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交渉経緯、判決に影響【大正製薬VSサントリーW③健食めぐる「銭闘」】 金銭面折り合いつかず「健食」不記載に

2023年 9月14日 12:00

 大正製薬の主張はなぜ退けられたのか。背景には、「健康食品」カテゴリーをめぐる大正製薬とハットトリッによるプロ野球の契約更改並みの「銭闘」があった。

 代理店を電通から博報堂に切り替えた20年7月、契約更新の協議は新たに博報堂DYスポーツマーケティングの担当者を加え、「大正製薬→博報堂キャスティング&エンタテインメント→博報堂DYスポーツマーケティング→ハットトリック」の間で行われた。

 大正製薬の窓口となる博報堂キャスティング&エンタテインメントの担当者は競合禁止規定の「リポビタンシリーズと同種・類似の商品を対象にした第三者の広告宣伝」を「同種・類似の商品(エナジードリンク、ゼリー飲料、ショットドリンク、健康食品)」に変更すること等を契約金1500万円の増額とともに提案。交渉過程で今後、錠剤タイプの新商品の発売計画があることも伝えられる。

 ハットトリックは、すでにゼリー飲料で広告出演があったため、健食以外の追記を了承。「健食」は、「飲料」に新たなカテゴリーを加えるものとして、飲料カテゴリー同様の5000万円の増額が必要と難色を示す。

 この間、新たにハットトリックの窓口となった博報堂DYスポーツマーケティングの担当者のもとには、同じグループ会社の大広WEDO担当者からサントリーウエルネス(以下、サントリー)が三浦知良選手を広告に起用したいとの要望が寄せられていた。

                                                                      ◇

 交渉過程を、担当者の陳述から振り変える。まず契約金について。博報堂DYスポーツマーケティングの担当者は、「(ハットトリック担当者から)健食は大きなカテゴリーで、本来であれば8000万円で新たな契約が結べるカテゴリーと聞いた」、「お付き合いのある大正製薬さんなので8000万円とは言わないが、最低でも5000万円の追加は必要と伝えた」、「(ハットトリック担当者は1500万円と言われ)非常に憤慨していた。選手の価値を蔑まれ、馬鹿にされたようだと怒っていた」と証言。一方、サントリーへの対応は、「(大広WEDOの担当者に)セサミンEXの広告への出演の返答や契約交渉は一切できないため待ってほしい」と伝えたとしている。

 こうして金額面の折り合いがつかず、契約は結果的に「『健康食品』の記載なし」「増額なし」でまとまる。その際、(1)新商品の展開が確定した際に改めて契約を打診したい旨、(2)競合他社から広告出演の打診があった場合は連絡が欲しい旨――という大正製薬の意向が伝えられるが、「秘密保持契約の問題から難しい。現時点で『健食枠』を押さえたほうがよい」(博報堂DYスポーツマーケティング担当者)と伝えたという。

 契約締結後、博報堂は、サントリーとの契約交渉を開始。10月に大正製薬から3000万円の増額で新商品の広告出演の打診があったが、「この段階でもまだ値切るのか」(同)と感じたという。こうしてハットトリックは、広告出演を拒否。同年12月、サントリーと契約を結ぶ。

 法廷で大正製薬は、「健食」の記載に「(シリーズは)錠剤を含むより広い概念であるためとくに問題にしなかった」、「例示として念のため明記を試みたにすぎない」、「ハットトリックは、広告対象になるシリーズは剤型を問わない明確な文言がないことを奇貨として固形の健食が含まれていない趣旨の主張をし始めた」などと主張したが、東京地裁、「それであれば増額の必要はなく、交渉経緯と矛盾する」などと主張を退けた。(つづく)

 
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