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闇に葬られた事件【山田養蜂場 措置命令の背景⑥】 消費者庁の瑕疵、不当表示助長か

2022年12月15日 13:00

 消費者庁による「耳鳴り・難聴ケア」の一斉処分は”幻の事件”に終わる。表示が適切であったのであれば問題はない。だが、処断に消費者庁自身の瑕疵が影響していたとすれば、執行官庁としてあるまじき問題だ。

 「おかしなメールがきたんです」。消費者庁が難聴等の症状を改善するとする健康食品の一斉調査を行う中、ある調査対象企業の関係者から情報は寄せられた。

 メールの中身は、難聴改善等を暗示する表示が景品表示法、健康増進法に抵触するおそれがあるとして、根拠資料の報告を求めるもの。だが、文面にはおかしな点が一つあった。企業名、商品名が競合企業のものであったことだ。

 この会社は17年秋から複数回、根拠資料を含めたやり取りを行っていた。18年初頭に連絡が途絶え、「もう半年近く連絡がない。どういう行動をとればよいか分からない」と、戦々恐々としていた矢先だった。

 当時、消費者庁は想定外のいくつかの難問を抱えていた。18年1月にはアマゾンが行政訴訟を提起し、6月頃には甘草由来グラブリジンを配合した機能性表示食品に対する調査が発覚。8月には、だいにち堂による行政訴訟が明らかになった。これを踏まえると、17年秋の「任意の調査協力」から「不実証広告規制」に切り替え、本格的に事件化に動きだしたタイミングである可能性が高い。

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 「食品表示対策室において、所管法令に基づく調査対象の2事業者に対し、電子メールを送信した際、本来送付すべきファイルとは異なるファイルを誤って添付したことにより、当該2事業者とは異なる他の事業者の情報が漏えいしたことが判明しました」。

 18年11月、消費者庁で起きてはならない事件が起きた。企業との信頼関係の中で進められるべき調査情報を、同業他社に漏らしてしまったのだ。以降も職員のストレス調査票(19年)、検討会傍聴者アドレス(21年、22年)など「漏えい事件」は相次ぐ。

 ただ、調査情報の漏えいは、これらミスと比較にならない。同室が担うのは、景表法と健増法の執行。事業活動に重大な影響を及ぼす機密であり、信頼を大きく損ねるものだからだ。消費者庁は、「個別案件のため答えられない」と説明責任を果たしていない。

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 本紙は、本来、「あたかも難聴等の症状を改善するかのような表示」として一斉処分となっていた事件が闇に葬られた背景に、この「漏えい事件」があったと考える。

 消費者庁は、このメールの削除を依頼。あまりに都合のよい相談だが、企業が寛容な姿勢で応じたためおおやけにならなかった。「事実が明るみになればどのようなしっぺ返しがあるか分からない」。関係者が消費者庁から恨みを買うことを恐れていたことも幸いした。

 本紙が、明確に把握した調査対象は5社。当然、「漏えい事件」との関連を知らずに調査終了を知った事業者もいる。山田養蜂場もこちらに含まれる。

 ある企業は調査終了を受け、「山田養蜂場が本丸と思うが、あそこもウチもちゃんとしたエビデンスを持っている。尻尾を掴み切れず諦めたのだろう」と胸を張った。山田養蜂場も証拠を押さえられながら危機を乗り越えた経験は、自らの”レッドライン”を大きく後退させる自信になったのではないか。

 違法性を認識しながら、消費者庁が自らの保身のため不適切な対応を行い、処分までの数年間、同社に表示是正の機会を与えず、むしろこれを助長したとすれば守るべき消費者に対する背信行為といえる。(つづく)

 
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