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中国市場、環境整備の動き――経産省と中国商務部がネットや物流で協議

2010年 9月21日 21:27

 電子商取引や物流、流通分野について、日中両国による協議の場が相次ぎ設けられている。通販・ネット販売でも、成長が見込める中国への進出を目指す日本の事業者は多いが、実際に事業展開を進める上で通関手続きや外資規制など制度的な課題も少なくない。一連の国レベルでの協議により、こうした課題の解消が期待されるのか、今後の動向が注目される。

 ネット販売に関する分野では、今年5月、「電子商取引政策協議会」の設置で直嶋正行経済産業大臣と陳徳銘中国商務部部長が覚書を締結。電子商取引に関する政策・制度、事業者レベルでの電子商取引の活用事例やネット関連技術等の研究・共有、関係機関による共同プロジェクト等の交流活動への協力などを目的としたもので、今年度中の第1回会合開催を目指す。

 協議会の設置は、今年4月に中国側から打診があったもの。依然、市場の拡大が続く中国だが、一方で「産業振興と消費者保護のバランスをいかにとっていくかが課題になっている」(情報経済課)。このため、政策の立案などで経験を持つ日本との連携を強化し、ビジネス環境の整備につなげる狙いだ。
 経産省では現在、第1回会合開催に向けた準備作業を進めている状況で、この一環として国内のネット販売事業者に中国での事業展開における問題点や要望などのヒアリングを行っているが、通関手続きや物流品質、決済などより実務に近い問題点の指摘が多い状況のようだ。

 具体的には、通関手続きの時間短縮や決済面の負担軽減などで、決済の部分では、日本の顧客に中国製品を販売した場合、円で支払われた代金を中国で元に替えて現地事業者に支払おうとすると、正当な取引と証明するための資料作成等の負担が大きいなどの声が上がっているという。

 これは、既に中国でネット販売を行う事業者の場合、現実的な課題への対応を求める傾向が強いことを表したものと言えるが、経産省は「中国で気になるネット販売の法制度も出てきている」(同)とする。

 同省が指摘する中国の法制度とは、今年7月に施行された「インターネット商品取引および関連サービス行為に関する管理暫定弁法」。顧客から取得した個人情報の管理など、ネット販売に関するルールを規定したものだが、問題は「書き振りがあいまい」(同)なこと。例えば、個人情報データの保存に関する規定でも、データの定義が不明確で「事業者の負担する範囲がはっきりしない」(同)わけだ。

 経産省では中国側は先にルールの大枠を作り、実際の運用で詳細を固めていくのではないかとの見方。施行からこれまで同法に関して特に大きな動きはないが、今後の動向を注視する構えだ。

 日本および中国では、電子商取引以外にも物流分野や実店舗を伴う流通分野などで、協議の場を設置している。

 日本が蓄積してきた政策や制度作り、民間レベルでの事業運営ノウハウなどを吸収したい中国側。これに対し、事業者からの要望が多い通関や検疫、決済等の手続き、商標権の取り扱い、外資規制などの問題への対応を求めていく構えの日本側だが、中国との協議は、難しい舵取りを迫られそう。現状、経産省では電子商取引分野を情報経済課、物流分野を物流政策室、流通分野を流通政策課が担当する形になっているが、通関手続きなど各分野に共通した課題も多く、各部署が連携した取り組みも重要になっていきそうだ。
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