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プラットフォームを味方につけろ!賢いEC活用のヒントを探る【第3回】

2019年 5月25日 00:00

Facebookの可能性

『ビジネス利用が多く購買力がある層が集まってくる』

─ こんにちは。今回とりあげるプラットフォームはFacebook です。岡田さん、最近のFacebook をどう見ていますか?

岡田 ご存知のとおりFacebookは個人情報関連の問題が続いており、不信感が募っていることは否定できません。Facebookとしては一般的に人気もありユーザー数も順調に伸びているInstagramを押しているという側面もあります。ただ、Instagramの共同創業者の2人が昨年Facebook 社を退社しています。Facebook社との方向性と合わなくなったのかもしれません。あまり良いニュースではないので、Facebook側としては何らかの形であれビジネスに寄せていきたいという思惑があったのではないかと思います。

─ 広告の運用も減っているのでしょうか。

岡田 企業のFacebook広告の運用はほとんど減っていません。確かに広告配分として別のプラットフォームや媒体に出稿するという動きもありますが、それほど多くないです。なんだかんだ言ってもFacebookにはまだ一定数のユーザーがいるので、広告費が増えているケースもあります。
 
 私の場合、Facebook アカウントの利用用途としては「仕事9割・プライベート1割」といったところです。仕事上の情報収集や情報共有に利用することが多いです。これは他のユーザーにも見られる傾向で、ビジネス利用が多いのがFacebook の特徴かもしれません。

─ Facebookを評して「もはやおじさんとおばさんの社交場」と表現する人もいます。

岡田 それは見方を変えると、購買力のある層が集まっている場とも言えるわけです。Instagramのように若年層が多い場は、中長期的な意味で「顧客接点の構築」や「ブランディング」には良いのですが、直近の利益を狙うのであればFacebookのほうが効果が出ると言えます。

 Instagramは昨年にショッピング機能が追加されて、インスタ上の画像を介してECサイトに送客することが可能になりました。しかし購買の導線が複雑で、使い勝手がいいとは言えないのが現状です。とはいえ、アメリカ本国ではInstagram内で購入まで完了する「Checkout (チェックアウト)」機能がテスト的に始まっています。これが日本でも本格的に導入されると状況は変わるかもしれません。

ユーザーの「いいね!」から趣味嗜好を分析

─Facebookは国内で3000万人弱の月間アクティブユーザー数がいると言われています。今までのお話を伺っていると、企業の広告戦略としてはまだまだFacebookは活用しがいがあるという認識でよいでしょうか。それとも広告予算の配分を削減したほうがいいのでしょうか。

岡田 企業がどういう層を獲得したいかによるでしょう。ECで言いますと、アパレルで女性向けならInstagramのほうが相性はいいでしょうが、価格帯が高いブランドやゴルフ用品等であればFacebook でしょう。Facebookと親和性が高いということで言うと「男性」「30 歳以上」といったセグメントになります。

─ 例えば「女性」で「50 代」だとどうでしょうか?

岡田 女性であってもその年齢層であれば、InstagramよりもFacebook のほうがリーチできるのではないでしょうか。

─ Facebook広告はニュースフィード(タイムライン)上にバナー広告や動画広告、カルーセル広告などさまざまな広告が配信されますが、Facebook広告の特徴はどういった点にあるのでしょう。

岡田 一番の売りは「精度の高さ」ですね。一般のEC事業者の場合、性別や年齢などに加え、購買履歴や閲覧履歴をもとにターゲティングすると思います。Facebookでも性別や年齢、住まいなどの情報は参考にしますが、そのユーザーが「いいね!」をした履歴から趣味嗜好を分析するのが特徴です。

─ Facebookならではのサービスである「いいね!」の機能を広告のデータ分析に活用しているんですね。

岡田 はい。その精度の高さは強みです。仮にターゲットの顧客と合うだろうかと悩んでいるのであれば、1回試してみることをお薦めします。ハナから合わないと決めてしまうのはもったいないです。

─ Facebook 広告を使う場合は代理店を通すのでしょうか。

岡田 規模によります。まずは小規模で内製でやってみてもいいと思います。管理画面から出稿するという作業はそれほど難しくはありません。そこから細かくターゲティングしたり、タグを入れてリターゲティング広告を打ったり、しっかりPDCAを回すとなると専門的な知識が必要になりますが、スモールスタートする分にはそれほどハードルは高くないと思います。

テキストは全体の20%に抑えて

─ Facebook 広告の費用対効果はどうでしょう。

岡田 いいと思います。実際に出稿され続けているということは予算に対して結果が出ているからです。Facebookとしても企業の出稿を促すような仕掛けもしています。

─ 具体的にはどのあたりでしょうか?

岡田 例えばですが、ユーザーが企業のFacebookページに「いいね!」をしたとしても、その企業の投稿がユーザーのタイムラインに毎回流れてくるとは限らないのです。つまりFacebookページだけではユーザーにリーチしにくくなっています。このあたりは広告出稿を推進するための措置ではないかと推測されます。

─ 他のSNS と比べた場合にFacebook の特徴はありますか。

岡田 やはり先ほどの「いいね!」からのユーザー分析などデータの分析は強いです。技術力は高いので、広告機能もリターゲティングや似たユーザーへの広告配信など他よりも進んでいますし、ユーザー体験を損ねないような見せ方にも気を配っています。

─ なるほど。Facebook 広告に出稿する上で気をつけるべきことはありますか。

岡田 クリエイティブは重要だとよく言われます。他の広告と同じで、どういったクリエイティブが刺さるかは、出稿してみないと分かりません。ただ、テキストを入れすぎたものは歓迎されないようです。テキストは全体の20%までに抑えて、ニュースフィードを邪魔しないようにするのが大事です。

─クリエイティブは頻繁に変えたほうがいいのでしょうか。

岡田 配信予算やターゲットユーザーのボリュームにもよりますが、1週間程度のスパンで高頻度に変更するケースもあります。ユーザーがそのクリエイティブに飽きてしまうので、定期的に変えていくことをお薦めします。ちなみにこれはInstagramも同じで、ずっと同じモノを出稿するのではなく、広告とはいえ楽しいもの・美しいものが喜ばれます。

─となると、運用側は大変ですね。

岡田 Facebook側も広告を自動生成する機能を出しています。もちろん自動的にクリエイティブを作るので、その効果は落ちるかもしれませんが、運用の手間が負担だというのであれば、そうした機能を活用するのも手かもしれませんね。

─Facebook広告を実際に試してみたとして、その企業にとって合っているかどうかを判断するにはどのくらい使い続けるべきでしょうか?

岡田 少なくとも3カ月くらいは運用してみるのがいいのではないでしょうか。その結果を踏まえて、続けるかやめるか判断するというイメージです。

万遍なく使うのが大事に

─まだまだポテンシャルは高そうですね。

岡田
 そうですね。新しいものが好きな人はInstagramなど若者に人気のプラットフォームに移ってしまいがちですが、満遍なく使ってみるのが大事だと思います。

─Facebook の今後の舵取りも気になります。

岡田
 そういう意味では、Facebookは4/30 ~5/ 1にアメリカで「F8」というエンジニア向けのカンファレンスを開催しました。そこではかつてないほどにプライバシーを強調していました。具体的にどうという話はなかったのですが、オープンなSNSというよりはコミュニティ機能が中心のクローズなSNS になっていくようです。

─なるほど。そこは日本での展開も注視したいところですね。

岡田
 あとはInstagramのCheckout機能は使い勝手が良さそうなので、日本で使えるようになるタイミングに備えて準備しておくと良いと思いました。全体的に企業・ユーザーともに使い勝手が良くなるアップデートが多いので、まだまだFacebookは活用できるはずです。

プラットフォームを味方につけろ!賢いEC活用のヒントを探る(週刊通販新聞姉妹紙の「月刊ネット販売」で連載中)

第1回目「LINEの使い方」はこちら
第2回目「フルファネルとしてのLINE」はこちら

岡田風早(おかだ・かざはや)
株式会社フィードフォース コーポレート本部長 兼広報・Bizdev チームマネージャー
ソーシャルログイン/ID連携サービス「ソーシャルPLUS」のカスタマーサクセスチームの立ち上げで2015年フィードフォースに入社。その後「ソーシャルPLUS」プロダクトマネージャーを経て現在の役職に至る。LINE社とLINEログインにおけるパートナー契約を中心になって進め、ビジネスコネクトパートナーや大手代理店と連携して、企業のLINEによるOne to Oneコミュニケーション実現の設計に数多く携わる。またメディアへの寄稿やイベント登壇など情報発信も積極的に行っている


 
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