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届出遅延、見解に隔たり<機能性届出、外部化> 伊藤長官「不備ないもの出すに尽きる」

2022年 3月17日 12:30

 消費者庁は、伊藤明子長官の肝煎りで機能性表示食品の届出「外部化」の仕組み構築に向けた検討を始めた。関係団体が行う事前点検事業を有効活用することで、公表にかかる所要日数の短縮を図る。ただ、届出の確認業務遅延をめぐり、行政と業界の見解には隔たりがある。課題解消に向け互いに歩み寄りをみせなければ「外部化」の推進もとん挫しかねない。
 








「提出書類の不備余りに多い」
  
 「事業者が0日になるものを出していただくことに尽きる。行政の問題と言われるのは違う」。ある業界関係者は、3月9日、定例会見の場で消費者庁の伊藤明子長官がこう発言したことに「不安を覚えた」と漏らす。

 質問は、伊藤長官の肝煎りで検討が始まった機能性表示食品の届出外部化について。伊藤長官は、「届出0日」を達成することを事業者メリットとして打ち出す。ただ、届出制である以上「0日」の受理は基本。企業がわざわざ対価を支払い、これを達成するのは行政サービスとしての建付けに疑問があることへの見解を聞いたものだ。

 これを前に行った質問でも、届出制の受理について「0日」が基本であることに「当然、届け出るだけですから」とコメントしつつ、「余りに書類の不備等があるということで、結果的に確認の時間が掛かっている」と、事業者側の問題を指摘した。前出の関係者は、「業界が抱える課題や不満への認識が薄く、連絡協議会での議論に不安を覚えた」という。

そもそも「届出0日」が基本

 制度は導入から7年が経過。届出数は、4500件を超え、月間の公表数も100件前後で推移するなど企業の活用が進む。一方、確認業務にあたる行政職員が限られる中、届出数の増加がチェックを行う食品表示企画課の業務を圧迫している。「添付漏れ、記載の誤りなど単純ミスも非常に多い。(機能の表現ぶりも)根拠との一致が見られず可能な健康の維持・増進の範囲の逸脱が明らかなものもある」(食品表示企画課)というのが理由だ。

 確かに単純ミスなど事業者側の未熟さもあるだろう。ただ、自ら設計した届出制の基本を逸脱した運用を行っているのは、消費者庁自身でもある。

 そもそも、届出制は提出先である消費者庁に書類が到達した時点で”効力”を発揮する。形式的な要件の確認で済むものだ。届出者に迷いが生じないよう、ルールを明確化するのは行政の役割でもある。

 だが、運用は大きく異なる。制度は、形式的なチェックやデータベース登録に一定の時間を要するため、販売60日前の提出が求められているが、期限を迎える50日前後で「不備」指摘を繰り返され、公表に数カ月要する場合がある。本来の趣旨とは異なる運用になるだろう。

 「許認可制のような審査や処理期間の基準がないため、これをよいことに疑似審査を行い、トータルで何日かかろうがよいという勝手なルールで繰り返しおかわりされている」(厚生労働省OB)、「届出のため不備指摘は行政指導にあたる。そうであれば説明責任があり、不備の内容、趣旨を明確に示さなければならない。独自の裁量で”これはダメ”と指摘しているが法的根拠もなく、行政指導の理念にも反する行為」(別の行政関係者)と、身内からも運用の問題を指摘する声がある。

届出0日に「メリット小さい」

 「届出0日」というメリットに対する企業の反応は芳しくない。

 現状の届出の確認業務は内容に不備がある場合、50日を目標に差戻しを行う「50日ルール」で運用されている。昨年8月には、事前点検を行う関係2団体(日本抗加齢協会、日本健康・栄養食品協会)の利用を促すため、団体の確認を経た届出は、差戻しの所要日数を30日以内とする「30日ルール」ができた。だが、利用が進まず、確認業務を圧迫する状況が続いている。

 さらなる活用の推進にはいくつか課題がある。一つは、長官も言及する所要日数。「期間短縮されるとはいえ、納期的なメリットは小さい」(健康食品通販事業者)。現状、事前確認に10日~2週間ほどの日数を要すため、例え届出後の所要日数が「0日」となっても一定期間を要する。

 次に費用面。日本健康・栄養食品協会の事前点検は、初回が38万5000円(非会員は77万円)、差戻し後の再点検は33万円(同66万円。日本抗加齢協会はチェックリストのみの一次点検が22万円、過去の指摘例など公開されていないポイントを含めた二次点検が88万円。対象は会員のみだ。「費用が大幅にかかり、利用しても確実に受理される保証がない」(同)、「事業規模が小さく売り上げの見通しが立たない中で見合わない料金」(大手食品)。

 自社で人件費を賄い人材育成する負担は軽減できるが、先行投資とのバランスに難色を示す企業も多い。委託製造先が営業の一環でサポートするケースもあり、「わざわざ追加費用を払って利用するほどのメリットがあるか」(業界関係者)、「企業側に届出遅延への慣れもある」(別の関係者)との声も聞かれる。

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 「明らかな不備を返すのは当然だが、制度は事後チェック指針もあり、悪いものは淘汰される。安全性さえ確保すれば提出時点で入念な確認を行う必要はない。今は水も漏らさずという対応。制度設計上の大きなミスがなければ行政の責任が発生することもない」(前出の厚労省OB)。利用促進に向け、さらなるメリットの検討が必要だろう。


「ゾロ品」のみ対象、メリット小さく利用増加に疑問も

<届出外部化、協議会の行方>

 消費者庁は、「すでに公表実績のある届出」、いわゆる「ゾロ品」について、関係団体の事前確認における対象にする考えを示す。新規成分や新規の機能性表示は、これまで通り、入念なチェックが行われる。これには、「実績があるなら消費者庁側で期間短縮は可能なはず。これにあえて対価を払い、行政サービスを受けるのはおかしい。ほかにメリットがないと厳しい」(業界関係者)といった声も上がる。

 届出「外部化」に向けた連絡協議会は3月7日、第1回会合を行った。内容は非開示だが、消費者庁側から「かなり厳しい事前確認の要件が示された」といった声も聞かれ、調整は難航しそうだ。今夏をめどに、必要な体制整備、手順書をまとめ、一定の試行期間を経て来年度中に運用を開始する。

 協議会には、届出の事前点検事業を行う日本健康・栄養食品協会(=日健栄協)、日本抗加齢協会の2団体、このほか、日本通信販売協会、健康食品産業協議会を含む4団体が参加する。

 現状、日健栄協、日本抗加齢協会が行う事前点検は、あらかじめ消費者庁が確認したチェックリストに基づき事前確認を行うことで点検の質を担保している。ただ、届出の月間の公表が100件前後で推移する中、2団体の利用は月1件から数件にとどまる。

 点検に要する日数は10日から2週間。費用は内容にもよるが20~100万円ほど。期間短縮などのメリットがあまり感じられず、事前点検した場合も確実に届出が受理される保証がないこともあり、事業者の利用は進まない。

 新たな仕組み構築では、事前確認の対象を、すでに公表実績のある届出を対象に絞ることを想定する。「変更届」も対象にする。協議会では今後、改めて事前確認の点検項目など手順書、事前確認を行う上での一連のフローチャートを作成。これを2団体以外にも示していくことで、ほかの団体が事前点検を事業化していくことも促していく。

 日健栄協は、「チェックリストを半分にするなどすれば、期間短縮や費用を変更することも可能」と話す。ただ、すでに公表実績があり、確認が容易な既出の届出であればなおさら費用を支払い事前確認するメリットは薄れる。新規の届出に関する事前確認の取り組みも議論が必要になるだろう。




提出時点で“効力”発揮

 届出制で運用されている身近な例が婚姻、出生、死亡届などだ。記載や添付漏れなど不備がなく、形式上の要件を満たしていれば提出した時点で効力を発揮する。運用上も要件をあらかじめ定め、疑念の余地なく明記しておく必要がある。

 分かりやすい例が、90年代にあった「悪魔ちゃん命名騒動」だ。法令で人名に利用できる文字として「常用漢字、平仮名、片仮名」としか決まりがなかったため、「悪魔」と命名された出生届が提出された。「キラキラネーム」と呼ばれる当て字が許容されるのも提出する人名のふりがなにルールが定められていないためだ。

 機能性表示食品は、届出ガイドラインには可能な機能性表示の範囲、認められない表現例などが示されている。ただ、具体性に乏しいため事業者も判断できず、行政も独自の裁量で言葉のニュアンスを判断している。

 届出ガイドラインに明記のない「50日ルール」も既成事実化している。

 許認可制は、審査基準や標準処理期間をあらかじめ定め、示すことが必要。機能性表示食品制度は実質的に疑似審査のような行為が行われているが、届出制であるためこうした基準もない。


 
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