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「TSS」の現状と今後を聞く ㊤

2010年 2月11日 12:21

ヤマトロジスティクスは、ネット販売事業者向けに提供する物流サービス「トゥデイ・ショッピング・サービス」(TSS)の展開で手応えを感じているようだ。午前0時までの受注商品を最短8時間で届ける同サービスは顧客ニーズにマッチする形で、導入通販事業者の出荷件数が順調に拡大。出荷数量の増加に伴うコストメリットが大きく、販売戦略の幅も広がるという。「TSS」の現状と今後の展開にいて、同社の山内雅喜社長に話を聞いた。


「TSS」の本格的な展開を始めてから2年が経過した。現在の状況をうかがいたい。

 「オートピッキング対応の『TSS』を導入している通販事業者で35、6社、マニュアルベースの『TSS』で150、60社になる。健康食品や化粧品、アパレルが中心だ。また、オートピッキングの対応拠点は、神奈川と三郷(埼玉)、新習志野(千葉)、有明(東京)、大阪、福岡の6カ所になった。今後、中国や中部、東北、北海道にも拠点を設ける計画で、直近では9月頃に名古屋にオートピッキング対応の拠点を開設する予定だ」

 「TSS」を導入している通販事業者の実際の成果は。

 「出荷件数は間違いなく伸びており、当初の試算を上回るところも少なくない。注文から商品を届けるまでのリードタイム短縮によるキャンセル率低減やリピート率向上の傾向も見られる」
 出荷件数が伸びている要因は何なのか。

 「午前0時までの受注商品を最短八時間で届ける『TSS』の仕組みが、注文商品を早く届けて欲しいという顧客ニーズにマッチしたということ。このニーズは予想以上に強いというのが実感だ。今後、それにしっかりと対応できる通販事業者が売り上げを伸ばすという傾向が鮮明になると思う。また、『TSS』の導入で販売戦略の幅が広がった通販事業者もある」
 
具体的に「TSS」の導入による販売戦略の広がりとは。

 「高級品嗜好の顧客をターゲットにしていたアパレル系通販事業者が『TSS』の導入により、中価格帯商品の販売を強化できるようになったという事例がある。それまでの手作業のピッキングでは、1日に扱える商品の量が決まってしまうため、中価格帯の商品まで手が回らなかった。だが、『TSS』導入による出荷能力の向上で中価格帯の商品にも注力できるようになり、出荷件数も順調に伸ばしている」
 
出荷件数の増えても、出荷作業のコストが拡大するのではないか。

 「通常、ピッキングから検品、梱包など人的作業の部分が多いため、出荷件数が増えれば業者に支払う料金も増えるが、オートピックを使った『TSS』では、基本的に人手を要するのは最終的な検品や梱包だけで、量に対するコストメリットが働き、出荷件数の増加幅に対して料金の伸びが緩やかになるため、利幅の薄い中低価格帯商品を強化する戦略も可能になる。中価格帯の商品は、利益率があまり高くないかも知れないが、出荷件数の伸びでカバーできるわけだ」

 物流イコールコストと見られがちだ。今後どのように「TSS」の導入メリットを訴求していくのか。

 「まだ、運賃など個々のコストを比較する通販事業者が多いのだが、トータルで見ると高いコストを払っているケースもあるのではないかと思う。本来的には、総体的なコストで考えるべきで、その意味では『TSS』の導入メリットは大きいはずだ。また、『TSS』が従来のサービスと異なるのは、通販事業者と一緒に売り上げの拡大策を考えるという流れができつつあること。実際、『TSS』導入事業者と販売面で相談をすることもある。その意味では、当社も通販事業者の物流アウトソーサーから、販売パートナーへと変わりつつある。今後、成功事例が増え、『TSS』導入によるコストメリットや売り上げ拡大効果が認知されれば、状況が変わってくるだろう」
(つづく)

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