中国との協議の準備を進めよ
日本企業の中国市場への参入意欲が依然旺盛だ。通販・ネット販売においても、中国で事業を開始する企業が後を断たないが、日本企業の中国ネット販売支援事業者によると、東日本大震災発生の以降、国内のメーカーや小売事業者などから、中国でのネット販売の展開に関する相談が急速に増えているという。未曾有の被害を出した今回の震災では、被災地の復興までにかなりの時間を要するとされ、さらに出口の見えない原発問題など、長期的に消費マインドを停滞させる要因が横たわる。こうした日本市場の先行きの不透明感が、国内企業に中国進出を急がせているようだ。
中国市場の成長性については、以前から指摘されてきたが、経済産業省が6月初旬に発表した日中間の越境EC調査は、改めてこれを裏付けるものとなった。
同調査によると、過去1年間に越境ECを利用したという中国消費者の回答は58・7%に達し、日本企業の通販サイトを1カ月に1回以上利用しているという回答が6割以上を占めた。今後の越境ECの利用意向についても、「利用したい」という回答がおよそ8割になるなど、中国消費者の消費熱や越境ECに前向きな姿勢をうかがわせる内容だ。経産省でも、2020年の日中間の越境EC市場は、最大1兆2600億円規模になる可能性があると予測する。
ただ、この経産省の予測は、かなりの期待値を含んだもので、少し割り引いて見るべきだろう。無論、今後、中国ネット販売市場が拡大していくことはほぼ間違いないが、その触れ幅は、以前から指摘されている通関手続きや、商標権の問題、地域によって異なるローカルルールの問題など、制度的なものも含めた環境整備の進捗度合いによって左右される。これらは、ネット販売の別に関係なく、日本企業が中国市場で事業展開を行う上でネックとなる事案であり、その解消が不可欠だ。
経産省でも昨年、中国側と制度整備などに関する協議を行うことで合意しており、ネット販売を担当する情報経済課では、百貨店やGMSなどを所管する流通政策課と連携し中国側との協議に臨む考えを示していた。だが、今年3月に予定されていた流通政策課と中国側との協議は、東日本大震災の発生で中止。情報経済課では現在、海外向けの放射線関連などの情報発信サイトの構築など国内ネット販売事業者の支援を優先させており、中国との協議については、具体的な時期は明確になっていない状況だ。
無論、風評被害などに苦しむ国内ネット販売事業者の支援は大切なことである。一方で、震災発生以降、中国でのネット販売を志向する企業が増えている現状を考えれば、中国市場の環境整備も早急に手当しなければならない案件のはずだ。これについては経産省でも認識しており、今年度中に協議を行う意向だが、中国側との連絡も覚束ない現状のままでは、中国側の態度が冷え込むことも懸念される。被災地の産業復興や、原発問題など、経産省が取り組むべき課題が多いが、事業者の次の成長のためにも、早期に中国側と協議に入る準備を進めるべきだろう。
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ただ、この経産省の予測は、かなりの期待値を含んだもので、少し割り引いて見るべきだろう。無論、今後、中国ネット販売市場が拡大していくことはほぼ間違いないが、その触れ幅は、以前から指摘されている通関手続きや、商標権の問題、地域によって異なるローカルルールの問題など、制度的なものも含めた環境整備の進捗度合いによって左右される。これらは、ネット販売の別に関係なく、日本企業が中国市場で事業展開を行う上でネックとなる事案であり、その解消が不可欠だ。
経産省でも昨年、中国側と制度整備などに関する協議を行うことで合意しており、ネット販売を担当する情報経済課では、百貨店やGMSなどを所管する流通政策課と連携し中国側との協議に臨む考えを示していた。だが、今年3月に予定されていた流通政策課と中国側との協議は、東日本大震災の発生で中止。情報経済課では現在、海外向けの放射線関連などの情報発信サイトの構築など国内ネット販売事業者の支援を優先させており、中国との協議については、具体的な時期は明確になっていない状況だ。
無論、風評被害などに苦しむ国内ネット販売事業者の支援は大切なことである。一方で、震災発生以降、中国でのネット販売を志向する企業が増えている現状を考えれば、中国市場の環境整備も早急に手当しなければならない案件のはずだ。これについては経産省でも認識しており、今年度中に協議を行う意向だが、中国側との連絡も覚束ない現状のままでは、中国側の態度が冷え込むことも懸念される。被災地の産業復興や、原発問題など、経産省が取り組むべき課題が多いが、事業者の次の成長のためにも、早期に中国側と協議に入る準備を進めるべきだろう。