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【ニュースの断層】 ヤマトHD  産業再生支援の受け皿を

2011年 4月13日 18:58

 6-1.jpg東日本大震災被災地の支援策として、4月から来年3月までの1年間、毎月「宅急便」の取り扱い1個につき10円を寄付すると発表したヤマトホールディングス(ヤマトHD)。1企業で130億円の寄付はかなりの規模。同社の年間業績(10年度業績見込み)で見ても、営業利益で約20%、純利益で約40%のインパクトがあり、同社の木川社長も、「正直、社長としてこれをやるべきか悩んだ」という。それでも実施を決断したのは、次のステップとなる水産業や農業など基幹産業の復興に一刻も早く着手する必要があると考えたためだ。

 すでに企業や団体、個人などから、日本赤十字社などを通じ、多額の義援金が寄付されているが、通常、こうした受け皿を通じた寄付は、被災者の当面の生活を支えるために使われることが多い。

 一方で、産業再生のために寄付をしたいという企業も少なくないはずだが、産業再生を目的とした寄付の受け皿はあまり見当たらないのが実情。木川社長自身、被災地を視察した際にも、原発事故の問題で先行きが不透明な福島を除き、岩手および宮城県側は、「これからは復興だと言っていた」(同)こともあり、実際のお金の使われ方にギャップを感じたようだ。

 ただ、今回の震災は被災地域が広く、復興までに要する時間と金額が莫大になることは想像に難くない。このため130億円規模にもなる寄付を決めたわけだが、同時に政府に対し、一企業として「被災地のために資金を出していく用意があるということを示した」(同)とする。

 つまり、ヤマトHDとしては今回の寄付で政府の被災地支援策に一石を投じ、産業再生のための公的な受け皿作りを検討してもらいたいわけだ。

 仕組みは幾つかあるが、同社が一例として挙げるのは、政府主導による産業分野別の公的な基金の創設。拠出先が分かる公的基金であれば株主にも説明しやすく、賛同する企業は主体的にお金を出しやすくなる。また、寄付先への資金拠出のスピードアップなども期待できるほか、「無税であれば民間の資金がかなり出てくるのではないか」(同)と見ており、関係省庁などへ説明をしていく考えだ。

 被災者の当面の生活支援は大切なことだが、ヤマトHDでは、被災者の今後の生活基盤、"働く場"となる産業基盤の再生も同様に重要と見ている。「宅急便」を活用した寄付金の使い道は産業再生の支援にウェイトを置く考えだが、生活基盤の部分でも、被災者に働く場ができた時に子供を預ける場所作りなどへの活用も視野に入れる。

 今回の震災では、通販事業者でも義援金の寄付や支援物資の提供などの取り組みを展開している。今後の復興の過程では、衣料品や家財など商品提供を中心とした被災者の生活基盤復支援に貢献していくことになるが、やはりその根底にあるのは、生活の糧を生み出す産業の再生。ヤマトHDが投じた一石が産業再生支援の新たな潮流を生み出すか、今後の動向が注目されるところだ。

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