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靴の「ロコンド」次の一手は?田中裕輔共同代表に聞く   2、3年後に100億、黒字化へ

2012年 7月 5日 13:58

サマンサのEC運営を受託、アパレル商材も開始

靴の通販サイト「ロコンド」を運営するジェイドの初年度(2012年2月期)は売上高が8億6000万円、営業損失が14億円でスタートダッシュとはいかなかったが、今期は新たな挑戦が目白押しで、黒字化に向けた大事な1年となる。田中裕輔共同代表に前期の総括や今後の取り組みを聞いた。
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初年度を振り返っての感想は。

 「率直なところ、赤字については織り込み済みだった。ECで先行する欧米企業の例を見ても2~3年は赤字で、その間にいかにファンを作っていくかが事業拡大の肝だ。ただ、商品仕入れ先と顧客、従業員の三方と着実に関係を築いていく前に、あまりに成長を焦りすぎて、無駄な費用をかけたと反省している」

 無駄な費用とは。

 「いま思えばテレビCMは早すぎたし、当初の仕入れはすべて買い取りで在庫が膨らんだ。ただ、資金面ではロケット・インターネットだけでなく、昨年10月に三菱商事系と伊藤忠グループの投資会社がサポートしてくれており、問題なく上を目指せる状態にある」

 赤字額をどう見ている。

 「売り上げは想定通りとはいかなかったが、それ以上に垂直立ち上げを狙って無駄な広告費を使ってしまった。昨年11月にオフィスも移転したが、コスト意識が甘かったのは確か。いまは絞れるコストは絞り、その分を顧客サービスに回している。痛い失敗だったが追求すべき姿は明確になった」

 足元の業績は。

 「昨年の秋冬から売り上げが前月比で約10%伸びており、ファンは増えている。最初のシーズンでうまくいかなかった部分を秋冬から大きく変えた。例えば、仕入れも買い取りから日本の商慣習に合わせて委託販売をとり入れた。会員獲得手段もマス広告への集中投下ではなく、くちコミやSNSでの地道な取り組みが効いてきた」

 倉庫を移転した。

 「3月末に移転したが、保管能力の面よりも業務を内製化することが大事だった。当社が楽天やアマゾン、ゾゾに対抗するには資金力ではなく、サービス力で勝負する必要がある。そのためには倉庫運営の柔軟性が欠かせないと判断した」

 経営理念などに変化は。

 「基本は同じだが表現を少し変えた。当初は『感動と笑顔の提供』だったが、いまは日本一の『ほっこり』通販サイトを目指す。忙しい中でもサイトを見てほっとして、商品を手にとって喜んでもらう。そうした日常の小さな幸せを届けたい。初年度は全社員が共有できていなかったが、だいぶ変わってきた」

 黒字化のメドは。

 「ひとつの目安が取扱高100億円だ。14年2月期か15年2月期までに到達し、同時に黒字化も狙える。内向きのコスト削減にメドがつき、いまはファンをさらに増やして売り上げをとる時期にきている。じわじわとではなく、45度の角度で成長したい。多少の広告費は必要だが収益化のバランスは見ていく」

 現状の取扱高は。

 「初年度、『ロコンド』の取扱高は10億円台前半で、足元は月商2億円程度で推移している」
 秋冬に向けては。
 「アパレルの取り扱いを7月中に始める。主軸が靴であることに変化はないが、総合アパレルとの関係性が強まる」

 返品対応は。

 「基本的なサービス水準は維持するが、肌に直接当たるTシャツなどは返品に付帯条件をつける。トライアルとして5000品目でスタートし、返品状況などを検証する」

 選択肢が広がる。

 「バッグの売り上げも全体の十数%まできている。靴を購入した顧客がバッグも購入しており、今後はアパレルも提案できる。自宅にいながら全身コーディネートを試せるインパクトは大きい」

 靴やバッグの取り扱い先も増えている。

 「ユナイテッドアローズの商材を8月中旬から取り扱う。他にも高単価な有名ブランドが秋冬から入ってくる予定だ」

 新しい事業も。

 「メーカー自社ECの受託事業を始めた。7月からサマンサタバサジャパンのECをスタートした。同社のバッグはすでに『ロコンド』でも販売しており、在庫を一元化する。サイト構築やフルフィル業務も請け負う。EC受託事業は収益の柱になり、メーカーとの信頼関係も高められる」

 定期購入型ECへの参入も検討している。

 「プロトタイプは作ったが、現時点の優先順位は低い。ただ、『ロコンド』で顧客の悩みを聞く機会が多く、1人ひとりに合った靴を提案するのは得意だ。既存事業の収益化が軌道に乗れば再考する価値はある。他社と組むことも視野にある」

 今期の課題は。

 「アパレル商材の追加やサイトの機能向上を前提にオペレーションの精度を上げる。来年からは倉庫の人員やコンシェルジュも増やす計画だ」



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