通販・ECを含む事業者にとって事業運営上、重要なものの1つが金融サービスだ。運転資金のほか、商品の仕入れや、販促を行うための広告費など事業を行い、かつ業績を伸ばしていくためには資金が必要だ。しかし、潤沢な資金が常に手元にあるというわけではない。繁忙期や成長期のタイミングで商品を多く仕入れられたり、広告出稿ができれば一気に売り上げ拡大が期待できるわけだが、金融機関などから借り入れはハードルが高く、また、申し込みから借り入れまでかなりの時間がかかることもある。そこで迅速、簡単に必要な資金を融通する通販・EC事業者向け金融サービスが注目されているようだ。その中でも利用社が多く特に注目される新しい金融サービスについてみていく。
ウェブ広告費を4分割・後払い
キャッシュフロー改善に寄与で、成長EC企業の利用増
AD YELL
デジタルホールディングスのグループ会社、バンカブルは通販実施企業を含む事業者向けにウェブ広告費の分割・後払いサービス「AD YELL(アドエール)」を展開している。
「AD YELL」は事業者のウェブ広告費を肩代わりし、媒体社や広告代理店に一括で立替支払いを行う主に年商3000万円以上の事業者を対象とした金融サービスだ。協働する三菱UFJフィナンシャル・グループとともに主に利用事業者の企業情報や財務情報、これまでの広告出稿実績とそれをもとに当該事業者のウェブ広告出稿によるリターンを予測した独自数値「VK(バンカブル)値」などをもとにPCやスマートフォンを介した原則オンライン審査のみで最短3営業日で利用事業者の年商の3割までを月の上限に広告宣伝費の立替を行う。利用事業者は広告費100に対し、手数料3・0を加えた合計額である103を利用月の翌月から毎月4回の分割で返済していく仕組み。
事業が軌道に乗り、積極的に広告を出稿して業績を拡大したいが手持ちの資金が足らず、とはいえ、広告費単体では担保価値がなく金融機関から融資を受けにくいため、広告出稿に踏み込めない事業者にとって、広告出稿後に売り上げを立てながら後払いで広告費を支払え、かつ原則決算書等の財務諸表や面談は不要でオンライン上の審査で利用できるというメリットがある。
昨年5月からのサービスの本格展開開始から9カ月で「AD YELL」での取り扱い広告費累計額は100億円を突破。スタートアップ・ベンチャーのEC事業者らを中心に利用社を順調に伸ばしているよう。バンカブルによると、「AD YELL」の活用する事業者の利用前後売上高は中央値で62・1%の成長を遂げており、「キャッシュフローが改善する」「成長スピードが格段に上がる」などの声が寄せられているとしている。
化粧品や健康食品を販売する年商25億円規模の単品通販の利用事業者は、業績面は順調に成長を遂げてきたものの、広告費等の先に必要となるキャッシュの不足から新商品の発売を遅らせたり、既存商品の広告費の削減を余儀なくされていた状況だった。「以前は銀行融資を利用していたが、期の途中での追加融資が難しい。広告費がかかるビジネスは一度にまとまったキャッシュよりも月々の支払分が必要で銀行融資や資金調達は相性が悪い部分があった」(同社)ことから「AD YELL」の利用を開始。「まず感じたのはサービス開始までの早さ。銀行の場合は融資を受けるまでに多くのやり取りがあり、それなりに時間を要すが『AD YELL』はスピーディーだった。手間も銀行融資と比べると格段に少なかった。銀行では広告費を先にかけて後から利益を回収するビジネスモデルを知らない人が多いため、毎回ビジネスモデルから説明する手間がかかっていたが『AD YELL』ではそうした説明する労力や時間を圧縮できた」とメリットや効果について同社の担当者は話す。
今後も「AD YELL」を活用しつつ、40~60代のターゲット層に向けて健康食品や化粧品のラインナップを増やして今期は売上高35億円、3年以内に50億円まで拡大させる見込みという。「成長とともにキャッシュを生み出し新商品への投資に使えるサイクルを生み出したい。仮にひとつの商品でキャッシュが潤沢になれば『AD YELL』を一旦お休みする可能性もあるが、会社の成長を加速する上で、新商品を扱い続ける限りキャッシュフローの課題は付いて回るので、別の商品で利用するのではないかと思う。投資リターンがある程度見えていている事業者は、『AD YELL』 利用でアクセル全開に進んでいってほしい」(同)とする。
味には関係のない理由で規格外とされてしまう未利用魚を販売するサブスクリプションサービスを展開するベンナーズでは、消費者のフードロス削減やSDGsへの関心の高まりを背景に同事業が軌道に乗り、さらなる新規顧客獲得のため、「AD YELL」の利用を開始。その結果、利用翌月から導入前対比で約3倍の月額広告費を確保し、合わせて新規顧客獲得も計画を上回りながら事業を急成長させる成果を上げたという。直近では「AD YELL」の利用額を増額し、新規顧客獲得を伸長しつつ、さらなる成長へ向け新商品開発、CRM強化、BtoB事業に着手している。
仕入れ・製造費を代理支払い
3・6分割で後払い、コスト削減にも効果
Biz Growth
FinetextグループのスマートプラスクレジットではEC事業者向けに商品の仕入れや製造委託にかかる費用を分割して後払いできるサービス「Biz Growth(ビズグロース)」を展開している。卸業者や商品製造委託先のOEM業者らへの仕入れ代や製造費を立替払いし、翌月末から立替払いをした金額に手数料を加えた総額を月々分割して事業者がマートプラスクレジットに支払っていく仕組み。分割回数は3・6回で選べ、3回分割の手数料率は3%、6回分割では6%。例えば立替額300万円を3回分割する場合、支払総額は309万円で利用事業者は月103万円ずつ支払うことになる。
同サービスの利用にはオンライン審査が必要で専用の申し込みフォームから、本社所在地や業種、ウェブサイトのURL、代表者の氏名や住所、本人確認書類などの関連情報とともに卸業者や製造委託先らに払うべき請求書の情報(請求書発行先法人名や当該法人の住所)と10万円から1000万円までの立替希望額を入力し、2期分の貸借対照表と損益計算書を含む決算資料または直近半年分以上の月次試算書と支払請求書(※支払期限が7日前までのものに限る)をアップロードする必要がある。
なお、EC基幹システム「ecforce(イーシーフォース)」などを展開するSUPER STUDIO(スーパースタジオ)と連携しており、同システムの利用事業者の中で「Biz Growth」を活用したい場合はスーパースタジオ経由での申し込みも可能となる。今後は両サービス間でデータ連携を行い、審査の過程などをより迅速化していく考えという。
スマートプラスクレジットによると、「Biz Growth」は昨年11月からベータ版を開始後、ミラー型のタッチパネルデバイスを介してインストラクターのレッスン動画などを配信するサービスを行うミラーフィットなど利用事業者は順調に増えているよう。ターゲットとしているEC、D2C事業者は創業期を経て一定の成功を収め、より事業拡大を図っていく過程の中で資金調達に問題を抱えることも少なくないという。「創業期は創業融資として地域金融機関や公庫などから借り入れができるが事業が軌道に乗って商品発注を増やそうとしても公庫等では融資枠の問題で借り入れできないこともある。エクイティファイナンスもハードルがあり、銀行からの融資も一定の年商や条件があり簡単ではない。立ち上げ期から成長期に移行し、事業を拡大していきたいEC事業者へ商品の仕入れ・商品製造費を分割払いできる、というターゲットと用途を明確に絞っているため、必要な事業者には非常に有用で資金調達の新しい選択肢として利用頂けているのではないか」(同社)とし、年商では数千万円から10億円規模機事業者から利用があるという。
実際の利用用途としては事業拡大に向けてより販売量を増やしていくために手持ち資金では足りない仕入れ・製造委託先への支払いに使うほか、同サービスを活用し1回の発注量をより多くすることでスケールメリットから仕入れ値や製造単価の引き下げに利用するケースもあるという。拡販を本格化する前に、商品の粗利を引き上げてより利益を出せるようにするためだ。発注量を増やすことで製造単価が下がりやすい健康食品のほか、大物商品で都度の輸送費がかさむもの、また、印刷コスト削減のために商品パッケージ印刷のまとめ発注にも利用されているという。「コスト削減のツールとして活用頂いている事業者も多い。そうした資金を広告費などに充当してもらえれば成長を加速できる。金融機関の借入枠を温存できることもメリット。我々のサービスでEC、D2C事業者の成長を支えたい」(同社)とする。
ヤフーのモール出店者に資金提供
最短申し込み当日に入金
売上金事前受け取りサービス
仮想モール運営各社では出店者向けに金融サービスを行っているところも多いが、ヤフーでも運営する仮想モール「ヤフーショッピング」の出店者向けに運転資金を提供する「売上金事前受け取りサービス」を展開している。1月19日から正式にスタートしたサービスでヤフーが仮想モール出店者向けに金融商品を展開するのは初めてとなる。
「売上金事前受け取りサービス」はいわゆるビジネスローンなど直接資金を融資するものではなく、出店者に将来見込まれる売掛債権をヤフーが買い取り現金化する”将来債権ファクタリング”という手法を用いて実施する。出店者へ販促時の商品調達や繁忙期の清算処理の際などに素早く資金を提供することで事業を支援するほか、そうした需要に対応し手数料収入など新たな収益源を確保したい考えのようだ。
なお、同手法を用いた金融サービスは事業者の過去の売り上げデータに基づいて将来の売上高を算出することで、当該事業者に見合った適切な金額を手数料率を抑えつつ、提供できるために貸し手借り手双方にメリットがあることなどから同手法を使った金融サービスは欧米で盛り上がりを見せている。
「売上金事前受け取りサービス」を通じて資金を提供した出店者からヤフーは提供資金額に加え手数料の総額が清算されるまでヤフーショッピングでの売り上げから毎月、事前に設定した一定割合分を自動徴収する。出店者が提供を受けられる限度額(下限は1000円)や手数料率、同モールでの売り上げに占める清算比率は各出店者のこれまでの売り上げなどをもとにヤフーが個別に設定するとしており「詳細は非公表」(同社)という。
月々の「ヤフーショッピング」の売り上げから一定割合分の金額を精算するという精算方法のため、毎月固定の金額を返済する他の金融商品とは異なり、売り上げが少ない月も無理なく利用できるのが特徴という。なお、精算期間中も設定された受け取り限度額までは追加で同サービスを利用できる。
同サービスを受けたい出店者は仮想モールの管理画面「ストアクリエーターPro」に設けられた申し込みページで受け取りたい金額や条件などを確認しながら申し込みを行う。書類は必要なく、申し込み時の審査もなく、出店者は1分程度で申し込めるという。なお、資金は最短申込当日に入金するという。
ヤフーによると「売上金事前受け取りサービス」の具体的な利用者数などは明らかにしていないが、利用する出店者は増えており、堅調な滑り出しを見せているよう。
現時点では「ヤフーショッピング」での過去の売上額などの実績をもとに一部の出店者のみの招待制としているが、将来的にはすべての出店者への展開を目指すとしている。
ウェブ広告費を4分割・後払い
キャッシュフロー改善に寄与で、成長EC企業の利用増
AD YELL
デジタルホールディングスのグループ会社、バンカブルは通販実施企業を含む事業者向けにウェブ広告費の分割・後払いサービス「AD YELL(アドエール)」を展開している。
「AD YELL」は事業者のウェブ広告費を肩代わりし、媒体社や広告代理店に一括で立替支払いを行う主に年商3000万円以上の事業者を対象とした金融サービスだ。協働する三菱UFJフィナンシャル・グループとともに主に利用事業者の企業情報や財務情報、これまでの広告出稿実績とそれをもとに当該事業者のウェブ広告出稿によるリターンを予測した独自数値「VK(バンカブル)値」などをもとにPCやスマートフォンを介した原則オンライン審査のみで最短3営業日で利用事業者の年商の3割までを月の上限に広告宣伝費の立替を行う。利用事業者は広告費100に対し、手数料3・0を加えた合計額である103を利用月の翌月から毎月4回の分割で返済していく仕組み。
事業が軌道に乗り、積極的に広告を出稿して業績を拡大したいが手持ちの資金が足らず、とはいえ、広告費単体では担保価値がなく金融機関から融資を受けにくいため、広告出稿に踏み込めない事業者にとって、広告出稿後に売り上げを立てながら後払いで広告費を支払え、かつ原則決算書等の財務諸表や面談は不要でオンライン上の審査で利用できるというメリットがある。
昨年5月からのサービスの本格展開開始から9カ月で「AD YELL」での取り扱い広告費累計額は100億円を突破。スタートアップ・ベンチャーのEC事業者らを中心に利用社を順調に伸ばしているよう。バンカブルによると、「AD YELL」の活用する事業者の利用前後売上高は中央値で62・1%の成長を遂げており、「キャッシュフローが改善する」「成長スピードが格段に上がる」などの声が寄せられているとしている。
化粧品や健康食品を販売する年商25億円規模の単品通販の利用事業者は、業績面は順調に成長を遂げてきたものの、広告費等の先に必要となるキャッシュの不足から新商品の発売を遅らせたり、既存商品の広告費の削減を余儀なくされていた状況だった。「以前は銀行融資を利用していたが、期の途中での追加融資が難しい。広告費がかかるビジネスは一度にまとまったキャッシュよりも月々の支払分が必要で銀行融資や資金調達は相性が悪い部分があった」(同社)ことから「AD YELL」の利用を開始。「まず感じたのはサービス開始までの早さ。銀行の場合は融資を受けるまでに多くのやり取りがあり、それなりに時間を要すが『AD YELL』はスピーディーだった。手間も銀行融資と比べると格段に少なかった。銀行では広告費を先にかけて後から利益を回収するビジネスモデルを知らない人が多いため、毎回ビジネスモデルから説明する手間がかかっていたが『AD YELL』ではそうした説明する労力や時間を圧縮できた」とメリットや効果について同社の担当者は話す。
今後も「AD YELL」を活用しつつ、40~60代のターゲット層に向けて健康食品や化粧品のラインナップを増やして今期は売上高35億円、3年以内に50億円まで拡大させる見込みという。「成長とともにキャッシュを生み出し新商品への投資に使えるサイクルを生み出したい。仮にひとつの商品でキャッシュが潤沢になれば『AD YELL』を一旦お休みする可能性もあるが、会社の成長を加速する上で、新商品を扱い続ける限りキャッシュフローの課題は付いて回るので、別の商品で利用するのではないかと思う。投資リターンがある程度見えていている事業者は、『AD YELL』 利用でアクセル全開に進んでいってほしい」(同)とする。
味には関係のない理由で規格外とされてしまう未利用魚を販売するサブスクリプションサービスを展開するベンナーズでは、消費者のフードロス削減やSDGsへの関心の高まりを背景に同事業が軌道に乗り、さらなる新規顧客獲得のため、「AD YELL」の利用を開始。その結果、利用翌月から導入前対比で約3倍の月額広告費を確保し、合わせて新規顧客獲得も計画を上回りながら事業を急成長させる成果を上げたという。直近では「AD YELL」の利用額を増額し、新規顧客獲得を伸長しつつ、さらなる成長へ向け新商品開発、CRM強化、BtoB事業に着手している。
仕入れ・製造費を代理支払い
3・6分割で後払い、コスト削減にも効果
Biz Growth
FinetextグループのスマートプラスクレジットではEC事業者向けに商品の仕入れや製造委託にかかる費用を分割して後払いできるサービス「Biz Growth(ビズグロース)」を展開している。卸業者や商品製造委託先のOEM業者らへの仕入れ代や製造費を立替払いし、翌月末から立替払いをした金額に手数料を加えた総額を月々分割して事業者がマートプラスクレジットに支払っていく仕組み。分割回数は3・6回で選べ、3回分割の手数料率は3%、6回分割では6%。例えば立替額300万円を3回分割する場合、支払総額は309万円で利用事業者は月103万円ずつ支払うことになる。
同サービスの利用にはオンライン審査が必要で専用の申し込みフォームから、本社所在地や業種、ウェブサイトのURL、代表者の氏名や住所、本人確認書類などの関連情報とともに卸業者や製造委託先らに払うべき請求書の情報(請求書発行先法人名や当該法人の住所)と10万円から1000万円までの立替希望額を入力し、2期分の貸借対照表と損益計算書を含む決算資料または直近半年分以上の月次試算書と支払請求書(※支払期限が7日前までのものに限る)をアップロードする必要がある。
なお、EC基幹システム「ecforce(イーシーフォース)」などを展開するSUPER STUDIO(スーパースタジオ)と連携しており、同システムの利用事業者の中で「Biz Growth」を活用したい場合はスーパースタジオ経由での申し込みも可能となる。今後は両サービス間でデータ連携を行い、審査の過程などをより迅速化していく考えという。
スマートプラスクレジットによると、「Biz Growth」は昨年11月からベータ版を開始後、ミラー型のタッチパネルデバイスを介してインストラクターのレッスン動画などを配信するサービスを行うミラーフィットなど利用事業者は順調に増えているよう。ターゲットとしているEC、D2C事業者は創業期を経て一定の成功を収め、より事業拡大を図っていく過程の中で資金調達に問題を抱えることも少なくないという。「創業期は創業融資として地域金融機関や公庫などから借り入れができるが事業が軌道に乗って商品発注を増やそうとしても公庫等では融資枠の問題で借り入れできないこともある。エクイティファイナンスもハードルがあり、銀行からの融資も一定の年商や条件があり簡単ではない。立ち上げ期から成長期に移行し、事業を拡大していきたいEC事業者へ商品の仕入れ・商品製造費を分割払いできる、というターゲットと用途を明確に絞っているため、必要な事業者には非常に有用で資金調達の新しい選択肢として利用頂けているのではないか」(同社)とし、年商では数千万円から10億円規模機事業者から利用があるという。
実際の利用用途としては事業拡大に向けてより販売量を増やしていくために手持ち資金では足りない仕入れ・製造委託先への支払いに使うほか、同サービスを活用し1回の発注量をより多くすることでスケールメリットから仕入れ値や製造単価の引き下げに利用するケースもあるという。拡販を本格化する前に、商品の粗利を引き上げてより利益を出せるようにするためだ。発注量を増やすことで製造単価が下がりやすい健康食品のほか、大物商品で都度の輸送費がかさむもの、また、印刷コスト削減のために商品パッケージ印刷のまとめ発注にも利用されているという。「コスト削減のツールとして活用頂いている事業者も多い。そうした資金を広告費などに充当してもらえれば成長を加速できる。金融機関の借入枠を温存できることもメリット。我々のサービスでEC、D2C事業者の成長を支えたい」(同社)とする。
ヤフーのモール出店者に資金提供
最短申し込み当日に入金
売上金事前受け取りサービス
仮想モール運営各社では出店者向けに金融サービスを行っているところも多いが、ヤフーでも運営する仮想モール「ヤフーショッピング」の出店者向けに運転資金を提供する「売上金事前受け取りサービス」を展開している。1月19日から正式にスタートしたサービスでヤフーが仮想モール出店者向けに金融商品を展開するのは初めてとなる。
「売上金事前受け取りサービス」はいわゆるビジネスローンなど直接資金を融資するものではなく、出店者に将来見込まれる売掛債権をヤフーが買い取り現金化する”将来債権ファクタリング”という手法を用いて実施する。出店者へ販促時の商品調達や繁忙期の清算処理の際などに素早く資金を提供することで事業を支援するほか、そうした需要に対応し手数料収入など新たな収益源を確保したい考えのようだ。
なお、同手法を用いた金融サービスは事業者の過去の売り上げデータに基づいて将来の売上高を算出することで、当該事業者に見合った適切な金額を手数料率を抑えつつ、提供できるために貸し手借り手双方にメリットがあることなどから同手法を使った金融サービスは欧米で盛り上がりを見せている。
「売上金事前受け取りサービス」を通じて資金を提供した出店者からヤフーは提供資金額に加え手数料の総額が清算されるまでヤフーショッピングでの売り上げから毎月、事前に設定した一定割合分を自動徴収する。出店者が提供を受けられる限度額(下限は1000円)や手数料率、同モールでの売り上げに占める清算比率は各出店者のこれまでの売り上げなどをもとにヤフーが個別に設定するとしており「詳細は非公表」(同社)という。
月々の「ヤフーショッピング」の売り上げから一定割合分の金額を精算するという精算方法のため、毎月固定の金額を返済する他の金融商品とは異なり、売り上げが少ない月も無理なく利用できるのが特徴という。なお、精算期間中も設定された受け取り限度額までは追加で同サービスを利用できる。
同サービスを受けたい出店者は仮想モールの管理画面「ストアクリエーターPro」に設けられた申し込みページで受け取りたい金額や条件などを確認しながら申し込みを行う。書類は必要なく、申し込み時の審査もなく、出店者は1分程度で申し込めるという。なお、資金は最短申込当日に入金するという。
ヤフーによると「売上金事前受け取りサービス」の具体的な利用者数などは明らかにしていないが、利用する出店者は増えており、堅調な滑り出しを見せているよう。
現時点では「ヤフーショッピング」での過去の売上額などの実績をもとに一部の出店者のみの招待制としているが、将来的にはすべての出店者への展開を目指すとしている。