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配送員の負担を軽減へ<24年問題、大手各社の対応は> 小型拠点整備やよりよい輸送模索

2023年 7月13日 12:00

 2024年4月に迫った働き方改革関連法のトラックドライバーへの適用。これによって自動車の運転業務の時間外労働業務の上限規制が適用され、荷物を運ぶドライバーが不足するいわゆる「物流の2024年問題」への対応が物流と切っても切り離せない通販事業者の中でも喫緊の課題となっている。すでに各社では様々な対応を進めているが、通販大手はさらに踏み込んだ施策に着手し始めている。有力各社の物流2024年問題への対策についてみていく。
 




ラストワンマイル拠点の設置拡大 

 アマゾンジャパンでは「ラストワンマイル拠点」の広域整備を急いでいる。商品を在庫して受注に応じてピッキング、梱包、出荷する通常の物流拠点とは別に、各地域に置くデリバリーステーション(DS)と呼ばれる小型拠点だ。DSは顧客から受注した商品を全国25か所以上に設置するフルフィルメントセンター(FC)などから集め、周辺地域の顧客の玄関先まで届けるラストワンマイルの起点となる施設で2019年から設置を開始。徐々に拠点数を増やしてきたが2023年内には一気に11カ所開設する計画。これによりDSは日本国内で50カ所以上になる。

 DSは地域配送の最終拠点という役割はもちろん、置き配の利用促進やドライバー不足を解消すべく、新たな配送の担い手を活用するためのハブの役割も果たしている。アマゾンではFCから直接、顧客へ配送する際などは佐川急便、日本郵便、ヤマト運輸といった大手宅配業者に配送を委託しているが、顧客がより密集するエリアなどではDSへ荷物を集めてアマゾンが自社配送サービスとして配送業務を委託する配送業者「デリバリーサービスプロバイダー(DSP)」および個人事業主「AmazonFlexドライバー」らが配送を受け持つ。DSを設けることで、当該拠点のカバーエリアでは大手配送業者ではなく、アマゾン側が自社配送サービスとして自らコントロールできる配送員による配送が可能となり、より効率的な配送計画が立てられるほか、配送効率や配送員の負担を軽減できる置き配の対応も可能となる。

 特に配送員の不在時持ち帰りという負担を軽減するうえで効果的な置き配の普及を妨げる一因となっているオートロック付き集合住宅居住者への配送の際に不在時に入館できず、置き配ができない問題を解決すべく、アマゾンが21年から運用を開始して対応マンションの拡大に注力している集合住宅のオートロックを配送員が解除できる仕組み「Key for Business(キー・フォー・ビジネス)」ではアマゾンの配送専用アプリを使って配送業務を担う配送業者であるDSPやAmazonFlexドライバーのみとなっていることから、アマゾンによると現在の75%(今年7月時点)となっている置き配利用率をさらに増やしていくためにはDSの整備・拡大が必須となるわけだ。

 また、同社では新たな配送の担い手を確保すべく2020年から商品配送を街の商店などに委託し、委託を受けた商店主らが本業の空き時間に副業として自身の店舗の近隣宅へ商品を配送する「AmazonHubデリバリーパートナープログラム」を開始しており、東京や大阪など大都市圏で展開中だが、同取り組みの実施についてもDSからDSPやAmazonFlexドライバーから委託する商店主らの店舗に荷物の横持ちや、商店主らが不在による持ち帰り荷物や体調不良などで配送できなくなった荷物はDSPらが引き取りを行い、代わって配送を行うなどの運用を行っており、「AmazonHubデリバリーパートナープログラム」の実施にDSは欠かせない役割を担っているようだ。

 年内にも新設する11カ所のDSは神奈川県平塚市(開設月3月)、千葉県四街道市(同4月)、静岡県三島市(同8月)、栃木県宇都宮市(同9月)、富山県富山市(同9月)、山梨県甲府市(同9月)、奈良県天理市(同9月)、岡山県岡山市北区(同9月)、福岡県筑紫野市(同9月)、群馬県前橋市(同10月)、兵庫県神戸市長田区(同10月)に開設。このうち、栃木県、群馬県、富山県、山梨県、奈良県、岡山県は初めての開設になる。「迅速に届けるため、さらに距離を縮めて効率的に配送できるDSが11カ所加わる。19年に1カ所だったDSが全国で50カ所以上になる。また7県で翌日配送が可能になり、置き配にも対応でき、ドライバーにとっても再配達を減らし、環境面への負荷も低減できる」(アマゾンジャパンアマゾンロジスティクスのアヴァニシュ・ナライン・シング代表)とする。

 
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