしかないマガシークカード会員を増やしていきたい。とくに『マガシーク』ではコアなファンを増やしていく方針だ。カード会員は送料無料ということを打ち出していく」

 ――カード会員の伸び率は。

 「かなり増えてきている。19年度はマガシークカードの新規獲得に注力し、前年比50%くらい増えた。引き続き、カード会員の獲得を進めて顧客数に占める割合を高めていきたい。マガシークカード会員は全品送料無料だけでなく、年4回開催の全品10%オフなどの特典が受けられる。来年度はロイヤルティプログラムもテコ入れする。よく買って頂いているお客様により恩恵があるようにし、ヘビーユーザーに手厚いサイトにしていく」

 ――既存顧客は大事だ。

 「ゾゾさんの伸びも止まってきた中で、ファッションをECで買う消費者は一通りどこかのサイトで買った経験があると思う。そのため、完全な新規客というよりは、休眠客や購入頻度の低いユーザーにより買ってもらうことが大事になる」

 ――新規は「dファッション」の役割か。

 「その通りだ。『dファッション』ではライトユーザーを大量に獲得していく戦略だ。dポイントを軸にドコモからのさまざまな導線もあり、引き続き『dファッション』は新規比率が高い」

 ――物流費の上昇や値引き合戦などもあって小さいモールは生き残れない。

 「以前は100億円の取扱高がないと厳しいと思っていたが、より体力勝負になってきて300億円規模でも大変だ。ブランディングのためにあるサイトは別にして、ECで利益を出していくという意味では、この1~2年は難しい環境にある。当社としてはブランドの自社EC支援を行うBtoB事業も合わせて戦っていかないと利益拡大は難しい」

 ――運営する2サイトではどんな価値を提供していくのか。

 「『dファッション』についてはdポイントとともにドコモの戦略の中で大きな役割があり、もはやファッションECは携帯キャリアを中心としたポイント経済圏の戦いになってきている。ソフトバンクとヤフーのPayPay、ドコモのdポイント、キャリアに参入する楽天は楽天ポイントと、大きくはこの3つが戦っている。『dファッション』はdポイント経済圏の中のファッション領域の位置づけで意義がある」

 ――「マガシーク」については。

 「ゾゾさんはマス化が進み客単価も下がっている中で、『マガシーク』は空白地帯になりつつある高単価でファッションにこだわりがある層にフォーカスする。ふたつのサイトを運営している意味もある」

AI画像検索が購入後押し 服の新しい探し方も提供
 
 ーー「マガシーク」の強化分野は。

 「以前から強いフェミニン系やキャリア系ブランド、セレクトショップに加えてキッズも充実させている。『マガシーク』は20年の歴史があり、子どもを持つ女性顧客が増えている。2月にはレディースカテゴリーからキッズを独立させ、レディース、メンズ、キッズの3つの商品軸で検索できるようにした」
 
 ーーMD面で『マガシーク』と『dファッション』の色分けがはっきりしてきた。
 
 「MDは4つの部署があり、現状では3つが『dファッション』の本部に属している。『マガシーク』のMDは従来の取引先がメインで、『dファッション』はメンズやスポーツ系、実店舗を持たないウェブブランドなどを含めて新規ショップを開拓している。新規店の8割以上が『dファッション』を中心に販売している。ただ、『dファッション』も7年経つ。MDは両サイトを担当していて、どちらかに注力するのではなくバランスをとって運営できるようになっている」
 
 ――サイトの機能やサービス面の強化は。
 
 「ドコモグループの強みを生かす。春から5Gが始めるが、株主からも次世代ECの進化にテクノロジーで対応することを期待されている。まだ詳細は言えないが、服の新しい探し方や買い方をテーマに機能を追加したり、アプリに機能搭載する形になると思う」
 
 ――足もとでは。
 
 「『dファッション』のAI画像検索機能が好評で、『マガシーク』にも同じエンジンを実装したところだ。AI画像検索は商品詳細ページの商品画像右下にある『似た商品を探す』ボタンを押すと、画像認識ソフトでサイト内にある似た商品が数十点表示される」

 ――「マガシーク」でも取り組んでいた。
 
  「いろいろなエンジンを試してきたが『dファッション』で使っているエンジンの精度が一番高く、売り上げへの効果もあった」

――画像検索も利用されることが大事だ。

「元々はお客様が自分で保存したインスタの写真や雑誌内で気になったアイテムを写真に撮って検索する使い方だったが、スマホカメラを起動する手間もあって利用率が非常に低かった。そこで、商品画像に『似た商品を探す』ボタンを付けたところ、利用率が約10倍、経由売上高は約20倍になり、購入率でも成果があった」
 
 ――購入率が上がった理由は。
 
 「お客様がインスタなどを見て『こういうコーディネートがしたい』と思ったときに、掲載商品そのものが買いたいというよりも、『そんな感じの服はないかな』という探し方が増えているのだと思う。そうであれば商品1点ずつではなく、似ている商品を何十点か一度に表示し、価格帯やブランド名も分かる方が利便性が高い」
 
 ――商品検索の仕方が変わってくる可能性もある。
 
 「例えば、ひとつのアイデアとして、食事の写真を撮ると自動でカロリーを表示したり、不足している栄養素を教えてくれるソフトがあるが、これを洋服に応用して、毎日の自分のコーディネート写真を撮ると、『この商品を買い足した方がいいですよ』といったおススメが出てくるような、画像やAIをうまく使って商品を勧める手法もあり得る」
 
 ――「マガシーク」の新規獲得策は。
 
 「返品無料の『おうちde試着』サービスも新規購入のきっかけになる。新規を呼び込むウェブ広告というよりは、来訪者に確実に買ってもらうクーポンやポイントに比重を置いている。購入に至る決定打がないと買わずに帰られてしまう。『いま買いたい』とか『いま買っても損はない』と思ってもらえる施策が大事だ。また、買えば買うほどメリットがある施策を実施していく。複数のファッションECモールを利用しているユーザーは多く、常に競合サイトよりも安くすることは難しいが、ユーザーの選択肢にいつも入っていることが大事だ」
 
 ――既存顧客のロイヤル化施策は。
 
 「マガシークカード会員を重視する施策に加えて、洋服を買うだけでなく、いろいろな付加価値を提供できるようにしていきたい。2020年度はマガシークカード会員と『マガシーク』『dファッション』の利用者に対してほかのサイトにはないメリットを打ち出していきたい。MD面だけでなく、いくつか考えている」
 
 ――アプリ展開は。
 
 「アプリユーザーもロイヤルティが高い。スクラッチで作り直して『マガシーク』アプリをより強化していく。メールの開封率が落ちてきているため、プッシュ通知の重要さは増している。全体の7割はスマホサイトを利用しているのでアプリの強化は不可欠だ」
 
 ――ブランドとの連携強化策は。
 
 「ECソリューション事業として当社に在庫を預けて頂ければ『マガシーク』や『dファッション』だけでなく、三越伊勢丹さんや阪急阪神百貨店さんなど複数サイトで販売できる。また、丸井さんや楽天さんで売れた商品についても当社倉庫から出荷するサービスも増やしている。取引先ブランドの在庫を可能な限り分散させず、ECチャネル全体の成長に貢献できる」
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