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物価高の中“売らない”提案も<サブスクビジネスに好機>

2024年 3月22日 12:00

 原材料の高騰や実質賃金の低下など、消費環境への逆風が続いている。より一層、消費者が「本当に欲しいものだけ」を選ぶ傾向が強まる中、「サブスク」や「レンタル」といった販売だけではない切り口からの提案も注目されている。物価高の中でも高品質を求めるニーズを的確に捉えており、特にレジャーや趣味分野の高額商材において高い相性を発揮しているようだ。通販関連企業で進む主な取り組み事例を見ていく。
 



利用件数が前年比1.5倍、テレビCMや百貨店でPR

GDO


 ゴルフ用品のネット販売などを行うゴルフダイジェスト・オンライン(=GDO)は、ゴルフクラブのサブスクリプション型サービスである「トライショット」の利用者数が拡大している。ゴルフクラブの値上げが続く中、低額からでも新品が利用できる仕組みがゴルファーからの支持を得ており、あわせて、サービス認知向けた各種PR施策の強化も奏功しているようだ。

 同サービスは1カ月、3カ月、6カ月の3種類の利用プランがあり、その期間内でゴルフクラブなどを提供し、顧客から月々の支払いを受けるというもの。顧客はプラン終了前に、そのまま購入するか返却するかを選択でき、そのまま購入する際は、商品代金からそれまで月額で払っていた利用料金を引いた残価のみを支払うようになっている。
 実店舗と違って、事前の試し打ちなどが難しいECならではのデメリットを解消したサービスであり、購入を決める前に実際のゴルフ場で最新モデルのクラブを試すことができるというところが大きな利点となっている。

 サービスの認知に当たっては、リスティング広告やアプリのダウンロード広告などウェブでの訴求を図っているほか、2022年末には試験的にテレビCMを制作して、九州地方限定で放映を実施。23年については、さらにBS・CS放送でも配信していった。

 特に新規獲得に効果的だったのが、BSでのゴルフトーナメント放送に合わせて放映したCMだ。昨年は3月~5月までの期間に15秒間の尺でサービス内容を分かりやすく伝え、認知拡大を図っていった。ゴルフクラブの各種人気ブランドの新モデルが発売される2月の直後というタイミングを選んだこともあり多くの反響を得て、サービス名称の検索からの流入数が増加したという。

 また、昨年4月には北海道の百貨店内でリアルイベントも実施。売り場の一角を使って、来場者に最新のゴルフクラブを試打してもらい、気に入れば同サービスで利用できるという内容で誘導していった。

 接客には実店舗経験者だけでなく、EC部署から同サービスの担当者も参加。通常の購入形態とは異なる仕組みを分かりやすく説明していった。「ネットでは分かり辛い部分もあったかもしれないが、リアルで一緒に会話していくと注文に結び付きやすいことを実感した」(坪井春樹リテールビジネスユニット長)との言葉通り、接客対応した顧客ほど注文率が高くなったとする。

 北海道という場所を選んだことにも理由があった。同地域は雪が多い冬はゴルフができず、基本的には3月~9月だけがプレーシーズンとなる。年間を通して6カ月間のみのシーズンということであれば、ゴルフ用品を購入するよりも、そのシーズンだけサブスクで毎年安価に最新のゴルフクラブを使いたいとする心理が働きやすいのかもしれない。

CMやイベントは今年も継続

 なお、今年についても、同サービスの積極的な拡販を行う考えで、引き続き一番反響の良かったBS放送でのゴルフ中継にてテレビCMを予定。北海道でのリアルイベントとしても、3月下旬に駅前の地下広場にて実施していく。ゴルフクラブだけでなく、弾道測定機の新商品なども取り扱っていく考え。

 また、サブスクについては、今後も拡大すると見込んでいる。実際に23年12月期の国内セグメントにおける同サービスの利用件数は前年比で1・5倍に伸長した。

 特に昨今は世界的な原材料高や円安などの影響を受けて、年々新品のゴルフクラブ価格が上昇。物価高が続く中で、財布の紐が固くなった消費者にとってはサブスクモデルに目を向けやすい環境となっている。

 同社のサービスの場合は、ゴルフクラブの中でも特にドライバーが人気となっている。通常、新品のドライバーを購入すると1本10万円程度かかることも少なくないが、同サービスであれば月々5000円程度での利用が可能。人気の最新クラブをシーズンごとにその都度安価で利用できるという部分は、コストを抑えてゴルフを楽しみたいという現代のプレースタイルにマッチしているのかもしれない。


“絵画を選ぶ”を習慣に、アーティストの支援も

Casie


 絵画などアート作品のサブスクサービスで注目を集めているのがCasie(カシエ)だ。月額定額で気軽にアート作品をレンタルでき、気に入れば購入することもできる。

 現在活動中の約1400人の画家、1万5000点以上の絵画から好みの作品を選ぶことができ、季節や気分の変化に合わせて最短1カ月で自由に作品を交換できる。

 ユーザーが支払う月額料金の一部がアーティストに報酬として還元される仕組みで、アーティストの支援や国内の文化芸術活動にも貢献している。

 月額利用料は飾りたい作品の大きさで決まり、小さめのライトプランは税込2200円、中くらいサイズのレギュラープランは同3300円、大きめのプレミアムプランは同5830円となる。また、作品を交換する際に送料などの諸経費(交換利用料)がかかる。

 「日本人はアート作品を鑑賞することはできても、作品を選ぶという行為に慣れていないため、アートの市場は諸外国に比べて小さい。作品を自分の目で見て選ぶという行為を習慣づけるには『交換』が発生するサブスクの事業モデルが一番だった」(藤本翔CEO)とする。

 「カシエ」をローンチしたのは2019年の1月。サービス設計で重視したのはアーティストから作品の実物を預かることで、サービスの内容はもちろん、保管品質を含めて信頼して作品を預けてもらえるまでに起業から2年かかったという。

 レンタル・サブスクサービスのため、返却された作品のクリーニングや補修、万全な状態で保管するための手間やコストはかかるものの、作品を購入せずに預かることでスリムな財務体質を維持できる利点がある。

 現状、「カシエ」の利用者は女性が約7割で、40代~60代のユーザーが多く、50代以上が過半を占める。季節の変わり目に作品の入れ替えが多いこともあり、作品の交換頻度は3~4カ月ごとがボリュームゾーンで、毎月交換するユーザーは1割程度だ。

 圧倒的にレギュラープランの利用者が多く、作品全体の約9割は購入可能で、全ユーザーの1%程度が作品を購入している。

 作品のメインは絵画の原画だが、写真や一部イラストレーションの取り扱いも始めた。

 サービスの継続率はtoC向けのサブスクとしては高く、「アーティストへの報酬が次の創作活動に使われていることをユーザーも知っているので、単なる消費ではなく社会的責任消費の活動に参加しているという意識が高い」(藤本CEO)とする。

 「カシエ」ではアーティストとユーザーをつなぐサービスを目指しており、ユーザーが特定のアーティストのファンになり、個展などに足を運ぶといった行動にもつながっているようだ。

 同社が大事しているKPIはアーティストへの月間支払い総額で、毎月1億円以上の報酬をアーティストに支払える会社になることが当面の目標という。

 一方で市場規模が小さいため広告効果が薄く、流入元は「知人からの紹介」が圧倒的に多い。無料クーポンなどで一気にユーザーを獲得しても作品を破損したりする可能性があるため、急成長は追わずに着実な成長を目指すという。


 
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