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“声”を聞き発想やニーズ取り入れ<買いたくなる商品の開発、各社の状況>

2022年10月27日 11:00

 「ここでしか買えない、思わず買いたくなるような訴求力の高い商品」を作り出すことは通販事業者を含む小売事業者にとって永遠の課題だ。他では買えない訴求力のある商品をどのように生み出しているのか。様々な手法で商品開発を挑み、ユニークでオリジナリティのある商品開発を進める通販実施企業の事例を見ていく。
 









インスタで顧客とリュック作り

<青山商事>


 紳士服の企画・販売などを行う青山商事では傘下の「ザ・スーツカンパニー(TSC)」において、顧客の声から生まれる商品の共創企画として「VOICE」を展開している。コロナ禍で働き方やライフスタイルが変わる中、ビジネスウェアや関連アイテムのニーズも変化。新しい需要に対応すべく、顧客からの生の声を受けたマーケットイン型の商品開発を進めている。

 同企画は2021年に顧客のファッションに対する意識の変化などを受けて、生活者のインサイト分析から困りごとを解決すべく提案するプライベートブランドとしてスタート。第1弾では、男女それぞれにオン・オフを問わず様々なスタイルで着回しができるセットアップスーツなどを中心に「BORDERLESS STYLE」として発売していた。

 今回は女性向けに、ビジネスリュック「ギュッ!ク」(税込価格1万890円)を開発して、10月6日より通販サイトで先行予約を開始。開発に当たってはTSCのメルマガ会員に対して行った「ビジネスバッグに関する調査」の結果と、インスタグラム公式アカウントによるライブ配信なども通じて集めたフォロワーからの声を取り入れた。

 アンケートでは女性の約3割がリュックをビジネスバッグとして使用しており、その内の約5割が3年以内にリュックに変えたと回答。変えたきっかけとして最も多かったのはテレワークの普及によってPCを持ち歩く機会ができたからだという。

 さらに、リュックに対しての要望としては、ビジネスシーンで使用できるようにあまりカジュアル過ぎないデザインでスーツなどのスタイルにもマッチして、かつ、デザインや収納力などを求める内容が多くあった。

 それを受けて、開発した同商品は、軽量性や雨の日にも対応した合皮素材を使ったシンプルなスクエア型を採用。訪問先でカジュアルな印象を抑えたり、電車通勤の際の前持ちを解消するため、トートバッグとしても持てる2WAY仕様となっている。

 色柄については、ブラックに加え、要望の多かったモカ・グレーを作成。ニーズの多かったPCの持ち運びに対しても、クッション性のある専用ポケットを搭載したほか、肩への負担を軽減する少し太めのショルダーやバッグを開けずに取り出せる名刺入れポケットを設置するなど工夫を施している。そのほか、単体でも持ち運びができて、スマホやメイク道具などを収納できるバッグインバッグも付属した。

「リュック持たない」理由分析

 顧客参加型の商品開発において課題の一つとなるのが、商品の専門知識を持たない一般消費者が自身の考えに具体性を持たせて正確に企業側に伝えられるかどうかということがある。アンケートの取り方には工夫が必要となるが、同企画においてはまず、最初からリュックにフォーカスするのではなく、現在仕事で使っているバッグについて聞き取りを行った。その結果、トートバッグ派が圧倒的に多かったものの、想定以上にリュックのシェアが広がっていたことに着目している。

 その背景に働き方の変化があることを受けて、「本当はトート派であっても、リュックを持ちたいのではないか」という仮説に行き着く。そこからさらに要因を分析して、トート派がリュックを使えない理由として、まだまだ男性向けや、カジュアル色が強くて仕事用にあまりマッチしないタイプが多かったり、必要なビジネス小物や弁当箱などをすべて収納できるかどうか容量・マチ幅に不安があるという声を拾うことができたとする。

 このように具体性を持つ細かなニーズを集積していき、社内では毎週のように綿密に協議。一つ一つのリアルな悩み事に対応したリュックとして商品化にこぎつけることができた。

 今後に続く企画については未定だが、「レディースの方が反応が良さそうなので、そこで新しいものをやりたい。ウェアか雑貨なのか、そこはどっちを選択するか今協議している」(同社)とした。

 
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