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「プレスリリース」を違反認定【山田養蜂場 措置命令の背景⑧】 「表示」の認識、見解分かれる

2022年12月15日 13:03

 山田養蜂場に対する行政処分で特異なのは、「プレスリリース」を対象に景品表示法の執行が行われたことだ。前例はなく、今後の法執行における他の事業者への影響も大きい。果たしてリリースは「表示」と言えるのか。
 「違和感を覚える」。公正取引委員会OBは、リリースを対象にした処分にこう感想を漏らす。まず、措置命令の内容を整理したい。

 山田養蜂場への処分で違反認定された表示は、(1)自社の通販サイト掲載のプレスリリース、(2)外部のリリース配信サイト「PR TIMES」を通じて配信されたプレスリリース、(3)顧客向けDM、の3つ。「ビタミンD+亜鉛」は(1)と(2)、「1stプロテクト」、「2ndプロテクト」の2商品は(3)が違反認定の対象となった。ここでは、リリースを対象にした前者にのみ触れる。

 自社サイト、外部サイトを通じて配信されたリリースに内容的な違いはない。ただ、サイトの目的、消費者視点で捉えた場合の性質は異なる。

 自社サイトは、商品購入を目的に運営されており、顧客である消費者が訪れた際に併せてリリース情報を閲覧する可能性がある。

 外部サイトは、そもそも報道関係者に対するPRを目的にしている。消費者が山田養蜂場の「指名検索」やサイト内検索でリリース情報に到達する可能性はあるものの、消費者向けの運営は想定していない。

 一方で、違反認定を受けた場合の影響は大きく異なる。「リリースを対象にした違反認定に前例がないとしても、自社サイトからリンクする形で閲覧できるなら結びつきがあり、まだあり得る。ただ、まったくつながりのない外部サイトのリリースも対象になると、それだけで措置命令できるようになる。これまでの景表法の運用からすると疑問が残る」(公取OB)と執行経験に習熟する専門家も話す。

 違和感の正体は、後述するが、まず当事者や関係者の見解を整理する。

 処分を受けた山田養蜂場は、リリースについて景表法上の「表示」との認識があったかについて、「当時は認識しておりませんでした」と答えた。リリースを他の広告同様にチェックしていたかについては、「消費者庁に報告はしているが、チェックの有無、内容は開示していない」。リリースが対象にされたことに関する意見は、「ございません」としており、今後は「広告同様の管理を行うことを消費者庁に報告している」とする。

 図らずも違反認定の対象媒体となったPRTIMES(東京都港区)は、リリースについて、「内容により景表法に抵触する認識は持っていた」とする。これまで利用規約で適法性を担保。事前相談を受けた場合は自社で判断せず、「担当省庁への相談を案内していた」とする。配信後の事後対応では、専任部署が全件、法令上の観点や誹謗中傷、公序良俗に反する要素の有無などの観点から目視で確認しているという。過去には、事業者への指摘例もあるが、今回は「気づけなかった」。今後、社内勉強会の開催など個々の担当者の事後チェックレベルの向上を図るとする。

 他の配信サイトでは、本紙掲載までに共同通信PRワイヤーのみ回答が得られた。利用規約で健康食品分野について、薬機法や景表法に抵触するおそれのあるリリースの取り扱いを禁じており、こちらも景表法上の「表示」との認識を持っていたことになる。

 配信にあたっては、審査部門による入会審査、配信リリースは、NGワードを設定し、これを含む内容を自動で検知するシステムを運用する。違反認定を前に、広告主、リリース配信事業者の見解は分かれていた。

 ただ、違反認定されたリリースは掲載サイトが異なるとはいえ、内容は同じだ。そうであれば、自社サイトのリリースの違反認定を行えば十分であり、”あえて”外部サイトの表示を違反認定の対象にする必要はなかったといえる。むしろ、外部サイトの認定は、ハレーションを起こす。避けることも十分できたはずだ。なぜ、消費者庁は認定したのか。また、その判断は妥当といえるだろうか。(つづく)

 
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