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【ニュースの断層】 医薬品販売有識者会議 関係団体にヒアリング

2011年12月 8日 10:08

3-1.jpg リアル店舗や通販・ネット販売などでの安全な医薬品の提供方法を検討する「医薬品の安全で円滑な提供方法を考える有識者会議」(有識者会議=座長・横森豊雄関東学院大学教授)は12月2日、医薬品販売関連団体に対するヒアリングを行った。日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)が設置の意向を示していたもので、民間の立場で医薬品販売の在り方について中立・公正な議論を標ぼう。だが、12月2日に開かれた医薬品販売関連団体へのアリングの進め方などを見る限り、"中立・公正"のうたい文句には疑問符がつきそうだ。

 有識者会議の委員は9人の構成で、中立・公正な議論をする狙いから、ビジネス上の利害関係がない学者や弁護士などを委員に選定。委員が医薬品販売制度に関する専門家ではないため、10月28日の第1回会合では医薬品販売制度に関する経緯説明などを行い、「まず、問題意識の共有を図った」(JACDSの宗像守事務総長)という。だが、その方向性は、ネット販売に"問題あり"との見方が優勢のようで、第2回会合として行われた事業者側へのヒアリングでも、その一端をうかがわせる場面が見られた。

 ヒアリングに出席したのは、JACDS(店販)、日本置き薬協会(配置販売)、日本漢方連盟(店販および通販)、全国伝統薬連絡協議会(通販)、ドラッグストアを運営するモリスリテール(ネット販売)。各団体・事業者が商品の陳列や販売方法、相談応需の体制などを説明し、委員が質問をする流れで進められたが、店販および配置販売は認められたモデルとして質問を省き、通販・ネット販売を行う団体・事業者に質問するという形だ。

 また質問の内容としては、漢方薬および伝統薬で店舗が廃業した場合の顧客対応や電話での相談応需体制などだったのに対し、ネット販売については、仮想モールに関する質問が中心。仮想モールで医薬品を販売する場合の最終的な販売責任の所在、仮想モール間における医薬品販売のルール共有化の状況など、仮想モール関連の質問を中心とした質問が出された。

 これに対しモリスリテールは販売責任は出店者側にあるとし、仮想モール間のルール共有化が図られていない印象があると回答。また、ネット販売の問題点に関する質問に、CtoCで第1類医薬品が売られるケースがあるのではないかとした。

 さらに事務局側が説明を補足。厚労省が設けた「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」で、三木谷会長兼社長が仮想モール運営事業者に最終的な販売責任がないと発言したことに触れ、「海外では運営者が責任を問われる事例が増えている」とし、欧州で医薬品ネット販売を行っているのは、全て店舗を持つ事業者だと付け加えた。

 有識者会議での議論は、国内で正規の許可を得て店舗を運営する事業者の一般用医薬品のネット販売の在り方のはずだが、事務局側が捕捉説明として、本筋の議論とは直接的に関係のない海外の事例を持ち出した背景には、ネット販売の問題点を強調する狙いもあるようだ。

 一方、何故、ネット販売のヒアリング対象だけ事業者なのかだ。有識者会議事務局は、日本オンラインドラッグ協会(JODA)にもヒアリングへの出席を打診したが、都合により辞退したためと説明。事務局をつとめるJACDSの宗像事務総長によると、JODAは事務局に入れることなどを要望し、「一度出席すると言っておきながら突然辞退した。敵前逃亡のようなもの」と不快感をにじませる。

 だが、JODAの言い分は少々違う。JODAでも「中立・公正な場で医薬品ネット販売のあり方を議論することに異論はない」(事務局)が、利害関係のあるJACDS単体で事務局を担っていること、会合を全て公開して欲しいとの要望に対し委員の都合により確約できないと回答されたことなどから、「"中立・公正"に疑問を感じ、出席を見合わせた」(同)という。また、ヒアリングに出席する意向を示し辞退したとする有識者会議側に対しても、「もともとヒアリング出席するとは言っていない」(同)とし、認識の異なる説明に不信感を持っているようだ。

 有識者会議では今後、来年2月まで毎月1回のペースで開催し、検討結果を厚労省や関係団体に提示する考えだが、ネット販売についてはバイアスの掛かった議論が進められる懸念もありそうだ。

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