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【揺れる景表法④ 「言葉狩り」の誘惑】 “暗示”も規制対象、「不実証」適用、歯止めなき拡大

2019年 4月25日 13:20

 核兵器並みの威力と影響力を有する「不実証広告規制」。運用当初は、「表現の自由」との兼ね合いで抑制的な使われ方であった。だが効率的かつ迅速な取締りの誘惑から、発動に制限はなくなっている。さらに適用範囲のタガも外れ、すべての表示を対象とするべく歯止めなき拡大が続く。

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 「前記の表示について、当庁は、景品表示法第7条第2項の規定に基づき、当該企業に期間を定めて、当該表示の裏付けとなる合理的根拠を示す資料の提出を求めたところ、資料が提出された。しかし、当該資料はいずれも、当該表示の裏付けとなる合理的根拠を示すものとは認めらないものであった」。消費者庁が不実証広告を用い景表法における優良誤認事件を公表する際の定型文だ。

 問題となる表示を羅列した後、この紋切り型の文面を「実際」として示す。しかし、果たしてこれが「実際」と言えるのか。仮にそう呼ぶのであれば、どういう資料が示され、なぜそれが合理的根拠ではないのかという肝心な部分を示す必要があろう。しかし、これは一切公開されたことがない。

 企業に表示の合理的根拠を求める一方で当局が、違反と判断した合理的根拠はブラックボックスの中。これが不実証広告規制の現実だ。これでは処分された側に不満が募るのは、必定であろう。

 また、他社にとっても何が合理的根拠になるか分からず、不安も募っていく。当局は合理的根拠の定義を示しているが、いずれも当たり前の話であり、また表示はケースバイケースなため、事業者の予見可能性は極めて低いのが実情だ。

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 2017年11月、機能性表示食品の痩身効果が景表法違反とされた「葛の花事件」。この中で、消費者庁は、ある重要な違法認定を行った。機能性表示食品に対して初、さらに16社の一斉処分という衝撃の陰で、当時、注目されることはなかったが、これは不実証広告の枠組みを変える大きなポイントだった。もともと、この規定は製品やサービスの「効果」「性能」に関する優良誤認を対象としたものだ。このことは公取委が定めた「不実証広告規制」のガイドラインに明記されている。

 しかし、このところ、対象は際限なく拡大を続けている。「技術力日本一」「販売シェア№1」「業界最大手」なども不実証広告規制で、根拠を求め、違反としている。

 こうした適用が可能であれば、今後、その範囲は、「注文殺到」「シニア層に人気」「リピーターが急増」など、際限なく広がる可能性がある。これでは「言葉狩り」が疑われよう。そこに、「表現の自由」に抵触する大きな問題が潜んでいる。

 17年3月、消費者庁の措置命令を受けただいにち堂は、目の健康に関するサプリメントの表示をめぐり、「ボンヤリ・にごった感じの目の症状を改善するかのような表示」と違法認定を受けた。「不実証広告規制」に基づき根拠を求め、措置命令に至っている。

 ただ、この違反認定が意味不明だ。何を指しているのかが理解できない。そもそも広告で行っていた「ボンヤリ・にごった感じ」といった表現は、受け手によって印象が異なる。「ボンヤリ・にごった感じの目の症状を改善する」といった表現の合理的根拠を示せというのが無理筋だ。

 そもそも、何を言っているのか分からない暗示的な表示を、消費者庁が「こうだ」と決めつけていること自体、景表法の運用として、妥当性があるのか。議論の余地があろう。

 実際、その後行われただいにち堂による処分取消訴訟の中で、消費者庁は日本の人口構成比の再現を図り行った3000人規模の消費者調査で6割が「目や視界の不良な状態が改善される」との印象を持ったとの結果を示した。

 しかし、だいにち堂は、これに対して、自らで同様の調査を行い、「何の効果も期待できない」などと効果に否定的な印象を持った消費者が6割にのぼったと反論。「ボンヤリ・にごった感じ」の消費者の受け止めは、調査により、真っ二つに分かれている。

 「暗示について、優良誤認があるとして、景表法で取り締まること自体おかしい」。公取委の関係者はだいにち堂事件について、こう話す。そこには、景表法が公取委から消費者庁に移管された後、運用があまりに様変わりしたことへの危機感がある。(つづく)


 
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