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「事業者は商品開発に注力を」【スクロール360のEC支援策とは?】 BPOの重要性説く書籍出版

2020年12月 3日 07:30

 スクロール360は10月22日、『EC通販で勝つBPO活用術 ―最強のバックヤードが最高の顧客体験を生み出す―』を出版した(1772号で既報)。書籍の内容や同社が手掛けるソリューションサービスなどについて、高山隆司常務取締役(=写真(左))と、同社子会社である、もしもの佐藤俊幸取締役マーケティング事業本部長に聞いた。

 ーー書籍の概要は。

 高山隆司常務「BPO活用術と題しているが、物流や受注処理といった業務をアウトソーシングした方が良い、ということを重点的に説いている。当社はこれまで『物流代行が強い』というイメージを持っている人が多かったと思うが、現在はマーティングも含めて、通販業務を社名の通り360度お手伝いできる体制になっている。そこを伝えていこうというのが出版の趣旨だ。バックヤードは私が、マーティングの部分は2018年に子会社化したもしもの佐藤取締役が執筆している」

 佐藤俊幸取締役「5月にスクロール360のコーポレート・アイデンティティーを刷新した。もともとは物流に強みがあったわけだが、もしもがグループに入ったことで、顧客分析やマーケティングもサービスとして提供できるようになった。こうしたことを書籍に凝縮させている」

 ーーもしもを子会社化したことで、ネット販売企業に提供できるサービスはどう変わったのか。

 高山「ネット販売がうまくいっていない会社からの相談に対してヒアリングをするわけだが、マーケティング調査を先にした方がいい場合もあるし、サイト刷新が優先という場合もある。こうした診断をしたあとの打ち手を当社グループから提供できるようになった。自社でコンサルティングができて、物流ができて、コンタクトセンターがあり、決済もできるという会社は、日本ではスクロール360しかないと自負している」

 ーーデジタル・トランスフォーメーション(DX)化が進む中で、既存のネット販売企業の生き残り策は。

 佐藤「ネット販売は新しいステージに入ってきている。狭い意味でのマーケティングの時代は終わり、より広いマーケティングが重要になる。顧客をより深く知り、商品開発に反映させて商品力を高めるのが一番のキモではないか。オフライン・オンライン関係なく、良い商品を売れるかどうかという勝負。企業は良い商品を作ることに注力し、それ以外の業務は当社が手足となって動いていくのが理想だ」

 高山「アマゾンのような超大手に飲み込まれないためには、メーカーという川上に近づくか、顧客という川下に近づくかだ。顧客を理解した上でものづくりをする企業が生き残ると思っている。また、顧客体験を支援することも重要になる。書籍で紹介しているのは、例えばアウトドア初心者にテントを販売したら、1週間後に『テントの組み立て方』の動画を配信する。さらに、初めてのキャンプから戻ってきたタイミングに、ガスバーナーなどをおすすめするメールを送る。これはモノを売るというよりも、『キャンプを楽しむ』ことを支援しているわけだ。こうしたことができる企業が生き残れる、ということを詳細に記している」

 佐藤「実店舗なら、初心者にテントの組み立て方を書いたチラシを配るといったフォローができるが、ネット販売ではこれまでできなかった。これが実現すればオンラインとオフラインの境目が完全になくなるだろう」

 ーーどういったソリューションで支援していくのか。

 佐藤「マーケティングオートメーションツール(MA)で支援していく。ただ、例えばスマートフォンと親和性のあまり高くない年齢層の顧客が購入した場合は、動画ではなく組み立て方を記したチラシを同梱したほうが効果的だ。こうした連携はMAと物流がつながっている当社だからこそできる施策だ」

 高山「物流センターにオンデマンドプリンターがあるので、初心者用コンテンツから流入してテントを買った人には、テントの組み立て方を説明した文書を印刷して同梱できる。一方、野外フェス用のテントなら別のチラシを同梱する。一人ひとりにあった最適な同梱物を入れることができるのが当社の強みといえる」

 ーー「アフターコロナ」におけるアウトソーシングの重要性とは。

 高山「クライアントに対しては『餅は餅屋に任せて、良い商品を作ることにリソースを集中した方がいい。そうすれば、緊急事態宣言がまた起きて外出できなくなっても業務は回る』と説明している。書籍で成功事例として紹介している、スクロール子会社でブランド品ネット販売のAXESは、買収時には売上高10億円だったが、今は80億円。従業員は2倍程度しか増えていない。これは、バックヤード業務を当社に全部投げて、社員は仕入れ業務や顧客サービスに集中した結果だ」

 ーー今後のネット販売企業に求められる施策は。

 佐藤「自社商品のファンであり、インフルエンサーになってくれる顧客を囲い込むことが重要になってくる。多くの会社はSEOや広告で集客しているが、グーグルのSEOは良く知られたサイトしか上位に来なくなっている。そうなると商品力が重要になってくるわけだが、商品をより良くするためのフィードバックをしてくれて、紹介もしてくれる『エバンジェリスト』的な位置づけの顧客を囲い込み、コミュニティーを築くべきだ」
 
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