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仮想モール“配送力”強化へ、カギにぎる出店者の配送レベルの底上げ支援、大型キャンペの展開、物流代行強化など

2021年 2月 4日 13:10

 大手仮想モール各社が”配送力”の強化に本腰を入れている。単独の通販サイトとは異なり、出店するEC事業者の集合体である仮想モールが全体で配送力を強化するためには各出店者の配送力を高めていく施策が必要となるため、一朝一夕にはいかないという難しい側面もあるが、「速く商品が届く」という利便性の高い配送力が競合のモールやメガECサイトとの競争を勝ち抜くための重要な要素の1つと捉え、強化に乗り出している。仮想モール各社の配送力強化の動きとは。
 


ヤフー、「優良配送」表示に活路

 ヤフーは運営する仮想モール「ヤフーショッピング」と「PayPayモール」の商品詳細ページで”優良配送”というアイコンの表示を昨年12月16日から開始した。「優良配送」とは出店者が顧客に提示する商品の配送日を示す「お届け希望日」が”受注日プラス2日以内”としている商品かつ当該出店者の出荷遅延率が一定水準未満(5%未満)である場合にのみ出店者が設定できる表示で、言わばヤフー側がユーザーに対して「この店舗のこの商品はすぐにお届けできます」という”お墨付き”を与えた印となる。

 「優良配送」のアイコンを表示している出店者は現状、約6500店舗となっており、「このアイコンによって価格やポイント付与率以外の差別化ポイントとして”配送力”を訴求できるようになったことは大きい」(雑貨を取り扱う某出店者幹部)と出店者からは概ね好評なようだ。

 ヤフーではアマゾンや楽天らの競合モールに伍していくため、「欲しいものが欲しい時に手に入るモール」の実現を掲げており、「優良配送」の実施もその一環となる。

 「優良配送」のアイコンは商品詳細ページのほか、2月3日からは商品検索結果画面にも表示を開始。さらに優良配送表示商品は商品検索結果で上位表示されやすいような優遇措置を講じるなど、「優良配送」を設定・活用する出店者により、ユーザーへの訴求力が高まりやすくなるような施策を行うなどし、「もっともっと多くの出店者に”優良配送”を設定、活用してもらいたい」(同社)とヤフーでは同施策の利用拡大に本腰を入れていきたい考えだという。

 ただ、「配送が早い」という訴求が効果的であると認識してはいても、実際問題として”受注日プラス2日以内”に配送を行うためには物流のオペレーションを改善しなければ実現できない出店者も少なくない。また、「優良配送」を設定するという新たな作業も発生してくることなどから「ただ、(出店者に)がんばれというだけではダメで応援するためのソリューションが必要」(同社)として、出店者に「優良配送」の利用を支援するための「優良配送キャッシュバックキャンペーン」を2月12日からスタートさせる。

 同日から3月末までに「優良配送」のアイコンを表示した商品を出荷・配送した出店者を対象に、1注文あたり50円をキャッシュバックするものだ。

 さらに昨春に翌日配送率向上など仮想モールの全体的な配送レベル向上のために物流サービス面で業務提携を行い、昨年8月から開始した出店者の一定量の在庫をヤマトグループの拠点へ搬送してもらった上で受注に応じてピッキングと梱包して出荷する「ピック&デリバリー」や昨年12月から開始した出店者の商品在庫の保管から配送まで出荷に関するすべてをヤマトグループで受託する在庫型物流サービス「フルフィルメント」のほか、非対面での受け取り(置き配)への対応や、受け取る直前までの受取場所の変更などに対応できるEC事業者向けの配送サービス「EAZY(イージー)」といったヤフーの仮想モール出店者向けなどに各種物流サービスを提供しているヤマト運輸を使った配送を行った場合には同じく1注文あたり50円をキャッシュバックする。

 つまり「優良配送」かつヤマト運輸で配送を行った出店者には1注文あたり、100円を還元することになる。
 「出店者向けの初めての大規模なキャッシュバックキャンペーンとなる。(キャッシュバックを原資にして)『優良配送』に必要となるオペレーションの変更やヤマトさんのサービスを活用頂くなどの準備を整えて頂ければ」(同社)としている。

 ヤフーでは身銭を切った利用促進策を展開することで出店者の「優良配送」の活用を支援、モール全体の配送レベル向上を進めていきたい考え。

 また、3月末までと期限を限定した同キャンペーンの実施で「優良配送」のアイコンを増やし、新生活需要により増える新規ユーザーに対して「安心でスピーディーな配送」ができるモールであることを印象付け、利用の継続化を図り、流通総額の押し上げたい狙いもあるようだ。

 なお、「優良配送」の条件は適宜、見直しを行うとしており、今後は配送スピートのほか、配送料金などを加味したり、現状は5%未満としている出荷遅延率の水準も出店者や顧客の声を反映するなどして変更していくという。

楽天、出店者向け物流の利用者増

 楽天では「楽天市場」出店者の物流業務を請け負う「楽天スーパーロジスティクス(RSL)」を展開し、利用店舗数は、昨年9月の段階で2018年9月比約9倍強、出荷量も同じく約9倍強と利用が急拡大している。
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 RSL用の物流センターは千葉県流山市と習志野市、大阪府枚方市に設けているほか、今年はダイワコーポレーションが神奈川県大和市に運営する大型物流施設「ニッセイロジスティクスセンター横浜町田」の一部フロアを借り、新たな施設を開業する予定だ。

 RSLは全国統一価格で配送できる点が店舗にとってはメリットとなっており、料金体系も競合を意識した設定となっている。楽天によれば、RSL利用店舗は高い売上成長率になっているという。70%以上の商品をRSLから出荷する店舗の昨年4~6月における平均月次流通総額の前年同期比は、全店舗の同じ数字に比べて35・9ポイント高くなっている。今後はRSLを利用する複数店舗の商品を1回の配送で届ける「まとめて配送」を導入する予定だ。

 同社では近年、楽天市場出店者向けに同社独自の配送ネットワークを構築する「ワンデリバリー」構想を進めており、約2000億円を投資している。

 楽天の配送サービス「楽天エクスプレス」は、日用品直販サイトの荷物や、書籍通販「楽天ブックス」、ファッション通販サイト「楽天ファッション」、家電通販サイト「楽天ビック」の商品、さらにはRSLの一部荷物を対象に配達しており、昨年12月の段階で人口カバー率は63・5%に達した。

 昨年12月24日には、日本郵便と物流事業で戦略的提携を結ぶと発表した。RSLと日本郵便の配送網、地域の郵便局、楽天エクスプレスを両社で活用。デジタル化を進めることで、顧客体験向上や業務改善につなげるというもので、具体的には、データや人工知能(AI)を活用し、利便性の高い受け取りサービスと、効率の良い配送システムを構築する。また、ビッグデータやAIのほか、自動倉庫やドローン、自動走行ロボットの活用も進める。また、両社の資産や知見を活用することで、新たな物流プラットフォームを構築。プラットフォームはオープン化していく予定で、楽天市場の出店店舗が競合となる仮想モールで受注した商品配達に加えて、他の配送事業者や、物流代行事業者との提携も視野に入れる。

 1月28日に開催された、楽天市場出店者向けイベント「楽天新春カンファレンス2021」で、楽天の三木谷浩史社長は「日本郵便の物流プラットフォームや配送網、当社の物流プラットフォームやデータを合わせることで、より安価で効率的な物流プラットフォームを店舗の皆さんに提供していく。そして、皆さんの負担がない形で商品が配送できるようにしたい」と述べている。

アマゾン、マーク使用の条件厳しく

 アマゾンジャパンの出店者の配送力向上策の軸は展開する物流業務代行サービス「FBA(フルフィルメント・バイ・アマゾン)」の利用を促し、アマゾンの直販商品と同じ配送スキームで有料会員「プライム会員」を中心に迅速な配送を行うということが基本となっているもようだが、アマゾンが物流に関与していない出店者自身による自社配送商品の配送力向上にも注力し始めている。

 アマゾンでは16年から同社サイトの出店者が自社配送商品にも、アマゾンの有料会員であれば送料無料で受注日の当日・翌日に配送することを示す「プライムマーク」を商品画面に表示できるようした「マケプレプライム」を開始した。従来までプライムマークの表示はアマゾンの直販品かアマゾンの物流代行サービスの利用事業者の商品のみだったが一定の配送レベルを持つ出店者に限定し解禁したもの。プライムマーク表示商品は他商品に比べて購入転換率が総じて高いことから、解禁で出店者の販売を支援し、流通総額アップにつなげる狙いからだ。

 アマゾンではこの「マケプレプライム」について利用できる条件を厳しくする。7月15日以降、出店者が「マケプレプライム」を活用するためにはこれまで必要のなかった平日以外の土日など週末出荷対応や全国(北海道、沖縄、離島を除く)への標準サイズ商品の配送対応、出店者の商品ページで顧客に提示する1~2日以内という配送時間指標の目標値達成への対応が必須となる。同社によれば条件の厳格化は日本における「マケプレプライム」の注文において購入者が期待している「1日以内の配送を実現できた割合が26%以下」となっているためだという。7月15日以降、新たに設定したものを含む条件に抵触すると「マケプレプライムの参加資格が一時的に停止される場合がある」とする。

 大手仮想モール各社がシェア争いにしのぎを削る中、”配送力”が大きなカギを握ることは言うまでもない。出店者は各モールの支援策や条件面などを熟知して最適な対応を行うことで自社の売り上げ拡大につながるはず。各モールの方向性を今後も注視していく必要がありそうだ。


 
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