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「根拠」に踏み込む初判断【機能性インシデント ①再び下された鉄槌】 同種の届出含め混乱招く

2023年 7月20日 12:00

 機能性表示食品に再び鉄槌が下された。届出の「根拠」に踏み込む違法判断は、その対象企業だけでなく、多くの企業を巻き込み混乱を招いている。

 「健康食品の機能性表示を解禁します」。2015年、制度は、故・安倍晋三元総理の号令を受けてスタートした。

 「制度は健康長寿社会と成長産業の育成を同時に達成するという世界の未来を先取りしたテーマ」(16年、川口康裕消費者庁次長、当時)、「今後、一層の伸びが期待できる」(19年、加藤勝信自民党総務会長、当時)、「健康寿命の延伸という重要課題に対応するツールとして消費者に期待されている」(20年、衛藤晟一消費者担当相、当時)――。制度は、医薬品と食品の狭間で規制にさらされ続けた「いわゆる健康食品」と明確に区別され、これまで育成が念頭に置かれた。

 柔軟な表示を可能にし、許可に要する年数、費用の高さなどトクホの使い勝手の悪さを打破する規制緩和策が”事業者責任”による届出制だった。個別製品ごとの許可ではなく、成分の研究レビューによる表示を可能にしたことも広く中小企業に門戸を開いた。

 それから8年、届出数は6300件を数え、市場は5000億円規模に達している。許可品目約1000件、市場規模5610億円(前年比約14%減、20年度)と、03年当時の規模まで縮小したトクホに迫る。しかし、機能性表示食品はその後も規制にさらされ続けている。

 初めての違法判断は制度導入からわずか2年目の17年、ダイエットケアをうたう16社の機能性表示食品に対する景品表示法の一斉処分が行われた「葛の花事件」だ。16社は、OEM1社が提供する原料、研究レビューを頼りに表示を行っていたが、問題視されたのは、届出表示からの広告の逸脱だった。

 18年には、処方薬と同じ表示と指摘を受け届出撤回が指導された「歩行能力の改善問題」、昨年は、景表法・健康増進法に基づく115社への一斉指導が行われた「認知機能の維持問題」が起きた。ただ、取締り、監視はいずれも「広告表示」が問題にされてきた。

 この間、「根拠」をめぐるいくつかの問題が、取沙汰されることはあった。

 一つは、18年、「甘草由来グラブリジン」を含む機能性表示食品に対する景表法調査。当時、6製品が届出を行っており、うち1社は、「消費者庁の指摘を受け、弁明の機会(命令前の最終段階)にある」と調査の事実を認めている。「弁明の機会」は、消費者庁が予定する措置命令書を事業者に示した上で、2週間の猶予をもって行われる。この手続きが取られた上で命令が下されないことは極めて珍しい。だが、対象成分は、事業者が自ら届出を撤回し、評価をやり直す形で命令を免れたとみられる。

 もう一つは、20年、「アフリカマンゴノキ由来エラグ酸」。当時、25製品が公表されていたが、研究論文は被験者が外国人であり、日本人への「外挿性(あてはめ)」の評価、表示する痩身効果の程度などが問題視されたとみられる。これも水面下で撤回を経た再評価・届出など猶予が調整された。

 育成と逆行し、断続的に続く取締りを回避するため20年に策定されたのが、「事後チェック指針」だ。景表法による取締りの予見性を確保し、業界団体と連携しつつこれに対処することを目的にした。「アフリカマンゴ―」、「認知機能の維持問題」は、いずれも指針策定後。抑制的な措置と受け取れる。とくに延焼を招く「根拠」の判断は慎重に行われていたとみられる。

 こうした中、消費者庁は今年6月、さくらフォレストが販売する機能性表示食品に、景表法処分を下した。「根拠」に踏み込む判断の影響は、同一の研究レビューを行う88件の届出の確認、届出全製品の再検証を求める自体に発展している。88件の回答期限は7月17日。次回以降、処分のポイントを振り返る。(つづく)


 
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