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だいにち堂VS消費者庁 「不実証」適用は違法か? 過去判例でも"適法"の判断

2018年 9月27日 10:19

 だいにち堂は今年8月、消費者庁を相手取り、東京地裁に景品表示法の処分取り消しを求め提訴した。注目される争点は、広告の「表示」と「根拠」の整合性に加え、「不実証広告規制」適用の違法性がある。果たして、だいにち堂の主張は認められるのか。

説明なき適用は違法と主張

 「行政の措置命令書は『違法と判断した表示、根拠条文、以上。』で終わる。法運用に議論の余地があるのは確か」。景表法に詳しいある弁護士は、こう今回の係争をみる。

 だいにち堂は、「不実証広告規制」の適用が違法と主張する。「不実証―」は優良誤認を対象に適用される前提。消費者庁が前提となる広告表現の"優良性"の理由を示しておらず、説明がなければ事業者は、争う手段がない。よって「不実証―」の適用は違法であり、処分は取り消されるべきというものだ。

 主張の背景には、行政手続法の規定がある。行政は不利益処分を行う場合、事業者の権利保護の観点から「弁明の機会」の付与、「処分の原因となる事実」を具体的に示さねばならないとされているからだ。

 ただ、前出関係者は、だいにち堂の主張が認められるかには、懐疑的な見方を示す。過去に似た例として「(遮熱フィルムの表示で措置命令を受けた)翠光トップラインの取り消し訴訟でも同様の主張が行われ、退けられた例がある」からだ。

翠光トップラインも同様の主張

 2015年に措置命令を受けた翠光トップラインは、16年に処分取り消しを求め提訴。だが、17年に原告の請求を棄却する判決で決着した。

 当時、翠光トップラインは、消費者庁による「弁明の機会」の手続きを問題視した。付与にあたり、根拠と認めない理由が明らかにされないため「弁明を行うことが事実上不可能」と、その違法性を主張した。

 ただ、裁判では、「(措置命令書には)対象となる具体的な表示が記載され、優良誤認とみなされるとの根拠条文が示されている。また、根拠と認めないケースに関しては『不実証―』に関するガイドラインの中で言及されている」との理由から主張が退けれた。前出の弁護士が解説する。

 「一般的に『許認可』などは事業者が提出した情報だけで判断されるわけではなく、理由は説明されなければ分からない場合がある。けれど『不実証―』はまったく預かり知らぬ事情で決まったわけではなく、否定された内容は事業者が提出した根拠の範囲に絞られ、どういった根拠を提出したかは処分企業が一番分かっている」というのがその解釈。このため、今回も同様に手続きの違法性が認められる可能性は低いとみる。

"全体印象"の是非問う判例に

 翠光トップラインは、手続きの違法性に迫った主張を否定され、遮熱に関して提出した試験データも消費者庁の主張を全面的に受け入れ、ことごとく否定された。

 だいにち堂をめぐるもう一つの争点は、「ボンヤリ・にごった感じ」といった表現と根拠の整合性。裁判は、複数の表示からくる"全体印象"の是非を問うものとしても注目されるものだ。

 だいにち堂は表現を「抽象的。主観的な表現で印象に過ぎない」「成分(=アスタキサンチン)が一般的に目に良いと表現しているに過ぎない」と主張している。処分を前に、アスタキサンチンに関する動物試験、臨床試験のデータも提出していた。

 ただ、消費者庁が16年に策定した「健康食品に関する景品表示法及び健康増進法上の留意事項について」では、不当表示の判断について「特定の文言や表現を一律に禁止するものではなく、表示全体の訴求内容により判断される」と示されている。また、商品は、「ヒト試験の論文に書いてある摂取量より、商品に含まれる成分量が少なかった」(消費者庁、当時)とされている。

 裁判の行方を待つことになるが、この点からも「表示」と「根拠」の整合性を主張するのは難しいかもしれない。

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