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【トクホ終わりの始まり 16.エコナ油、大炎上②】

2021年10月28日 13:00

政権交代後の混乱

 特定保健用食品制度(トクホ)を揺るがした2009年の花王「エコナ」騒動。含まれる成分に発がん性が疑われることがクローズアップされ、問題が一気に加熱。花王はエコナシリーズの自主的な失効に追い込まれる。しかし、この間の動きには民主党政権と消費者庁という政治と行政の二大ファクターが大きく影響したと見ていい。

 「家にあったエコナを捨てるというので、そんな必要はないよと伝えた」。09年秋のエコナ騒動の禍中、厚生労働省の幹部は夫人にこう諭したという。ただ、夫人の言葉は当時の空気を端的に表わしている。

 エコナに発がん性が疑われる「グリシドール脂肪酸エステル=GE」が含まれていることがわかり、消費者団体などが販売中止などを求めると、問題はマスコミなどでも報じられ、注目度を増す。トクホを代表するブランドで、食用油という多くの家庭で使われている商品であることも相まって、騒動は大炎上となる。

 花王によれば、09年9月からの1カ月の相談件数は17万6100件。1年間では約40万件に上るという。

 「トクホだから信用して買ったのになぜこんなことになるのか」という制度への疑問の声が一番多かったとしており、「国の許可」という信頼が大きく揺らいだことが浮かびあがる。

 さらに「私がエコナを買ったせいで大事な家族に健康被害が出たらどうしよう」と自責の念に苛まれる声も少なくなかったという。花王はレポートの中で「一度販売した商品は決して企業だけのものではなく、消費者との共有物である」と言及。至言であろう。

 騒動は1カ月あまりの間に、販売自粛、トクホ自主失効という形で収束した。その後、15年の食品安全委員会の最終評価では(1)エコナ摂取の発がんリスクを判断するのは困難(2)動物実験ではエコナの発がん促進作用は否定され、毒性影響は確認できなかったという結果となる。

 これを受けて厚労省は「これら(エコナ油)製品を摂取したことによる健康被害事例は報告されていないことから、直ちに重大な健康被害があるものとは考えていません」とコメントした。明確にシロとは言っていないが、シロに近いグレーという結論であろう。

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 この結論から言えば、エコナ騒動は空騒ぎだった訳だ。一方でトクホの信頼性には大きな傷がつき、エコナブランドは失墜、今も販売を再開できない状況だ。正に踏んだり蹴ったりである。

 エコナ騒動が大炎上した大きなファクターの一つは民主党政権の誕生だ。

 政権交代の熱狂の中、発足したが、政府の運営は手さぐりだった。しかも、自民党政権のあり方を変えるためのパフォーマンスを意識したため、混乱を生じさせた。

 発足間もない消費者庁の担当大臣には、社会民主党の福島みずほ党首(=写真)が就任した。福島党首は、市民運動とも距離が近く、エコナの発がん性疑惑について、市民団体や消費者団体のルートから情報があがっていたと考えられよう。

 問題が市民団体や消費者団体が最も神経質にこだわる食の安全だっただけに、政治的に大きくクローズアップされた面はあろう。

 さらに消費者庁のガバナンス。エコナ騒動の同月に発足した消費者庁は、内閣府、農林水産省、経済産業省、厚生労働省、公正取引委員会などからの出向組で編成されたばかり。組織や人事なども急ごしらえで定まっていなかった。

 トクホの許可は厚生労働省から移管されたばかり。そこへ降ってわいたように、エコナ騒動が勃発し、みるみるうちに社会問題化した。

 エコナ騒動の本質はGEの安全性だが、トクホを含む食品の安全性は、管轄が消費者庁ではなく、厚生労働省である。つまり、消費者庁は許可権限は持つが、実際は評価できない事案の対応を迫られた訳である。縦割りの弊害だ。

 こうなれば騒動を収めるために必要なのは当事者である花王との交渉。販売自粛、トクホ自主失効は、消費者庁にとって最善策だった訳だ。

 さらにエコナ騒動にはそこに至る別のファクターも存在している。業界の水面下での暗闘だ。(つづく)

 
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