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オムニチャネルの真価発揮<ファンケル・島田和幸社長に聞く> コロナ禍で連携強化進む

2022年 1月20日 12:50

 2019年末に始まった新型コロナウイルス感染症は、いまだ収束の兆しが見えない。外出自粛、店舗休業、インバウンド需要の消失など化粧品業界は苦境にあえぐ。ファンケルは、いかにこの危機を乗り越えようとしているのか。島田和幸社長に聞いた。
 










 ――新型コロナの拡大以降、さまざまな取り組みをされてきた。

 「世の中が右肩上がりの中ではやる事が結果に結びつく。機能性表示食品制度の創設で研究成果が花開き、全国の店舗はインバウンド需要の受け皿になった。今はすべてが右肩下がり。すぐ結果に結びつくわけではない。逆境下にあるが、もう1年踏ん張ろうという思いだ」

 ――マスクの配布、販売も始めた。

 「本来はファンケルが売るべき商品ではないかもしれない。けれど市場からマスクがなくなった。『正義感を持って、世の中の不を解消しよう』という創業の理念がある。何かできないか考え、お客様にサプライズの商品同梱でお届けしたところ非常に喜ばれた。ファンケルというブランドでお客様とつながる意味、熱い思いで取り組んできた創業当時を想像させる体験を少しできたように思う」

 ――店舗は長期の休業を強いられた。

 「送料無料等の施策で通販に誘導し一定程度補えた。お客様に迅速に対応できたこともよかったが、機動的な対応は自信になった」

 ――オムニチャネルの強みを発揮した。

 「同じ社内のためスムーズに連携できた面はある。別会社による運営や専門店との協業では軋轢が生じるかもしれない。自分たちで作り、売る強みを活かせた。チャネル統合の必要性は常々口にしてきたが、店舗、通販それぞれの事情があり、互いに行き来してもらう施策は二の次になっていた」

 ――壁があった。

 「今もある。通販と店舗、化粧品とサプリなど、どの組織も箱ができればそう簡単に行き来はできない。独自の価値観も作られる。ただ、コロナ禍の休業は劇的な変化だった。店舗で売るべき在庫がある中で連携が以前より普通にできるようになり始めた」

 「併用するお客様の年間購入額は一方を利用する方より3倍ほど高い。割合は数%だが、相当増えた。新しい購入体験を提供できたことが重要で、じわじわ上げていきたい」

 コロナ禍でグローバル化を推進

 ――前中計(18~20年度)は海外成長の基盤固めと位置づけていた。組織の強化、人材の育成はどう進めた。

 「これまで上海オフィスは許認可手続きが主だった。新たに海外オフィス統括室を設置し、マーケットを深くリサーチできるよう機能を強化した。人材面は、海外駐在を前提に、語学習得を支援する従業員を社内公募した。採用でも海外人材を意識的に確保している」

 ――今中計にインバウンド需要は織り込んでいない。

 「不確実な要素で23年まで戻らない前提で作成した。国内をいかに安定的に伸ばし、海外をどこまで伸ばせるか。中国のサプリメント事業、アテニアの越境ECは3年目で計50億円規模に育った。サプリは23年に60億円を計画している」

 ――中国の化粧品事業は。

 「販売代理店はブランディングを重視し、日本国内より高価格で百貨店で丁寧に売りたい。こちらは他社がECに取り組む中、ウェブシフトで遅れを取りたくない。日中の往来もあり、価格戦略の見直しも必要と考えている。今のところ戦略に相違はあるが堅調に伸びている」

 ――グローバル化推進の中で、特に中国の法規制、米中の経済摩擦などリスクをどう捉えている。

 「難しい問題だが、今も中国から米国に大量の消費財が輸入されている状況は変わらない。政治的問題はありつつも、モノ・情報は行き来している。日本経済と中国は互いに依存し交流は欠かせない。多くの方がファンケルの製品に思いを寄せてくれている中で期待に応えたい」

デジタル人材への投資強化

 ――前中計ではDX化を進めた。

 「ベンダーに丸投げしていたIT化を自らの手に取り戻そうと内製化を3段階で進めている。これまで各システムにデータは蓄積されていても分断され、即時に分析ができなかった。『FIT1』『FIT2』でシステムの再構築、各チャネルのシステム統合を進めた。1月の『FIT3』稼働で購入履歴だけでなく、施策への反応など購買行動も一元的に把握できるようになる。より早く自由に分析できるようにして仕事の質を高めたい。お客様を深く理解し変化に気づくことでアクションにつなげることが必要だ」

 ――人材の確保は。

 「ECは00年頃から取り組み知見がある。ただ、デジタルシフトの中でどの部署もウェブを意識せず仕事はできない。新入社員はお客様、商品を知るため電話応対部門、店舗で実習を積ませていたが、今後は一定数、デジタル部門で実習を積んで各部門に配置する」

 ――自社で育成する。

 「重要なのは業務理解でデジタルありきではない。業務がどう回り、お客様とつながっているかを理解して初めて活用できる」

失敗を厭わず新規事業に挑戦

 ――業規模が1000億円を超えた今もベンチャーであると発信されている。

 「掲げているだけの時代が長かった。化粧品、サプリメントで強烈な成功体験をした。そんな体験をもう一回するのは大変だ。とはいえ二本柱で30年、40年先も安泰かといえば難しい。失敗してもよいから百に一つでもこれを厭わずやってほしいと思うし、やらなければいけない」

 ――ブランドの多角化を進めている。

 「ファンケル化粧品は500億円規模。1本勝負で成長は難しい。各世代、ニーズに対応したブランドが必要だ。『ブランシック』は当初、百貨店チャネルを想定していたがコロナ禍で難しくなった。海外も視野にECで展開する。ゼロからのブランディングで評価する段階にない」

 「『アンドミライ』はインバウンドを意識したブランドで今の国内で戦うのは難しい。テコ入れを行い中国を視野に入れる。『ビューティブーケ』はファンケルブランドを卒業した60代以降の方の受け皿。50代後半の利用も想定より多く、国内通販中心に育成する」


 ――アクネケアではZ世代との接点を目的に入社数年の新入社員で戦略策定のタスクチームを作った。

 「若い世代の気づきを吸収し、ベテランも刺激にしないといけない。自分達のこれまでの仕事が正しかったのか自問し変わっていかなければならない」

 ――コロナ禍で発売した「パーソナルワン」「免疫サポート」の進捗は。

 「『免疫サポート』は当初オールターゲットでプロモーションを展開した。免疫を訴求でき、楽観的に見ていた反省がある。セグメントや価格戦略を見直し再構築する」

 「生活者にとって何が必要か分からず、この商品が何をしてくれるか分からないというのが機能性表示食品制度創設以前の業界だった。その意味でパーソナルサプリはファンケルの宿願だ。想定より10歳ほど若い30~40代女性の獲得が進んでおり、健康意識の高まりの中で計画を上回り推移している」



OMO推進で成育目指す<ファンケルの中期経営計画>


 ファンケルは中期経営計画(21~23年度)の最終年度である2024年3月期に連結売上高1200億円、営業利益150億円を計画する。国内は、OMOの推進で優良顧客の獲得を進め、安定成長を図る。海外は、グローバル化を推進する。

 前中計)は、海外事業成長の基盤固めと位置づけていた。今中計は海外の本格成長を図る。海外売上高は、現状の約103億円(売上構成比9・8%)を162億円(同13・5%)に高める。30年度には、25%を計画する。

 今中計にインバウンド需要は織り込んでいない。インバウンド売上高は、19年3月期に119億円、同20年に110億円。同21年は、約1億円と試算する。

 中国サプリメント事業は、代理店契約を結ぶ中国国際医薬衛生公司との連携による開拓、越境ECの両輪で進める。越境ECの年間売上高は約20億円(20年度実績)。20代、30代向け「年代別サプリ」が売上構成比で64%を占める。これらユーザーに「ビューティサプリ」の展開を強化する。

 一般貿易ではビタミン、ミネラル関連の5品目が保健食品として承認を受けた。3年後に60億円の売り上げを計画する。

 グループのアテニアもアジア圏への越境EC、北米進出を視野に入れる。

 国内は、ITの活用でOMOを推進する。

 15年に始めたIT基盤再構築プロジェクト「FIT(ファンケル・インフォメーション・テクノロジー)」は基幹システム等の再構築を進めた「FIT1」、各システムの統合を進めた「FIT2」により、「購買データ」の一元管理が可能になった。1月の「FIT3」稼働で施策に対する顧客の反応など「行動データ」も一元的に把握できる。

 通販・店舗の併用顧客は、一方のチャネル利用者に比べ、継続率で1・5倍、年間購入金額で3倍。購買に至る行動の理解し、体験価値の向上、個々の顧客に最適な提案を行う。


化粧品大手の業績

 化粧品市場は、コロナ禍の影響長期化で厳しい事業環境に置かれる。化粧品大手の直近の決算は、資生堂の第3四半期(1~9月)は、前年同期比14・0%増の約7454億円。国内は同7・3%減の約2103億円。ECは二桁成長したが、店舗の時短営業、外出自粛による来店客減少が影響した。中国は同23・1%増(円換算後)の約1909億円。

 花王の第3四半期(1~9月)の化粧品事業は同0・8%増(為替変動の影響を除く実質増減率)の約1659億円。国内は同6・0%増の約1072億円。ベースメイクの回復は遅れたが、マスク生活に応じた新提案でヒット商品が生まれた。アジアは同23・5%増(同)の約410億円。

 コーセーの中間(1~6月)の化粧品事業は同4・1%増の約998億円。国内はコロナの影響を受け同1・5%減の約708億円、アジアは同1・4%増の約364億円だった。

 ポーラの第3四半期(1~9月)は同5・8%増の約771億円。海外が同38%増で増収を確保した。一方、構成比で約7割の委託販売チャネルは同3・0%減だった。オルビスの第3四半期(1~9月)は、同2・3%減の325億円。構成比で6割を占める国内ECは同0・4%減だった。

 ファンケルの中間(4~9月)の化粧品事業は1・9%増の約282億円。同約20%増のアテニアが寄与した。ファンケル化粧品は同1・5%減。国内は同2・5%減、海外は同10・5%増だった。
 
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