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オンワードデジタルラボ 社会課題に向き合うD2C、ミレニアル世代の開拓も

2021年 6月17日 12:40

 オンワードホールディングス子会社でグループのデジタル戦略を担うオンワードデジタルラボは、3月中旬からオンワード・デザイン・ダイバーシティ事業をスタートし、社会課題に取り組むD2Cブランドを立ち上げた。展開するそれぞれのブランドが個別の社会課題にフォーカスするのも特徴で、事業名と同じ名称の販売サイトも開設している。

 第1弾はサステナビリティのひとつの解として”流行にのれない服”を提起するブランド「オンワード・ディー・ディー」を始動したほか、4月下旬にはジェンダーイコーリティに向き合うブランド「イーコール」を開発。9月をメドに第3弾のブランドを投入する予定だ。

 オンワードグループはこの2年ほど、全国規模で不採算店舗を閉める一方、自社ECの強化を図ってきた。昨年には中核会社であるオンワード樫山で、働く女性の生活シーンに向けたブランド「アンクレイヴ」や、白シャツがキーアイテムのブランド「ハッシュニュアンス」など、ECが主販路となるブランドを立ち上げている。

 ただ、オンワードグループは長年にわたって百貨店が主戦場だったため、顧客年齢層が高めになっていたことも課題だった。とくに、ミレニアル世代やZ世代におけるオンワードの認知は十分ではなく、将来を見据えて新たなブランド開発が不可欠と判断した。

 今回、ブランド開発をオンワード樫山ではなく、オンワードデジタルラボが取り組んでいるのは、開発者の熱い思いをユーザーに届けたり、ユーザーの声を開発者により届きやすくするためで、「開発者とユーザーの距離感が近いことがD2C成功には不可欠な要素」(髙橋純取締役=顔写真)としている。

 オンワードデジタルラボはグループのファッション通販サイト「オンワードクローゼット」を運営する中心的な会社で、オンワードメンバーズ会員360万人の管理とECのプラットフォーム事業を展開。ブランド事業を手がけるオンワード樫山と二人三脚で自社ECを展開している。

 今回の新規事業ではブランドの開発者がMDや販促、EC販売などをマルチタスクで行う新しいケースとなるようだ。

 この数年、アパレル業界では”サステナブル”がトレンドワードのようになっているが、「サステナブルなだけでは服は売れないと多くの企業が感じている」(髙橋取締役)とした上で、オンワードグループの将来を考えれば、「SDGsを踏まえた考え方を標準装備しなければ生き残れない」(同)とする。

 そのため、オンワード・デザイン・ダイバーシティ事業では壮大なテーマにはせず、もっと身近で消費者がピンとくる社会課題に照準を当てたブランドを展開することをスタートラインとした。

 テーマとなる社会課題ごとにD2Cブランドを立ち上げるため、それぞれのブランドをビッグブランドに育てるというよりも、悩んでいる人が確実にいる領域で一緒に課題解決していくようなビジネスを展開したい考え。

若いチームで外部の知見も

 今回はミレニアル世代を開拓する狙いもあるため、チームの中心20代~30代前半という若いメンバーで構成。メンズとウィメンズの商材を一緒に手がけているのもオンワードグループでは珍しいケースだ。

 また、新規事業はmonopo Tokyo(モノポトーキョー)というクリエイティブエージェンシーと組んでおり、二人三脚でコンセプト作りにも取り組んでいる。従来であれば自社でブランド開発を行い、宣伝面をサポートしてもらうが、今回はブランディングから一緒に取り組む。

 一方、新規事業は当初の構想からだいぶ変更点があるという。構想自体はコロナ前の2019年にスタートしており、グループの持つ生産背景を生かした大量生産型で定番アイテムを徹底的に磨くようなブランドを考えていたが、コロナの影響もあって大きく軌道修正。極力在庫が残らないビジネスモデルを志向することになったという。

 オンワード・デザイン・ダイバーシティ事業はECプラットフォームの「ショッピファイ」を活用して専用の販売サイトを3月に開設している。というのも、グループの主力サイトである「オンワードクローゼット」は順調に成長してモールとしての規模も大きくなったため、細かいトライアルなどが実施しづらくなったという。また、「23区」を中心とした百貨店ブランドのコンテンツの色が強いことが客層にも影響しているようだ。

 新規事業では、顧客の購買体験をゼロから組み立てる目的で、当初はフルフィルメントを含めて新たな販売サイトの構築を目指していたが、予想以上にコロナが長引いていることや、初期投資の問題もあってフルフィルを含めた大がかりなサイト構築は一旦先送りにし、まずはコンテンツ作りを優先している。

 開発したD2Cブランドについては、モデルなどのインフルエンサーに依存せず再現性のあるビジネスを目指している。「著名人を起用した人気は一過性のもの」(髙橋取締役)とし、ロケットスタートは目指さずに熱量のあるコミュニティを地道に作ることを選んだ。

 現状は各種メディアを通じた露出のほか、SNS上でブランドの賛同者を集めており、少しずつ増えてきているという。例えば、第2弾ブランドの「イーコール」ではジェンダーイコーリティに普段から取り組んでいる人たちなどにリーチしている。

 当面、売上高と利益はKPIに設定せず、「『社会にとって良いことをしてそれがビジネスになる』ということを実現することが当面のミッション」(髙橋取締役)という。また、デジタル施策などを通じてミレニアル世代へのアプローチを増やすことにも取り組む。

 加えて、服以外のアイテムの開発や、外部企業と組んで社会課題の解決を目指すこともあり得るようで、まずは3ブランド体制で賛同の輪を広げていく。また、リアルのタッチポイントも設ける考えで、オンワード樫山のOMOストア旗艦3店舗でもD2Cブランドを販売することにしている。

 
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