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変わる表示規制、忍び寄る「保健所」の監視① 「いわゆる健食」狩り

2017年 1月26日 11:59

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「いわゆる健康食品」の監視を行う新たな規制当局として「保健所」が台頭している。昨年4月、政府は第4次一括法を施行。その中で健康増進法の執行権限(勧告・命令)が地方自治体に移譲されたからだ。中でも、規制が最も苛烈なのが民放キー局5社と大手広告代理店の電通、博報堂が本社を置く「東京都・港区」(本紙1590号既報)。ただ、監視の目は港区を中心に全国に広がっている。「保健所」の規制当局化で健食の表示規制が変わろうとしている。

「事後規制」に転換

 「『いわゆる健食狩り』をするんだと。科学的根拠があるなら『機能性表示食品』を使え、というメッセージを感じた」。保健所から指導を受けた事業者はこう話す。

 規制の中心は東京都港区の「みなと保健所」(=写真)。健増法では、都内で断トツの年間200件前後の指導を行っている。

 保健所の指導は3つに分かれる。職権探知による「積極監視(指導)」、広告主が管轄外であった場合にその地区の自治体に指導・報告を依頼する「回付(情報提供)」、事業者からの相談に対応する「相談指導」だ。つまり、本社が港区でないからといって対象にならないわけではない。

 これまで「みなと保健所」は、テレビ局や広告代理店からの相談を受ける「相談指導」にも対応していた。だが、権限移譲後は「相談と執行を行う部署が同一なのはいかがなものかということもあり、事後規制に転換した」と、今後は事業者と距離を置く姿勢を示す。指導の対象も媒体社から販売事業者(広告主)に軸足を置く。

480の監視の目

 健増法の移譲で何が変わるのか。一つは「ハード面」の変化だ。

 もう一つの表示規制法である景品表示法は、これまでは消費者庁が執行権限を所管。消費者庁は出先機関を持たないため、全国に8つある公正取引委員会の地方事務所も調査権限を持っていた。14年末、措置命令権限が都道府県に移譲されたが、それでもその数は50ほどになる計算だ。

 一方の健増法はこれまで消費者庁のみが執行権限を持っていた。だが、昨年4月、都道府県知事と東京都下23区の区長、全国の保健所設置都市の市長にその権限が移譲された。つまり、全国にある保健所480カ所(昨年4月時点、支所を除く)が監視の目を光らせることになるわけだ。景表法と比べても規制当局は圧倒的に増えることになる。

新たな監視手法

 二つ目の変化は「ソフト面」。健食広告に対する監視手法が生まれたことだ。

 景表法は、商品の機能について合理的根拠を要求し、これを違反とみなす「不実証広告規制」を特徴とする。一方の健増法は、複数の表示からくる広告の"健康イメージ"など「全体印象」を規制するもの。みなと保健所も「消費者庁からは違反に至らないための改善指導に力を入れてくれと言われている」としており、違反の前段階の「指導」で表示改善を迫ることができる。課徴金制度が導入され、より厳密な認定と悪質な事例に対処する景表法と、運用は明確にすみ分けられるようになる。

「何人」も規制

 加えて、規制対象も広がる。健増法は、テレビや新聞など媒体社、広告代理店を含め「何人も」を規制対象にしていることだ。この点、主に商品の販売者を「表示主体者」とみなし規制する景表法と大きく異なる。

 媒体社が最も恐れるのは、健増法で自らの関与の責任を問われ「勧告・命令」を受けること。保健所をはじめとする地方自治体は、「指導」というプレッシャーをかけることで媒体社を萎縮させ、直接、事業者を指導せずとも「広告考査」の側から広告表現を是正できる。媒体からの"逆流"という新たな規制強化が起こってくることになる。(つづく)

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