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中立性・独立性に問題【「論文評価委」の短慮②】 唐木氏とWNG、利益相反に懸念

2023年 5月18日 12:00

 ウェルネスニュースグループ(=WNG)が事務局を務める「機能性表示食品『届出論文』評価委員会」は、取材対象企業の論文を委員会が評価し、結果を同メディアで公開する。両者には深刻な利益相反が懸念される。

 評価委の委員長を務める唐木英明氏は、「論文を評価する立場」と同時に、「WNG学術顧問」を務める。評価委の運営費用は、WNGが負担。2つの役職で報酬を受ける。

 WNGも「評価委事務局」と同時に、ヘルスケア業界で行う諸問題について報じ、届出論文等も第三者の立場から妥当性を論じ、監視する「メディア」の立場にある。収益基盤は、購読(年会費)と広告収益。メディアの立場としては当然、購読者(会員)の増加を目指す。そして、「WNG会員(月刊誌等の購読者)=委員会会員」という一体の構図の中で、評価結果は、WNGのサービスとして提供される。

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 「利益相反(COI)」とは、ある行為が一方の立場では利益となるものの、別の立場では不利益になることを指す。研究分野では、特定の企業・団体の資金提供で行われた研究結果が、資金提供元に有利・不利になる可能性がある場合、公正であるべき結果の判断に影響をもたらしかねないと第三者から懸念される状況を言う。

 日本医学会が策定した「COI管理ガイドライン」は、産学連携による研究において、こうした利益相反が「必然的・不可避的」に発生するとし、研究機関だけでなく、社会に公表する学会、雑誌発行者も透明性・中立性が求められ、情報が開示されるべきとする。

 研究代表者は、資金提供者・企業との金銭的な関係を適正に開示する義務を負い、資金提供者・企業の株式保有や役員等への就任、結論に企業が影響力の行使を可能とする状況を回避すべきとする。特定企業の研究介入で恣意的なデータ操作など不正疑惑が取り沙汰された「ディオバン事件」などを受け、利益相反への監視は年々厳しくなっている。

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 WNGは、「単なる事務局として協力することがメディアとしての中立性・公平性を歪めるとは考えていない」とする。唐木氏も、WNGについて「健食業界とのつながりは強いが、特定の企業との関係はなく、中立的な立場で報道を続けている。委員会の理念を理解した上で申し出られたことから利益相反の問題は起こらない」とする。

 利益相反にも「運営は委員の良識あるご判断によるものであり、事務局はこれを尊重する」(WNG)、「適切に評価できる知識と経験を持ち、届出企業と利益相反がないことなどを条件に、大学関係者に委員をお願いした」(唐木氏)、「評価の経費をお支払いしますが、社会常識から見てもわずかな額であることをお詫びしなくてはなりません」(同)と自己評価する。

 一方、謝礼金や委員名の詳細は、「利益相反に配慮しなければならないので金額は公表できない。社会常識からみても少額」(WNG)、「公開により委員に圧力等がかかることを回避するため公開されていない」(同)とする。外部の懸念や誤解の解消に努めるべきとするガイドラインの趣旨に沿い、利益相反を意識するのであればむしろ情報公開すべきだろう。(つづく)


 
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