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不急のプラン 公邸懇親会の波紋④

2021年 2月25日 12:50

責任感欠く危機管理

 日本健康・栄養食品協会(=日健栄協)が呼び掛けた国会議員と一部大手会員限定の「特定保健用食品及び機能性表示食品制度勉強会兼懇親会」のプラン。ここからは公益法人と政治の関係や協会内のガバナンス等も垣間見える。象徴が参議院議長公邸(写真)を会場に予定していたことだ。

                      ◇

 「横路衆院議長、公邸の貸与を陳謝」。民主党政権下の2010年8月6日に日本経済新聞が配信した記事だ。

 当時の横路議長が民主党議員の勉強会会場として議長公邸を提供したことに「議長の中立性を損なう」と自民党などが反発。横路議長は、自民党の議員運営委員会の筆頭理事に陳謝した。

 今回の勉強会兼懇親会はほぼ同じ構図だ。議員側の出席予定者は、すべて自民党。業界団体と一部企業も加わり、さらに中立性に疑問符がつくといえよう。

 日健栄協の下田顧問は参議院議長公邸を会場予定としたことを「先生方もすぐ来られ、遠方から来る企業の交通の便を考え私共からお願いした」(日健栄協・下田智久顧問)と話す。近くて便利だから、都内で有数の一等地である参議院議長公邸を借りる。おそらく無償供与となろう。

 山東昭子参院議長が設立以来、協会の会長職とはいえ、この混同ぶりはおかしくないか。

 勉強会兼懇親会の費用も問題だ。案内状の「出席者」には、山東昭子参院議長のほか、加藤勝信官房長官、田村憲久厚労大臣、上川陽子法務大臣の名が記されている。

 衆院議員としては鴨下一郎議員、土屋品子議員、御法川信英議員、齋藤健議員の名前が並ぶ。現役大臣を含めた顔触れだ。懇親会も予定されており、費用は「参加者で均等に負担いただく」(下田顧問)とするが微妙な問題であろう。

 2013年に同様の勉強会が開催された際は、会場は議員会館で、さらに昼間の開催。懇親会はなかったという。また今回、リストに載っている土屋品子議員は出席していなかったという。土屋議員は、大正製薬の上原家の親戚だ。大正製薬が企業参加のトップに記載されていること、同社社員が協会の評議員と栄養食品部長を務めていることとあわせ、この点は興味深い。

 ただ、実際に出席が決まっていたのは山東議長、鴨下議員の「両先生」(下田顧問)で、自由参加だったという。

 さまざまな問題をはらむコロナ禍での勉強会兼懇親会プラン。キーマンとなった下田智久顧問と矢島鉄也理事長の経歴を鑑みると、さらに複雑な想いに駆られる。

 下田顧問は69年熊本大学医学部卒。矢島理事長は82年千葉大学医学部卒。二人とも医師である。医系技官として厚生労働省に入省し、さまざまな公職を務めてきた。現在の協会の常務理事は、下田顧問が茨城県に出向していた際に部下だったという。

 さらに2人とも厚生労働省で健康局の局長を務めた後に退官している。

 健康局は傘下に結核感染課などを抱え、全国の保健所を束ねる部局である。つまり、新型コロナウイルス対策の直接の担当部局だ。

 現在、厚労省の後輩や保健所の職員、全国の医療従事者がどのような状況に置かれているのかは、二人とも想像できるはずである。

 政府も医師会も繰り返し「不要不急の外出や会食の自粛」を呼び掛けている。下田顧問、矢島理事長とも、職歴を鑑みれば、むしろ社会や業界に向け、イベントの自粛を先頭に立って強く呼びかける立場でないか。

 コロナ下の危機管理という点でも大きなリスクであろう。

 日健栄協が当初描いたシナリオとメンバーで勉強会兼懇親会が開かれたとしよう。

 集まるのは前述の政治家と大手企業の幹部と協会関係者、およそ20人。

 この席でもし、新型コロナのクラスターが発生したらどうなるか。内閣官房長官、厚生労働大臣、法務大臣が職務不能に陥り、参議院議長も衆議院議員も国会に出席出来ない。コロナ対策にもマイナス影響が出るだろう。直接の感染リスクだけでなく、一人でも感染者が分かれば、他のVIPも自宅待機となる可能性がある。

 日健栄協のイベントが、国家の動きを止めてしまうことになるのだ。背筋が寒くなる事態であろう。

 こうなれば、業界が社会から強い批判を浴び、業界全体にダメージが広がる可能性も否定できまい。

 コロナ禍いまだ収まらず。日健栄協は、健康産業界の公益法人であることを今一度自覚すべきだ。(おわり)
 
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