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【トクホ 終わりの始まり 15.エコナ油、大炎上①】

2021年10月14日 12:59

地に落ちた成功事例

 2009年9月。熱狂に包まれて、民主党政権が誕生する。ほぼ同タイミングで消費者行政の司令塔となる消費者庁が発足する。この直後に特定保健用食品制度(トクホ)を揺るがす大事件が発生する。花王が展開していた「健康エコナ」シリーズに含まれる成分に、発がん性が疑われたのだ。トクホをうまくマーケティングに利用した代表的なケースでもあり、制度全体にも暗い影を落とすことになる。

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 1998年にトクホの許可を得た「健康エコナクッキングオイル」。

 食用油は家庭に欠かせない調理素材だが、高カロリーなどで肥満につながる可能性もある。しかし、エコナ油は「体に脂肪がつきにくい」という表示でトクホの許可を得た。しかも、食用油で初めてのトクホとなった。

 エコナとは「Edible Coconut Oil of Nagase」(ナガセの食用ココナッツ油)の頭文字を取ったもので、花王が戦前の1928年に発売した業務用食用油に由来する。

 花王が、家庭用の食用油市場に参入するあたり、社の歴史を担った冠を掲げた訳だ。力の入れ具合と期待の高さが推し量れよう。

 戦前から洗剤や日用品で、業界で屈指の知名度とブランドを構築した花王は、化粧品など異業種にも参入して、新しいイメージと収益基盤を確立してきた。テレビなどのメディアを使った巧みなマーケティングは、他の業界からも一目を置かれていた。

 花王が参入してきたこと、国の制度であるトクホをその拠り所にしてきたことは、特に大手の寡占市場だった食用油のメーカーにとって脅威と受け止められていた。サプリメントのような食品メーカーにとっての周辺商材でなく、「正に本業の米櫃に手を突っ込まれた」(当時を知る関係者)と思われたからだ。

 テレビCMでは、川原亜矢子さんを起用して健康的な生活イメージに重ねてというブランドスイッチを促すなど、マーケティング巧者らしさを垣間見せた。

 さらに、食用油から、炒め油、揚げ油、ドレッシング、マヨネーズなどに製品ラインを徐々に拡大。食用油の売り上げで一定のシェアを占める贈答用にも切り込み、檀ふみさんや阿川佐和子さんなど、文化的なイメージの女性も起用して、お中元などに特化したテレビCMバージョンも展開した。

 積極的なマーケティングが奏功して、エコナシリーズの売り上げは、09年時点で約200億円に伸長していたという。

 国が許可するトクホを取得した上で、まったく新しいブランドを立ち上げて、成熟市場で健康イメージからは遠い、油の市場に切り込む。そこで「身体に脂肪がつきにくい」という健康なイメージを訴求して、他社からパイとシェアを奪う。さらに関連製品で、ブランド価値を拡大させ、相乗効果を生んでいく。

 花王の戦略は、お手本のようなマーケティングであったといえよう。トクホであることは、差別化の上でも重要なポイントであったため、トクホマークを積極的に露出させ、制度とマークの普及にも一役買ったと評価できよう。

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 しかし、エコナシリーズには消費者団体から疑問の声があがっていた。発がん性の成分が含まれている恐れがあるというものだ。

 ある消費者団体のHPによれば、主婦連合会などは03年にこうした懸念を表明して、販売中止とトクホの取り消しを求めていたという。この問題は、消費者系の専門紙でも取り上げられるなど、くすぶり続けてきた。

 そして、民主党政権の誕生と消費者庁の発足という09年9月のタイミングで、この問題は大きくクローズアップされ、大炎上することとなる。

 報道も過熱し、花王は9月16日に、エコナシリーズの販売を自粛。10月6日には自主的にトクホを失効させるに至る。

 トクホにおける大きな成功事例は瞬く間に、地に落ちることとなった。(つづく)
 
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