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コロナでEC化加速<上半期の通販業界を振り返る> 巣籠り需要獲得、置き配も拡大

2020年 7月 2日 07:50

 新型コロナウイルスの感染拡大により、世界規模での激動に見舞われた2020年。早くも上半期が経過した。リアルでの小売り活動が縮小する中、通販業界やその周辺企業は消費者の生活を支えるべく奮闘。社会インフラとしての役割を改めて広く示すことができた。その一方で企業活動そのものに様々な制限が生じるなど、後ろ向きな面も強くあった。コロナ禍に翻弄されたこの上半期において、通販業界に起きた主な出来事を振り返ってみる。
 








 まずは、コロナを巡る通販業界の動きについて。世界規模での感染拡大が始まった2、3月頃から商品調達や売れ筋商品などに徐々に影響が出始め、4月の緊急事態宣言発令の前後からさらにその状況が加速する。

 売れ筋商品の変化としては、当初、アルコールやマスクといった衛生関連用品から始まり、その後、家での巣籠り需要に関わる商品の販売が好調となっていく。また、リモートワークが広がったことからPCや在宅用のオフィス用品も堅調に推移した。一方で打撃を受けたのが化粧品やアパレルなど外出に関わる商材。不要不急の外出を敬遠する流れから、一気に買い控えが生じ、化粧品大手の1~3月決算では消費マインドの悪化から、各社で減収。インバウンド需要の落ち込みも追い打ちをかけた。

 商材により、大きく明暗を分けたこととなったが、通販市場全体で見ると4、5月は大型商業施設や専門店といった実店舗の休止・営業時間の短縮などを受けて、リアルの顧客が大量に流れてきた。大手仮想モールでも大型セールで過去最高実績を記録するところが出るなどおおむね好調に推移。ここに来て世界規模で進み始めたEC化の波に日本もようやく乗り始めた様子が伺えた。

 そして、緊急事態宣言が解除された5月末以降は外出の人波も増えていき、リアルでの売り場も徐々に活気が戻ってくる。しかしながら、コロナで一度大きく進んだEC化の流れは強く、第2波への懸念もあり、ここにきて有店舗企業が行うEC戦略がより積極的なものへとなっていく。主だったところでは、ユニクロが6月に立て続けにECとの連動機能を持った大型店舗を開設。売り場の一角の壁一面に配置したディスプレイからスマートフォンを通じてECでの購入ができる仕組みを導入している。実店舗の営業を縮小していた4、5月はECでの購入が飛躍的に伸びたこともあり、今後もウェブとリアルを融合した店舗づくりを計画する。

 同様に家具販売大手のイケアでも都市型小型店舗を6月に初めて開業。専用アプリからのウェブ送客を行うなど、こちらもこれまでにはないEC連動を積極的に図っている。

働き方に大きな変化も

 また、感染拡大を予防するために社会全体で働き方も大きく変化。通販業界でもリモートワークや時間短縮勤務などの導入が拡大していった。これまでも他業種と比べて導入が進んでいた面もあり、比較的、スムーズに体制移行ができた向きがある。

 加えて、「3密」のリスクが特に懸念されていたコールセンター業務でも大きな動きがあった。ジャパネットホールティングスでは、ビジネスホテルを借り受けて1人1部屋で勤務できる「ホテル受注」を開始。また、ファンケルでは集約していた拠点を分散化して社会的距離を保持した座席配置とするなど積極的な対策を取っている。

「置き配」利用の急増に備え

 コロナの影響で周辺サービスの物流でも新たな取り組みが見られた。その代表格が「置き配」で、楽天の「楽天エクスプレス」では利用が急増しているほか、アマゾンジャパンでも3月下旬より30都道府県の一部地域で置き配を標準配送としている。また、外食機会の減少から利用者が増加傾向にあるオイシックス・ラ・大地でも、「留め置き(置き配))」用の資材(開封されていないことを確認する留め置きシールなど)を準備して、利用増への対応を開始した。

 元々、置き配は再配達問題などの解決に向けた切り札として運用が始まっていたものだが、感染リスクを考慮して非対面での荷物の受け取りを望むケースが出ており、ここにきて大手モールと物流事業者の間でその取り組みが加速している。関連して日本郵便でも4月より都営地下鉄の駅に設置する一部コインロッカーで宅配便の受け取りサービスを開始するなど、配送回りでの消費者ニーズの変化に対応する動きが活発化した。

 そのほか、ビジネス全般の話題として、オフィスへの来客禁止や社内会議の削減、出張・会合などを含む他の企業への訪問禁止といった対策に伴い、企業活動の範囲が徐々に縮小。

 また、6月からは少しずつ感染数の低下が見られ始めたものの、リアルでの大規模な販促イベントは引き続き手控える傾向が見られている。

仮想モールで新サービス相次ぐ

 コロナの影響ばかりが目立った上半期だが、この中でも企業間の連携や、買収・統合、新サービスの創出などがいくつかあった。

 とりわけ、印象的だったのが靴通販のロコンドで、3月に婦人靴の企画・販売を手がけるミスズアンドカンパニーを吸収合併したほか、5月にはワールドが保有するファッションウォーカーの全株式を取得することで基本合意。活発な動きを見せている。

 新サービスではプラットフォーマーの取り組みが目立った。ZOZOでは靴専門のECモール「ゾゾシューズ」をゾゾタウン内に開設。楽天では、カナダ発の通販サイトプラットフォーム「Shopify(ショッピファイ)」を運営するショッピファイと連携。ショッピファイを利用するアメリカと日本のネットショップを対象に、ショッピファイの管理画面を経由して、「楽天市場」の店舗運営を可能にするサービスの提供を開始している。また、KDDIとauコマース&ライフも、仮想モールの名称を「au PAY(ペイ)マーケット」に変更し、ポイントサービスでも共通ポイントサービス「Ponta(ポンタ)ポイント」に統合するなどオープン戦略に向けて大きく舵を切り始めた。

今年も多くの処分や情報流出

 そして、今年もまた企業の不祥事が、数多く散見された。個人情報の流出ではペット用品を販売するペットハグが運営サイトの「ペットハグサイト」で第三者の不正アクセスを受けて、顧客のクレジットカード情報を最大約4000件流出。鳥取市では運営する通販サイト「とっとり市(いち)」が第三者から不正アクセスを受け、合計で約3万7000件の個人情報が流出した。

 また、行政処分に至っては例年以上に多くのニュースが報じられた。1月に健食通販のRarahiraが電話勧誘を巡り特商法違反で6カ月の業務停止命令を受けたのを皮切りに、3月には健食通販のエムアンドエムやゼネラルリンクが、景表法に基づく措置命令を受ける。6月には夢グループの衛生マスクの表示で同じく措置命令を受けた。

 EMS機器を対象にした処分も初めて出ており、テレビ通販など4社が根拠と表示の不一致で違反認定を受けている。5月には健食を含む食品を扱う44事業者の65商品の表示において、健康増進法に基づく改善指導があるなど、その処分数の多さから行政による監視の目が一層厳しくなっていることが伺えた。

 一方で、消費者庁では1年前に行った健食通販のユニヴァ・フュージョンへの措置命令を撤回するなど、違反認定した不当表示の「表示期間」で誤りが判明。過去に前例のない措置命令の撤回に対して、企業側も不信感を募らせている。

 そのほか、行政関連での大きな話題としては、5月にデジタルプラットフォームを運営する巨大IT企業を規制する法案が参議院本会議で可決・成立。仮想モール運営事業者を対象に、出店者に取引条件などの情報開示を求めていき、政府への定期報告も義務付ける内容となっている。今後の行方が注視されている。

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 コロナ禍に見舞われたこの上半期、顧客の購買行動の変化により通販需要も増加。それに伴い、周辺のサービスや仕組みも想像以上に大きく一歩前進した印象を受けた。

 下半期に向けては、”ウィズコロナ””アフターコロナ”に関わる文脈で通販市場が動いていくことが予想されている。また、コロナ関連の企業倒産などもこれから一気に噴出するとも指摘されており、これまで以上に先行き不安な経済状況となることも予想されている。

 
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