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オークローンマーケティング・ヒル社長に次の一手を聞く(下)「今期は年商600億円超へ」

2012年 8月30日 13:15

2men.JPG 前回に引き続き、オークローンマーケティングのハリー・A・ヒル社長(写真)に現状や今後の戦略について聞いた。

――前期は若干、苦戦したが、今期(2013年3月)はどうか。

 「順調に推移している。売上高は600億円を超えるだろう」

――順調な理由は。

 「前期の苦戦の一因だった地デジ化後の視聴分散による影響はほぼなくなり、むしろプラスの効果が出始めたこともある。地デジ化後、人々の視聴習慣が大きく変わり、時間やテレビ局ごとの視聴率や視聴層、それに伴うレスポンス率の予想などこれまで我々が蓄積してきたデータでは視聴者の動きが見えなくなり、これに伴い、レスポンスが伸び悩んだわけだが、地デジ化から1年経った現在では新しくデータを蓄積し、逆にターゲットも非常に明確に把握でき、非常にプラスに働いている。特定のターゲットのみに特化した映像作りができ、その分だけ当該層に訴求力の高い映像を放送することができるようになったということだ。

 当社の主力商品の1つである『レッグマジックX(運動器具)』を例に挙げると、同商品のメーンターゲットはF2層だ。ただ、映像を制作する場合、曜日や時間からそのチャンネルを視聴している人の特徴に合わせて作成するため、F2層を強く意識しながらも、F1層(20~34歳女性)やF3層(50歳以上の女性)、M3層(50歳以上の男性)の反応もある程度、取れるような番組作りを行っていた。イメージとしてはメーンで50%、そのほかのサブターゲットで残り50%のレスポンスということだ。しかし、今ではほぼメーンターゲットのみを意識した映像を制作するようになってきている。多チャンネル化でそれぞれのチャンネルの視聴者の属性がより限定され、視聴者像がより明確になったためだ。

 これを受けて、先ほどの『レッグマジックX』で言うと、これまで女優の田丸麻紀さんを起用して、F2層にダイエット効果などを打ち出した『美脚作り』で訴求してきたわけだが、これに加えて、今年1月からF3およびM3層向けに女優の草笛光子さんを起用してシニア世代の愛用者の声を元に足腰の筋肉への効果や健康作りについて訴求するシニア層をターゲットとしたインフォマーシャルの放送を始めた。すると当該層から売り上げを大きく伸びた。1月から毎月10万台くらいのペースで『レッグマジックX』を販売しているが、その多くは60歳以上のお客様ではないか。多チャンネル化でそれぞれのチャンネルの視聴者が年代別、趣味別と分かりやすくなった。このことは我々のようなダイレクトマーケティングのデータに基づいて戦略を実行できる企業であれば大きなチャンスだと思っている。今後も各チャンネルで視聴層に特化した映像を制作し、レスポンスを高めたい」

――好調要因はほかにもあるか。

 「昨年は伸び悩んだダイエットやフィットネス関連商品も先ほどのような理由のほか、震災・節電に伴う『テレビ離れ』もだいぶ戻ってきてコア顧客層であるF2層の反応が戻ったこともあり、今期は調子がよく、既存商品はもちろん、新商品も売れ行きがよい。既存商品では『ヒルズダイエット(ダイエット食品)』や『フードセーバー(真空パック機)』『トゥルースリーパー(寝具)』『マジックブレット(ミキサー)』『レッグマジックX(運動器具)』『スレンダートーン(腹筋運動器具)』がそれぞれ好調でこれに加えて新商品で今年6月から発売した『TRF イージー・ドゥ・ダンササイズ(エクササイズDVD)』を始め、『レッグマジックサークル(運動器具)』『アブサークルプロ(同)』も調子がよい。特に『TRF』はスタート時点から非常に反応がよく期待している。大ヒットしたDVD『ビリーズブートキャンプ』は最終的に150万セット、『コアリズム』は200万セットを販売したが、今までの経験から推測すると『TRF』でも確実に100万個超える商品になると思う」

――ネット販売はどうなのか。

 「テレビはもちろん、新聞やPC(インターネット)など各メディアの最適化もだいぶ、見えてきている。それぞれ特徴を持って最適かつ妥当なコンテンツを作成、表示できていると思う。インターネットについては前期は若干、伸び悩んだ。一昨年は総売上高に占めるネット割合は3割近かったが昨年は24%程度まで下がった。コア顧客層でネット注文比率が高いF2層の反応が悪く、逆にF3、M3層が伸びたため。当該層は電話受注が多いからだ。ただ、今年はF2層のレスポンスが元に戻ってきており、ネット比率も30%程度に戻ってきている」

――親会社のNTTドコモとの連携について伺いたい。ドコモはオムロンとの合弁会社やタワーレコード、らでぃっしゅぼーやなど通販実施企業の子会社化などで通販を強化していく方針を打ち出しているが、これらとの連携については。

 「昨年は新システムの刷新もあり、新しい試みは行わなかったが、詳しくは言えないが今期からは様々なことを計画しており、すでに具体的に動き始めているところだ。やはり、携帯電話のスマホ移行は我々としてはチャンスだし、新しいプラットフォームで様々な連携を行っていきたい」

――ドコモグループでスマートフォン向けの放送局「NOTTV(ノッティーヴィー)」が今年4月に開局し、御社もNOTTV内で「モトとるショッピング」という通販番組を実施しているが反応はどうか。

 「『NOTTV』についてはこれからだろう。(反応が)悪いということではなく、視聴者数に応じた反応だということだ。BS局の開局時も我々はスタート時点からBSで通販を行ったが、NOTTVでの通販もそれに近い考え方だ。しっかりと実績を蓄積していきたい」

―今後については。

 「システムを刷新したこともあり、CRMの強化に本腰を入れていきたい。新システムを活用して、より深く顧客分析を行うことによって、リピート促進などを図っていきたい。すでに行っているのだが、いくつかの企業と連携して、販売実績を基づいた関連商品のクロスセルなどをコールセンターや同梱で行っている。例えば『トゥルースリーパー』を買った人に枕やシーツをお勧めするリトルデータの活用だけでなく、例えばだが、『トゥルースリーパー』を買った人はこういう家具が好きだとか、ビッグデータも活用することによって、当該顧客に特別な提案をしていきたい。我々が販売する商品は全部で250~300SKUしかないが、グループ内外の企業と連携することで、多くの商品を取り揃えて便利なワンストップショッピングを提供していきたい。携帯電話のスマホ移行が進めば、スマホ経由で今までにないサービスやその日限りの特別なご提案などができるようになるだろう。より高度なワントゥワンマーケティングを実践していきたい」 (おわり)
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