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ロート製薬の「セノビック」問題、商品名は変更せず

2012年 3月15日 09:38

 ロート製薬の健康食品「セノビック」を巡る表示問題は、指摘した日本小児内分泌学会が振り上げたこぶしの収めどころを見失ったことで事態が空転しつつある。だが、業界内外でそのマーケティング手法を疑問視する声が続いている。



「非常に問題だと感じる」。日本消費者連盟の山浦康明事務局長は今回の事態を深刻に受け止める。今後、「加盟する『食の安全・監視市民委員会』等で対応を協議。科学的証明があるか、仮にあっても薬効を謳ってはいけないので景品表示法と薬事法違反、二重の観点から対応を検討したい」とする。過去に自治体への要請が指導に至った例もあり、検討いかんではしかるべき措置を行政に求めるという。

 日消連は、健食の機能性、さらには存在をも否定する団体の急先鋒。通販業界が健食の登録制など業界を挙げて自主規制に取り組む中、今回の騒動が表示制度化にとってマイナスに働くことは間違いなく、これを後退させた責任は軽くはない。



 一方の業界サイド。健食通販大手のある幹部は「一部上場企業のやることとは思えない」と語気を荒げる。ロート製薬が過去、幾度となく薬と健食を誤認させるような広告を展開し、問題視されてきたからだ。

 2003年には、健食と医薬品両方の商品名に「フレックスパワー」という名称を用いていたことが問題化。大阪府がパッケージの変更を指導した(商品名は変更せず)。また同年、医薬品と健食を同一枠の広告で掲載したことも問題視された。

 無論、健食に医薬品と紛らわしい名前を使うことは「医薬品的な効能効果」の暗示にあたるため薬事法付帯の通知で禁止され、同一紙での広告掲載も厳しく規制されている。

 製薬中堅のある幹部は「うちは医療用医薬品が大半を占めるがロートさんは一般用医薬品が主。そこに温度差があり、結局、会社のポリシーによる」と製薬会社のコンプライアンスの違いを解説する。ただ、「うちなら法務を担当する『薬事部』に限らず、企画の人間でもそういうことは絶対にしない」と強調する。日頃、学会所属の医師と関わりを持ち、万が一クレームが入ることを考えると「広告表現の線引きは難しく、誤解を与えないようにするほかない」と、越えてはならない"一線"を意識するためだ。



 今回、騒動の沈静化に動く学会にも「正しいことを言っているのになぜ沈黙するのか。ロート製薬と何か関係があると勘ぐられても仕方がない」と、その及び腰を批判する声が一部に聞かれたが、学会も内心は"憤懣やるかたない"のが本音だろう。低身長患者の家族会「ポプラの会」は「事業者が平気で"背が伸びました"と、明らかに嘘と分かることを書くから先生方も皆さん怒っている」と話し、別の関係筋も学会所属の医師がロート製薬に限らず、事あるごとに低身長に悩む人をターゲットにした企業への憤りを口にしていると証言するからだ。



 では、ロート製薬が開拓を目指す市場はどのようなものなのか。「ポプラの会」が低身長に悩む患者の実情を説明する。

 「治療に使われる成長ホルモン薬は輸入に頼っていることもあり高額。一番の伸び盛りである成長期に使うと、月30~50万円は必要になるが、大半の方は費用を捻出できず、破産寸前になる方もいる」。だから「(可能性が薄くとも)代用となる薬を求めている」。

 以前、化粧品大手のある幹部がロート製薬の商品について「例えば『極潤』など、機能が分かりやすく、効果感が伝わるネーミングが特徴」と話していた。その観点に立つ時、低身長に悩む人たちに「セノビック」という商品名はどう映るのか。"背伸び"の暗喩とはとれないか。



 ロート製薬は18期連続の増収(11年3月期連結)を達成している。だが、それがきわどいマーケティングの上に成立しているのだとすれば、それは一部上場企業の行いといえないだろう。

 通販はこれまで良くも悪くも"お悩み解決商材"の展開を強みとしてきた。だが、このことは、ともすれば人のコンプレックスを刺激することにもなりかねないもの。それだけに「セノビック」が暗喩か否か、健食を扱う事業者はよく考えてみてほしい。

 ロート製薬は学会による商品名変更の要請に応じていない。

(おわり)


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