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ヤマトCF、決済サービス拡充で通販主流に(上)

2012年 8月23日 17:34

 ヤマトグループは、小口のBtoB通販などをターゲットに、「宅急便」と決済を連携させたサービス展開に本腰を入れだした。8月1日付でファインクレジットから社名変更したヤマトクレジットファイナンス(以下YCF)は、BtoB向け決済サービス「クロネコあんしん決済サービス」の拡販を加速。デリバリーやロジスティクス、IT機能などグループの総合力を活かした展開でBtoB通販市場の開拓を進める。法人向け卸など新規事業を検討する通販事業者の間でも、今後、同サービスが注目されそうだ。

 YCFの前身であるファインクレジットは、旧富士銀行系の中堅信販会社で、2005年にヤマトグループ入り。訪販系の呉服や宝飾品など高単価商材のショッピングクレジットを主力としてきたが、訪販事業者の行政処分が相次いだことなどでショッピングクレジットのマーケットが縮小。第2の事業の柱として、ヤマトグループが得意とする物流に付随したサービス展開を検討する中で開発されたのがBtoB向けの「クロネコあんしん決済サービス」だ。

 同サービスでは、信用供与や請求書発行、集金代行、督促、債権保証などの機能を提供。「宅急便」の活用による小口・多頻度の取引を意識したのが特徴だ。

 買い手企業側としては、銀行振込、口座振替、コンビニ決済など決済手段が選べるほか、掛け買い(毎月一括後払い)対応、最長65日の支払サイト設定などにより、品揃え拡充や資金繰りの負担軽減が図れるのがメリット。

 売り手企業側も代金回収リスクが低減できるほか、請求書発行や集金代行、督促、入金消し込みなどの機能の利用で事務処理の負担を軽減でき、集金業務に追われていた営業担当者を本来の営業に特化させ、売り上げの拡大を図るといった流れを作ることも可能になる。

 「宅急便」に付随した決済サービスとしては代引きが使える「宅急便コレクト」もあるが、反復取引を前提とするBtoBでは、現金でその都度決済するのは買い手企業にとって意外な手間。これに対し「クロネコあんしん決済サービス」では、掛け買いを可能にすることで、反復取引の促進を図っているわけだ。

 一方、「クロネコあんしん決済サービス」の導入企業数としては、現在約1万4000社。食品や日用雑貨、アパレル、メディカル系商材、業務用清掃用品、工業部品など商材は多岐にわたる。足元の状況としても、販路開拓や売り上げ拡大を検討するメーカーや卸などの企業がネットで受注を獲得しようとする動きが活発化。「新製品を開発したメーカーが卸を使わずに販路を開拓したいということで問い合わせにくるケースもある」(YFCの樫本敦司社長)など、BtoB通販を検討する企業の間でも同サービスが注目されつつあるようだ。

 これは、販路拡大策としてBtoB通販・ネット販売を目指す企業が増えていることもうかがわせるもの。YCFでも「これからBtoB通販を立ち上げようという企業に刺さったサービス」(同)と手応えを感じているようだが、その背景にあるのは、ヤマトグループとしての総合的な提案力だ。

 実際、メーカーや卸などが新規事業としてBtoB通販を行うにしても、バックヤード部分の仕組みなどが必要になる。

 YCFの「クロネコあんしん決済」は最終段階の決済を担うものだが、ヤマトグループとして、その前段階のロジスティクスやデリバリーの機能があり、受注の部分でもIT機能、さらにDMなどを通じたマーケティング支援機能も保有する。つまり、企業の状況に応じたワンストップの提案ができる強みがあり、YCF側としても自社単独ではなく、ヤマトグループとしてサービスを提供していく考えだ。

 極力小さなリソースで地方の中小小売業者などの開拓、地域限定品の全国展開を目指すメーカーや卸の間で「通販を使うという流れがメーンになりつつあると思う」とするYCFの樫本社長。すでに「クロネコあんしん決済サービス」を導入し、卸事業に本腰を入れ始めた健康食品通販事業者があり、他にも成果を出している企業が出てきているようだ。(つづく)
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