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宅急便の輸送力向上へ<ヤマトグループが貨物専用機を導入> 早朝・深夜の運航などで迅速輸送を

2023年11月24日 12:00

 ヤマトグループが来年4月11日から、自社でリースした貨物専用の航空機を活用した宅配便を含む荷物の輸送を開始する。「物流の2024年問題」による輸送力低下への対応や通販市場の拡大などで増加し続ける荷物を安定的に輸送する手段として活用していく。また、自社機のため、既存の旅客機の貨物輸送では難しかった深夜の運航なども可能となり、荷物の長距離輸送のリードタイムの向上にもつながり、「今まで実現できなかったスピード輸送を提供できる」として、「宅急便」の付加価値を高めたい考え。地場の産品や生鮮品を取り扱う、またはスピード配送を実現したい通販事業者からも注目されそうだ。
 
 来年4月11日から運行するヤマトグループ専用のフレイター(貨物専用機)は「エアバスA321‐200P2F型機」。もともと旅客機だった機体を改修し、床下貨物スペースのほか、座席を取り除き、床にレールをつけて、客室にも貨物を積めるようにしたり、大型貨物の積み込みができるよう大型搬入口を取り付けるなどしたもの。1機あたりの最大搭載重量は28トンで、上下の貨物スペース合計で24の航空コンテナを積載可能。「10トントラックに積載できる荷物の5~6台分」(ヤマト運輸・貨物航空輸送オペレーション設計部の鈴木達也執行役員)に相当する。同サイズの小型機と比べ約20%多くの貨物の搭載が可能だという。なお、フレイターは3機をリースして、日本航空グループのLCC、スプリング・ジャパンが運航する。

 「荷物の需要は変化している。宅急便をはじめとした小口貨物は通販の拡大や商流の多頻度小口化で増えてきている。一方で『物流の2024年問題』などから安定的に荷物を運ぶことが難しくなっていく中で、当社としてトラック、鉄道やフェリーだけでない色々な輸送モードを取り揃え安定期な輸送力の維持、向上を図る必要がある」(同)としたうえですでに活用している既存の旅客機の床下貨物スペースを使った輸送についても「飛行機が小型化している中で荷物を運びたい時に運べないケースが出てくる」(同)とし「一方で飛行機の発着枠は整備され広がっており、当社のような事業者でも枠をとって飛行機を運航できる環境が整ってきた」(同)として、荷主などの需要に合わせて自社で柔軟に運航区画や深夜を含めた運航時間を決めることができ、より多くの大型貨物を輸送できるようになる貨物専用機を自社チャーターすることに決めたという。

 11月から訓練飛行を開始後、来年4月11日から商業運航をスタート。まずは成田(千葉)から新千歳(北海道)、北九州(福岡)、那覇(沖縄)と那覇から北九州を結ぶ路線を1日9便運航。来夏からは羽田空港からの発着もはじめ、羽田から新千歳、北九州を結ぶ路線を加えて1日13便の運航体制とする。同社では最終的に21便体制まで拡大したい考え。

 午前4時15分発、午前5時55分着の羽田・新千歳便や午前1時40分発、午前3時15分着の北九州・羽田便など早朝・深夜帯の運航が多いことが特徴で従来の旅客機の床下貨物スペースによる輸送ではできなかった早朝・深夜帯に運航させることで「例えば朝一番で地方の生鮮品などを(首都圏に)我々がすぐに配達したり、羽田についた荷物を国際線の貨物スペースにのせて海外にすぐに輸送できるなど、今まで実現できなかったスピード輸送を提供できる」(鈴木執行役員)という。

 自社フレイター運航で「宅急便」の輸送の安定化を担保しつつ、「”スピード”を必要とされるお客様に新しい価値を提供していく」(同)とし、フレイターの輸送速度を活用した法人向けの新たな商品の展開や航空機などを活用して翌朝までに配送を約束する「宅急便タイムサービス」の強化など「その先の商品展開についてもお客様が使いやすいサービスを検討していきたい」(同)とする。

 11月20日に成田空港の格納庫で開催した関係者らへの同フレイターのお披露目会に登壇したヤマトホールディングスの長尾裕社長は「(フレイターの運航は)2018年から海外の事例の視察等も含めて検討を始め、19年から本格的な検討をスタートし、いよいよお客様に利用いただくフェーズに入った。安全な運航を最優先にしながら皆様にとって役に立つものにしたい」とあいさつ。また、日本航空の斎藤祐二専務は「日本航空グループの貨物事業としてさらなる成長を実現していくチャレンジの非常に良い機会。国内の貨物輸送はほとんどトラックでの輸送で国内航空による分担は1%程度。航空の持つ長距離を高速で輸送できる利点をいかして持続的かつ高品質の物流ネットワークの構築に貢献していきたい」。フレイターの運航を担当するスプリング・ジャパンの米澤章社長は「LCCが貨物機を運航するのは日本では初めて。私たちにとっても大きな挑戦だが、日本の社会および私たちにとって大きな意義ある事業だ。しっかり担当させていただく」とした。

 物流サービスは24年問題からコスト増などを懸念する通販事業者も多いが、一方ではスピード配送など付加価値を求める顧客ニーズも少なくない。地方で地場産品や生鮮品を扱う事業者のほか、より早い配送を顧客に提供したい通販事業者などは利用するタイミングも出てきそうでその行方が注目される。


速さ求めるお客様の荷物運ぶ

<ヤマト運輸の鈴木執行役員に聞く フレイター導入の狙い>

 来年4月から運行するフレイラーの導入の狙いなどについてヤマト運輸の貨物航空輸送オペレーション設計部の鈴木達也執行役員に聞いた。(11月20日開催のお披露目会での説明や報道陣との一問一答から要約・抜粋)

                        ◇

 ーー物流の24年問題への対応という意味でのフレイラー運航の効果は。

 「24年問題でトラックドライバーが不足する一方で通販の拡大などで扱う貨物は今後も増えることが予想され、安定的な輸送が難しい状況にある。フレイターだけで解決する問題ではないがいかに安定的な輸送手段をお客様に提供していくかということを考えて、トラック、鉄道、フェリー、飛行機など輸送モードを組み合わせ安定的かつ最適な輸送手段を用意することが大事だ。24年問題などで配達までに時間がかかってくるということもあるため、フレイターはそうした状況を補う施策の1つと考えている。また、スピードを求めるお客様の荷物を運ぶことができる。そうしたお客様の荷物を取り扱うなど使い分けをしていきたい」

 ーーこれまでも航空機を使った輸送は行ってきたが専用機を持つ理由は。

 「安定的な輸送力確保に加えて、お客様の輸送ニーズをどう実現していくかを考えた時にどうしても既存の旅客機の貨物スペースでは難しい場合がある。特に夜の時間帯の輸送はできない。例えば地方でとれた産直品を朝までに関東まで運ぶとか、通販の荷物をより早く欲しいというお客様に運ぶといった新しい価値を生みだすためには専用機を持つ必要があった」

 ーートラック輸送と比べた場合の航空輸送のコスト感は。

 「トラックで輸送する方が少なくとも現段階ではコスト的には安価だ。ただ、24年問題や今後のドライバー不足などを踏まえるとこれから輸送トラックのコストが上がっていくのは確実。そういった意味で差はだんだん縮まってくる。似通ってくるコスト感の中でスピードを考えた時にフレイラーには価値があると思う」

 ーーフレイラーの運航で新しいサービスメニューなどは打ち出されるのか。

 「法人への貨物輸送のご提案の中の1つとしてフレイターを活用したものも提案していくことになると思う」

 ーー航空料金をプラスするようなメニューなど「宅急便」のメニューの変更は。

 「(スピード配送は)すでに『宅急便タイムサービス』もあるのでこちらを利用いただくことになるが、その先の商品展開についてもよりお客様が使いやすいサービスを検討していきたい」

 
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