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ヘルスケア表示 拱手の代償⑤ 2億3千万の衝撃

2020年 9月10日 07:30

不可欠な広告への「緊張感」

 薬機法違反容疑での代理店関係者の一斉摘発から一カ月強。ショックから覚めた広告業界の一部は、是正への取り組みを始めた。そこには衝撃的事実も含まれる。

 従業員が逮捕されたソウルドアウトは、9月1日に法令チェック強化のため「審査本部審査部」の新設などを発表した。「属人的な知見に依拠することなく、広告内容の全社的なチェック体制を確立する」とする。

 本紙からの質問に対し、これまでは「クリエイティブの担当部門および媒体社の審査」で広告をチェックしていたと回答しており、これを改めた格好だ。

 事件への経営層の責任については「社内調査委員会にて本件の事実関係及び原因分析を進めており、当該原因分析の結果を踏まえて検討する」と回答。核心である従業員の具体的な関与については「捜査協力中」を理由に口を閉ざす。

 一方で「KMウェブコンサルティング社との取引は一切なく、KMウェブコンサルティング社が関与した広告記事について当社は一切関与していないことはお伝えさせていただきます」と強調する。

 とはいえ、従業員の逮捕によって、関係先にも影響が広がっている。

 ソウルドアウトと関係の深いデジタルホールディンスは「ソウルドアウトから回答する」というコメントで、具体的な説明はない。

 業務提携し、社外取締役を派遣するヤフーは事件について「厳粛に受け止め、法令遵守に沿った業務遂行をしていくようあらためてソウルドアウトの社員教育を実施し、再徹底を行う」とコメントした。事件を受けて「社員に対し、Eラーニングなどで今一度コンプライアンス遵守を徹底指導した」と説明する。

 ヤフーはここへきて、広告の適正化への取り組みを強化している。が、その中でネット広告の問題点が白日に晒されている。2019年度に同社が非承認とした広告素材は「約2億3千万件」。衝撃的とも言える数字だ。

 このうち、今回問題となった健康食品等の薬機法関連での非承認広告はおよそ1000万件だという。いかに多くの問題広告が展開されているかが分かる。カオスだ。

 ヤフーは広告掲載基準の強化も行っており、広告のリンク先サイトとして一部の成果報酬型サイトを禁止している。チェックについても「人とシステムにより24時間体制で厳粛に審査対応をしている」とする。

 確かにヤフーの広告審査基準は網羅的だ。8月27日にも「コンプレックスに関する表現の広告審査」を強化する旨を公表し、該当する広告の掲載を拒否するとした。一方で、9月6日の時点である上場企業の育毛剤の広告で薄毛のコンプレックスを刺激するような表現がトップページからのリンクで掲載されていた。厳格な基準を掲げる一方で、法令違反の見逃しがあれば、当局の介入を招きかねない。ポータル大手としてはさらなる緊張感が求められよう。

 広告表現への対応を考える時、あるシーンを思い出す。数年前の日本通信販売協会の総会での一コマだ。

 茶目っ気とユーモアがあり、周りを和ませることの多い某健康食品メーカーの社長が、人気を離れたところで、携帯電話で話していた。社員とやりとりしているようだったが「どげんするとか」と珍しく怒気を含んだしゃべり方だった。どうも社員が社長の最終承認なく、広告を出稿し、それを叱責していたようだ。

 「逮捕されるとぞ」。聞こえてくる生々しい台詞に広告に対する厳しい姿勢がうかがえた。

 こうしたスタンスであれば、広告表現を任せることになるアフィリエイト広告には軽々には手を出さないであろう。

 代理店や媒体サイドの法令遵守や運用見直しも事件の教訓であろうが、広告主であるメーカーサイドも、危ない表現や手法の再点検が必要だ。それには経営層が自分事と捉える緊張感が必要であろう。繰り返すが健食ビジネスにおける表現は、極めて高度な法知識とノウハウが必要なのだ。それに耐えられないなら手を出すべきではない。(つづく)
 
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