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ソフトバンク子会社 早朝・夜間配送サービスを展開する専門子会社を設立

2017年 6月 1日 10:20

スキャッチ.jpg 「早朝・夜間の配送、請け負います」。ソフトバンググループで新規事業を手掛けるSBイノベンチャー(SBI)は5月24日、ネット販売事業者を対象に、早朝や夜間に注文商品を顧客に配送するサービスを展開する専門子会社を新設した。当該サービスは約2年前から着手しており、分社・独立させることで規模拡大などを狙う考え。早朝や夜間の配送は一定ニーズがありそうだが、一般的な配送業者は対応していない。通販事業者が同サービスを導入することで顧客に「早朝や夜間も配送可能」と訴求でき利便性向上や競合他社との差別化を図ることもできそう。すでに昨夏から導入するアスクルは運営する日用品通販サイト「ロハコ」で早朝・夜間の配送対応を始めているが、今後は他のネット販売事業者などにも導入先を広げていきたい考え。

 通販サイト運営者向けの早朝・夜間の配送サービス「Scatch!(スキャッチ)」は5月24日付で新設した子会社のMagicalMove(=マジカルムーブ、本社・東京都港区、武藤雄太社長)が実施する。当該サービスはいわゆる利用運送事業で、同サービスを導入する通販サイトの顧客から指定された早朝および夜間の時間帯に購入商品を提携する軽貨物業者が配送する仕組み。

 導入先サイトの顧客は午前6~9時、夜間では午後9時から午前12時までそれぞれ1時間の幅で配送時間を指定できる。「スキャッチ」の会員登録を別途、行った導入サイトの顧客には配送計画が決定した段階で、利用者があらかじめ指定した1時間幅の商品配送予定時間の中から、さらに30分幅とした商品到着時刻の通知や配送直前に「もうすぐお届け」という確認をメールで通知したり、配送状況の確認、指定日時の変更、担当ドライバーへの連絡などにも対応する。現状、配送先は現状、都内23区および大阪市内在住者のみとなっている。

 「スキャッチ」を導入する通販サイトなどから早朝・深夜帯での配送指定受注を受けると、マジカルムーブと提携する軽貨物事業者が当該通販事業者の倉庫に商品を取りに行き、最短で受注当日中に配送する。そうした流れのため、現時点では東京23区に配送する場合は連携する軽貨物事業者がカバーできる東京・神奈川・千葉・埼玉といった関東圏内に倉庫を持つ企業、大阪市内への配送では大阪周辺に物流倉庫を構える企業のみが当該サービスを利用できる。

 対応可能商品は目安として30キログラム以内の重量のもので現状、冷蔵・冷凍商品は対象外としているが、冷蔵品に関しては今後、対応していく考えのようだ。利用料金の詳細は明らかにしていないが「大手配送業者を利用する場合の料金並みの費用」(同社)としている。

 当該サービスを導入したい通販事業者は「スキャッチ」が公開するAPIに合わせてシステム連携の準備が必要で1カ月程度の時間がかかるもようだ。

 「スチャッチ」は同事業のモデルを考案し、今回の新会社の社長に就任したソフトバンクの武藤氏が中心となり、一昨年夏から、新規事業としてSBI内でスタート。当初は利用者宅にネット販売購入商品を深夜や早朝に配達、または指定時間にピンポイントに配送する一般消費者向けのサービスだったが、昨年からは「スキャッチ」の仕組みを通販事業者に向けて提供する試みをスタート。導入通販サイトは自社顧客に対し、早朝・夜間の時間帯への配送対応ができるようになることを"売り"に導入を進めていた。

 昨年5月にはアスクルがSBIに業務委託する形で運営する日用品通販サイト「ロハコ」で展開を始めた都内など一部地域限定で行う小刻み時間指定配送サービス「ハッピー・オン・タイム」において導入。同サービスの配送は基本的には物流子会社のアスクルロジストが担うが、同社では対応できない時間帯である早朝の午前6時から8時および夜間の午後10時から午前12時の配送を請け負い、現在も東京および大阪で当該時間帯の配送を担っているようだ。

 アスクルからの業務委託をきっかけに一般消費者向けのサービスから撤退し、法人向けにサービスの舵を切った「スキャッチ」だが、さらに同事業を分離・独立させることで事業拡大を図っていくもようだ。アスクルとの試みのような業務委託の形のほか、通販事業者が自社の配送サービスに「スキャッチ」を加え、現状の配送対応時間に、「早朝」や「夜間」も加えるようなよりライトな形の導入を増やしていく考えだ。

 配送サービスを巡っては料金の値上げや配送員の人手不足などでこれまでの「行き過ぎたサービス」を問題視する風潮があるものの、通販にとって配送サービスは非常に重要で重視すべきものであることは間違いない。一定の需要があるはずの早朝・夜間の配送対応は通販企業とっては検討してみる価値はありそうだ。

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