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EC決済協議会、決済利用の環境づくり推進へ

2012年 8月23日 17:33

 ネット向けに決済サービスを提供する6社(GMOペイメントゲートウェイ、スマートリンクネットワーク、ソフトバンク・ペイメント・サービス、デジタルガレージ、ペイジェント、ベリトランス)が立ち上げた「EC決済協議会」。現状、具体的な活動内容は固まっていないが、カード会社など関係事業者・団体と連携しながら、大手事業者が自らセキュリティ基準などの遵守に取り組むことで業界への浸透を推進。安心・安全な決済サービスの利用環境整備につなげる。

増える行政等のヒアリング依頼

 「この1、2年、我々決済サービスプロバイダーに色々なところから勉強会やサービス説明に関する依頼が増えていた」。EC決済協議会参加企業の1社であるベリトランスの安部勉執行役員は、同協議会の設立のきっかけについてこう語る。

 依頼の主は、消費者団体や行政など。その多くは、EC決済に関連した消費者トラブルをもとに、契約やサービス内容などの話を聞きたいというものだ。問題のある決済サービス提供事業者がヒアリングに応じることはまずない。そのため、大手決済サービス提供事業者に声が掛るわけだが、自社サービスの内容などを説明しても、他の事業者の問題事案について聞かれることが多く、一企業としての説明が業界としての意見とすり変えられるケースもあるなど、まっとうな事業者とそうでない事業者が一緒くたにされ、業界としての意見を述べる土台もなかった。

 これに対し、一部の決済サービス提供事業者の間で、日本国内できちんとやっている事業者のプレゼンスを上げるため各社で連携を取る必要があるのではないかという話が浮上。大手決済サービス提供事業者に声をかけたところ、各社にも何らかの枠組みが必要という認識があり、先の大手6社でのEC決済協議会の設置に至ったという。

大手が取り組み業界への浸透を

 EC決済協議会で取り上げる主なテーマは、「セキュリティ」と「不正利用」、ECサイト運営事業者など加盟店管理に関する「運用」の3点。毎年のようにバージョンアップされるセキュリティなど、継続的な検討が必要なテーマを中心に設定したが、今後の状況によっては、法規制や海外の動向などもテーマになる可能性があるとする。

 活動の大枠としては、パートナー事業者であるカード会社やコンビニ本部、金融機関などが設けるセキュリティ基準や加盟店管理の項目に対し、大手の決済サービス提供事業者が主体的に取り組みを進めることで、業界全体への浸透を推進。これにより、安心・安全な決済サービスの利用環境を整備する。

 また、同協議会をパートナー事業者との情報・意見交換に関する業界の受け皿としていく意向で、国内クレジットカード会社や国際ブランド、行政および関連団体などとの連携を想定。JADMAについても「対象になると思う。個社でもあまり関係性がなかった面もあるため、協議会を通じて情報や意見交換ができれば」(デジタルガレージの藤原呂也イーコンテクストカンパニー営業本部長)とする。

財務基盤などの加入条件も検討

 一方、EC決済協議会では、今後、他の事業者の加盟希望に備え、加盟条件も検討する方針。

 現在、案として浮上しているのは、上場企業もしくは上場企業子会社という財務基盤条件のほか、国際カードブランド5社が策定した「PCIDSS」準拠のセキュリティ条件など。また、「クロスボーダーとの違いを打ち出すため、国際ブランドが決めている国内ルールを遵守していることなどが必要になると思う」(ベリトランスの安部執行役員)とする。同協議会としては、これらの事項が決済ビジネスをする上での最低ラインと認識。これに満たない事業者は、決済ビジネスの運営が難しくなるのではないかとの見方だ。

 安心・安全な決済の利用環境作りは、通販・ネット販売事業者側としても歓迎されるが、EC決済協議会が業界団体として機能し始めるのには、まだ時間が掛かりそう。

 実際、設立時点では幹事会社や会長、役員、テーマ別検討会など組織体制は固めておらず、8月下旬の初会合で、テーマに対する取り組みの方向性や会合の開催頻度などを協議する予定だ。

 大手6社でスタートしたEC決済協議会。今後、どのような具体的活動内容を打ち出し、それが業界全体に波及していくか動向が注目される。

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