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明暗分かれる宅配便──宅配便主要3社の前年度取扱状況

2012年 6月14日 13:30

 7-1.jpg有力宅配便事業者の2011年度宅配便取扱個数が出そろった。それによるとヤマト運輸の「宅急便」は前年比5・5%増の14億2361万個、佐川急便の「飛脚宅配便」が同8・8%増の12億9954万個と、堅調な伸びとなった。いずれも通販関連荷物の取り込みが進んだ形だ。さらに郵便事業会社(JP)が公表した11年度の「ゆうパック」の取扱個数は同11・4%増の3億8259万個。2桁増と好調に見えるが、前述の宅配便2社とは状況が大きく異なるようだ。

 10年7月にようやく実現した「ペリカン便」と「ゆうパック」の統合。「宅急便」「飛脚宅配便」に次ぐ第三勢力として通販事業者にも注目された「ゆうパック」だが、統合直後に大規模な遅配問題を引き起こし、荷主企業の離脱を招いた。

 これに伴う形で採算性の問題が浮上し、JPでは昨年度、単価引き上げなど荷主企業と取引条件の見直し交渉を推進。だが、サービス品質に不安がある中での単価引き上げは難しかったと見られ、この条件交渉をきっかけに「ゆうパック」から離脱した荷主企業も少なからずあったようだ。

 市場の拡大が続く通販を軸に宅配便取扱個数を伸ばしたヤマト、佐川の両陣営。両社とも通販関連の荷物をターゲットと位置付け、受取人である通販顧客を意識したキメ細かなサービスを強化している。「ペリカン便」統合後の問題などを考えると、「ゆうパック」の通販関連荷物の獲得は難しくなっていると考えられるが、その中でなぜ2桁の伸びとなったのか。結果から言うと、理由は比較対象にある。

 JPは、一昨年7月に宅配便子会社のJPエクスプレスが扱っていた「ペリカン便」を「ゆうパック」に統合したが、10年度の「ゆうパック」取扱個数は、6月以前の「ペリカン便」は含まれていない。これに対し11年度の「ゆうパック」取扱個数は、旧「ペリカン便」の通年ベースの数値が合算されたもの。つまり、11年度は前年にはなかった4~6月分の旧「ペリカン便」分がプラスオンされているため、公表数値上は前年をクリアしているわけだ。

 では、実態はどうなのか。JPによると、統合前の旧「ペリカン便」も含んだ10年度の「ゆうパック」取扱個数で比較すると、11年度の「ゆうパック」取扱個数は2%程度の減少。順調に取り扱い個数を伸ばすヤマト、佐川の両陣営とは対照的に、「ゆうパック」の苦戦振りがうかがえる。

 ネットの台頭で郵便物の取り扱いが年々減少するJP。新たな事業の柱として期待された「ゆうパック」だが、荷主企業から「配送品質は悪すぎる」(某通販事業者)という声が上がるなど課題は少なくない。

 JPとしては、国際的な郵便事業体ネットワークを活用したEMSの展開などで海外向け通販の取り込みを狙うが、本格化するのはこれから。

 その中で頼みの綱となりつつあるのが「ゆうメール」だ。11年度の取扱冊数をみると、震災発生に伴う広告自粛やコンプライアンスの兼ね合いなどからヤマト、佐川の両陣営がマイナスだったのに対し、「ゆうメール」の取扱冊数は前年比9・6%増の28億7215万冊。郵便物の転送先情報を持ち、送達率が高いことなどから、通販事業者にも利用されているようだ。

 市場が拡大する通販にいかにアプローチするか。これはJPの大きなテーマと言えるが、これまでの経緯や宅配便の競争環境などを考えると「ゆうパック」での切り込みは難しいのが実情。今後、「ゆうパック」の配送品質向上と独自性のある新たなサービスの展開が不可欠と言えそうだ。

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