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サントリーに直接抗議【大正製薬VSサントリーW ⑤「業界の慣習」の評価】 業界各所に訴えも共感得られず

2023年10月 5日 12:00

 大正製薬は、訴訟を前にサントリーウエルネス(以下、サントリー)に直接抗議。関係各所にも広告起用に関わる「業界の慣習」に反すると訴えていた。

 サントリーに対しては、沖中直人社長宛てに、書面でハットトリックによる三浦知良選手の広告出演拒否の経緯を説明した上で、訴訟提起を準備中であることを通告。競合製品に同じイメージキャラクターを起用することが商慣習上、禁止されており、「当社が貴社の競合会社であることは十分承知のはず」、「貴社が広告出演させるに至ったことは甚だ遺憾」と忠告している。サントリーホールディングスの新浪剛氏社長宛てにも「子会社で同様の事態が起きないよう真摯かつ責任ある対応をお願いする」と、同じ書面を送っている。

 書面では、広告関連の業界団体である日本広告業協会(=JAAA)、日本アドバタイザーズ協会(=JAA)にも詳細の説明を行い、業界全体の問題として公の場で議論することを提言したとしている。

 サントリーは、広告出演について、過去にグループ会社の清涼飲料水等に広告出演した経緯から関係が深く、年齢にとらわれずチャレンジする姿勢がセサミンの広告にふさわしいという考えに基づき起用したと説明。声明に対しては「大正製薬と契約した商品カテゴリーが異なり、起用に問題はない」と回答した。JAAも「個社のことで議論したり、見解を述べる立場にないとお伝えした」(日本広告業協会は本紙掲載までに未回答)としている。

 なぜ、主張は受け入れられなかったか。関係各所へのここまでの抗議や提言は、創業一族である上原家の決断がなければできなかったことだろう。ただ、声明による社会への発信も、共感が広がることはなかった。訴えが、社内倫理に基づく一方的なものであったこともあったのではないか。法廷では、契約を仲介した博報堂DYスポーツマーケティングの担当者から、「『カズは大正製薬の持ち物ではございません』ということをはっきりさせておきたい。事務所(注・ハットトリックサイド)として非常に残念な気持ちになっている。これ以上の交渉は、心証を悪くしてリポビタンDの契約にも悪影響を及ぼす」(陳述より一部抜粋)と指摘を受けている。

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 一方で、博報堂はグループ企業が大正製薬に謝罪を行っている。法廷では、大正製薬に対しても「理想的には大正製薬に健食カテゴリーも契約していただくことが一番よいと考えていた」(同)、「(ハットトリックの担当者は)契約も末永く継続していきたいとの意向を持っておられた。こうした争いをしなければいけなくなってしまったことをとても悲しんでおられた。大正さんへの感謝の想いとリポビタンDという商品に対する好意を強く持っておられた」(同)と配慮をみせている。

 また、三浦選手の起用を打診した大広の社長が謝罪。大正製薬は、大広が約7割を出資するD&Iパートナーズ(現・博報堂コネクト)とコールセンター業務などで取引関係にあったというが、「上原家の逆鱗に触れ、出資比率や社名の変更を行い手打ちになった」(業界関係者)という。

 取引関係など現在の博報堂との関係について、大正製薬は「契約をやめたとは聞いていない」と回答。博報堂に声明への見解や社名変更の経緯を尋ねたが「守秘義務もあり、個別の業務・取引内容に関して当社からお伝えすることができない」(博報堂DYホールディングス)と、具体的な回答は得られなかった。(おわり)

 
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