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通販需要を取り込め①――佐川、小型店拡充で地域密着サービス提供

2010年 8月23日 14:31

 SGホールディングスグループの中核企業で宅配便事業を手掛ける佐川急便が通販事業者向けの対応強化に本腰を入れ始めた。これまでBtoBの荷物をメーンに扱ってきたが、toC向け荷物が急増し、現在では約40%を占めるまでに拡大。今期からの中期計画ではインフラの整備・強化を中心とした取り組みを進め、今後さらに増加が見込まれる通販関連のtoC向け荷物を獲得していく構えだ。商品の配送を担う宅配便は通販事業者にとっても重要だが、佐川急便がどのようは形で取り組み進めるのかを見てみる。

 まず、佐川急便がtoC向け荷物の対応策として打ち出しているのは、キメ細かな集配体制の構築。具体的には、「サービスセンター」と呼ばれる小型店舗を拡充し、地域に密着したサービスを提供していくというものだ。

 サービスセンターは、台車やカーゴ、3輪自転車などを使い、トラック4、5台分に相当するエリアの荷物を集配する拠点。前期末の段階で、サービスセンター等の小型店舗は大都市部を中心に295店を展開しているが、これを今期中に473店に拡大し、中計最終年度に当る2013年3月期には540店とする計画だ。

 佐川急便がサービスセンターの拡充を進める第1の狙いは、地域に密着した機動的なサービスの提供。地域に密着した展開を行うことで、「埋もれていたtoCのニーズを吸い上げた新サービスの開発などで利便性を高めていく」(井岡康治執行役員営業戦略部部長)考えだ。

 また、従来、中継拠点から配送地域の営業店で仕分けを行った後にサービスセンターへ送られてくる荷物を、中継拠点から直接サービスセンターに送る形で配送リードタイムを短縮させることなども構想。このほかに、トラックの使用抑制による駐車場問題の解消や環境負荷の軽減などの効果を見込む。

 佐川急便の場合、toBをメーンに成長してきた関係で、末端の消費者との接点となる窓口に課題があった。同社は酒販店やガソリンスタンドを中心に「飛脚宅配便」の取次店を持つが、ともに減少傾向にある業態。コンビニについても有力チェーンは既に「宅急便」と「ゆうパック」に先鞭をつけられている。

 商品配送に「飛脚宅配便」を利用する通販事業者は拡大しているものの、消費者に対する直接的な認知度アップといった面では、やや弱さがあったわけだが、佐川急便としては、サービスセンターの拡充によるtoC向けインフラ構築を通じ、自社で扱う商品・サービスの認知度アップや利用の促進につなげることも視野に入れる。

 一方、サービスセンターの展開を通じ質の高いサービスを提供していく上で人材の確保が重要になるが、この部分では「常に戦力(人材)を強化しながら、質の向上とコストの低減を図る」(同)とする。今後、通販関連の荷物の取り扱い増加は見込めるが、荷物の小型化が進み、toBの比較的大きな荷物の展開と比較すると、低料金で配達効率も悪い。さらに戦力の増強で人件費も増えることを考えると、いかに効率化を図り、利益が確保できる体制を構築できるかがポイントになる。

 通販等のtoC向け荷物の対応強化を進める佐川急便。サービスセンターの拡充と並行して「市場競争に負けない体制を作らなければならない」(同)とする。
(つづく)
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