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【消費者安全法 381 ジョーカー規制の行方】

2021年 3月25日 12:40

虚偽誇大の適用は庁内連携を

 消費者安全法38条1項(=381)は財産被害でも社名公表できる。これまでは内職商法などの誇大広告を問題としてきたが、今月に入り、新たに「アフィリエイト広告」に警鐘を鳴らした。

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 「アフィリエイト広告への初の社名公表で注目されているが、狙いは問題ある定期購入へのけん制だろう」。表示規制に詳しい業界関係者の受け止めはこうだ。

 消費者庁は3月1日、Libeiroとシズカニューヨークの化粧品などのアフィリエイト広告が虚偽・誇大であるとして、381に基づき、社名と商品名を公表して、注意を呼びかけた。

 調査では「シミやシワなどを短期間で確実に消す効果はない」「二重価格表示の根拠がない」「体験談が架空」「売り切れや在庫僅少の表示が誇大」などの事実を確認。

 両社が「アフィリエイト広告の表示内容の決定に関与していた」として公表を行なった。

 Libeiro、シズカニューヨークとも消費者庁が注意喚起した当日に、自社HPにお詫びなどを掲載。両社とも業務委託先などが制作、運用したもので、指示や承認はしていないが、不適切な広告が行なわれて、お客様に心配や迷惑をかけたことをお詫びしている。一見して不可思議なのは、両社ともお詫び文の構成や内容が非常に似通っている点だ(写真)。

 問題となった事実だけを見れば、適用法令として最もふさわしいのは景品表示法であろう。また、通販を規制する特定商取引法でもいけそうな案件だ。然るになぜ、381なのか。

 「消費者安全法は消費者が被害にあわないようにするだけ。庁内で関係法令との調整はしない」。消費者政策課の担当はこう言い切る。景表法違反となるかは「わからない。表示対策課に聞いて欲しい」とする。

 消費者ファースト。背景には定期購入のトラブル増があげられよう。

 国民生活センターが19年12月に、通販での健康食品等の「定期購入」の相談が年間3万件を超えるペースで激増していると注意を呼びかけた。ネットで購入。定期であることに気づかず、解約や返品トラブルが起こるというのが端的なケースだ。通販の特性を悪用した「おとり、釣り広告で業界の信用棄損につながる。早めに徹底的に撲滅する必要がある。そうでないと、通常の定期コースの運用に影響する」(業界関係者)と日本通信販売協会を中心とした業界の危機感も強い。

 今国会では、特商法を改正。解約を簡素化するほか、義務表示がない場合や虚偽だった刑事罰を含めた罰則を導入する。特に刑事罰の導入は強い抑止効果となろう。

 「ただ、アフィリエイトをどうするかは課題」と業界関係者は懸念する。巧妙に販売と広告を切り分ける事例は、特商法も景表法も適用しづらい。

 そこで381を適用。今回のケースはその先鞭とも受け取れる。ケトジェンヌでも「健康被害」から、「取引」と「表示」で処分をした。

 381は、消費者の関係法令の中で、最も機動性が高い。今後「財産被害」のカテゴリーでも急速に広がる問題例や「すき間」を埋めるために活用されると予想できる。

 ただ、問題点はないのか。一番のポイントは公表基準だ。消費者政策課は「基準はない。都道府県からの報告や社会情勢を加味して、被害拡大の可能性のあるものに行っていく」と話す。

 381なのか、特商法なのか、景表法なのかで、事業者への制裁効果は異なってくる。「虚偽誇大表示」で適用するなら、せめて庁内の関係部署との連携は必要だ。(つづく)

 
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