下請との関係性を再考せよ
総合通販大手のニッセンが9月21日、公正取引委員会から「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)違反で勧告を受けた。衣料品や家具、雑貨などの製造を委託する下請業者に対し、支払代金の不当な減額や売れ残り在庫商品の返品などを行っていたというもので、同日までにニッセンは、当該下請業者156社に対し、不当に減額した代金など合計約4300万を返金したという。通販事業者の「下請法」違反事件は珍しいが、それだけにインパクトは強く通販業界全体のイメージへの影響も懸念される。ニッセンは、大手総合通販事業者としての立場を自覚し、猛省すべきだ。
今回、ニッセンが公取委から指摘を受けた「下請法」違反行為は3点になる。公取委によれば、発注書面の作成・送付の事務手数料と称して一定料率を減額した代金を下請業者に支払っていた(4条1項3号「下請代金の減額の禁止」)ほか、売れ残りの在庫商品や受領後半年を経過した不良品の返品・引き取り(4条1項4号「返品の禁止」)をさせ、一部業者に対して返品の際の送料も負担させていた(4条2項3号「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」)という。いずれも下請業者との関係性を軽んじていたのではないかと疑われても仕方のない行為と言える。
今回の問題に対しニッセンは、「現場レベルの問題であり、会社ぐるみで起こしたことではない」(広報企画チーム)とする。だが、企業間の取引の中で行われた行為である以上、単に現場レベルの問題で済まされるものではなく、全社的なコンプライアンスに対する意識、企業姿勢に帰結するものだろう。
その意味でニッセンの対応は、脇が甘いといわざるを得ない。実際、事務手数料と称した支払代金の減額については、同社でも「下請けに限らず、全取引業者に対して、かなり以前から行なっていたもの」(同)としているが、これは「下請法」に抵触する不当な行為を長期にわたり見過ごしてきたことにほかならず、社内チェック体制に重大な問題があったことは明らかだ。また、返品の扱いについても、有店舗の小売業や他業種でもしばしば問題になる事案であり、下請業者と取引を行う上で、まず注意すべき事項だろう。
通販の場合、「特定商取引法」や「景品表示法」、「健康増進法」など表示を中心に関連法規が多いが、事業規模が大きくなり取引先が増えれば、「下請法」はもとより「独占禁止法」などにも目を配らなければならなくなる。ニッセンでは、今回の不祥事を受け、社内研修やチェック体制を強化する考えを示しているが、単に仕組みを作るだけではなく、その適切な運用に向けたコンプライアンスに対する全社的な意識改革を図っていかなければなるまい。
今回のニッセンの下請法違反事件に対し、他の通販事業者からは、従来からの価格戦略と絡め、下請業者との関係性を軽んじてきた結果ではないか推測する声も聞かれる。他の通販事業者も今回のニッセンの例を対岸の火事とするのではなく、ビジネスパートナーである下請業者との関係性と適切な取引のあり方を再度考えてみるべきだろう。
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今回、ニッセンが公取委から指摘を受けた「下請法」違反行為は3点になる。公取委によれば、発注書面の作成・送付の事務手数料と称して一定料率を減額した代金を下請業者に支払っていた(4条1項3号「下請代金の減額の禁止」)ほか、売れ残りの在庫商品や受領後半年を経過した不良品の返品・引き取り(4条1項4号「返品の禁止」)をさせ、一部業者に対して返品の際の送料も負担させていた(4条2項3号「不当な経済上の利益の提供要請の禁止」)という。いずれも下請業者との関係性を軽んじていたのではないかと疑われても仕方のない行為と言える。
今回の問題に対しニッセンは、「現場レベルの問題であり、会社ぐるみで起こしたことではない」(広報企画チーム)とする。だが、企業間の取引の中で行われた行為である以上、単に現場レベルの問題で済まされるものではなく、全社的なコンプライアンスに対する意識、企業姿勢に帰結するものだろう。
その意味でニッセンの対応は、脇が甘いといわざるを得ない。実際、事務手数料と称した支払代金の減額については、同社でも「下請けに限らず、全取引業者に対して、かなり以前から行なっていたもの」(同)としているが、これは「下請法」に抵触する不当な行為を長期にわたり見過ごしてきたことにほかならず、社内チェック体制に重大な問題があったことは明らかだ。また、返品の扱いについても、有店舗の小売業や他業種でもしばしば問題になる事案であり、下請業者と取引を行う上で、まず注意すべき事項だろう。
通販の場合、「特定商取引法」や「景品表示法」、「健康増進法」など表示を中心に関連法規が多いが、事業規模が大きくなり取引先が増えれば、「下請法」はもとより「独占禁止法」などにも目を配らなければならなくなる。ニッセンでは、今回の不祥事を受け、社内研修やチェック体制を強化する考えを示しているが、単に仕組みを作るだけではなく、その適切な運用に向けたコンプライアンスに対する全社的な意識改革を図っていかなければなるまい。
今回のニッセンの下請法違反事件に対し、他の通販事業者からは、従来からの価格戦略と絡め、下請業者との関係性を軽んじてきた結果ではないか推測する声も聞かれる。他の通販事業者も今回のニッセンの例を対岸の火事とするのではなく、ビジネスパートナーである下請業者との関係性と適切な取引のあり方を再度考えてみるべきだろう。