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【ジュンの中嶋取締役執行役員に聞く EC強化策とOMO戦略の現状は?㊦】 店舗からの直接配送を強化 運賃体系などの課題を解決

2022年12月 8日 11:00

 前号に引き続き、ジュンの中嶋賢治取締役執行役員(写真)に自社EC強化策やOMO戦略などを聞いた。

 ――商品欠品時に実店舗から購入者に直接配送するマイクロフルフィルメントシステムの本格運用を始めた。

 「自社ECの『ジャドールジュンオンライン』では、お客様の希望する商品がない場合、チャットスタッフに相談すると、在庫のある実店舗で商品を確保し、お客様の自宅に直接配送する『ラクトリ』サービスを昨年10月から展開していて、この仕組みをリアル店舗での欠品時にも広げた」

 「お客様が来店された店舗に在庫がなくても、倉庫や別の店舗に在庫があれば、そこからダイレクトに届ける。従来はリアル店舗の在庫をいったん倉庫に送ってから出荷していたが、運賃も時間もかかるので、より早く、より安く届けるためには店舗出荷の運用が不可欠だった」

 ――国内アパレルではほとんど例がない。

 「ハードルのひとつが配送会社さんの問題で、通常はひとつの拠点から距離数換算で運賃を支払う契約のため、マイクロフルフィルメントシステムを運用するには、全店舗で運賃契約を結ばなければいけない。当社は今回、日本郵便さんと契約して店舗ごとではなく、距離数だけの料金体系としてもらったことで、システムの運用を始めることができた」

 ――ほかのハードルは。

 「もうひとつは個人情報保護の問題だ。お客様の住所を聞いて手書きで送り状を書くわけにはいかないが、個人情報が残らないように送り状を印刷するシステムが、当社が導入した『ショッピファイ』のアプリに実装されていることが大きい」

 ――販売スタッフの業務も増えている。

 「店舗スタッフになるべく負荷をかけないことが大事だ。業務が複雑になったり、時間がかかったりして本来の接客業務に支障をきたしてはいけない。そのため、当社では『楽天ファッションオムニチャネルプラットフォーム(RFOP)』のアプリも入れた。店舗スタッフには『LINEワークス』に受注商品の通知が届くので取り置きする商品がすぐに分かる。出荷完了のボタンを押せば本部にも通知が届く」

 「これまでは、そうした工程をメールや電話で行っていた。店舗間の商品移動や問い合わせの時間をなくさないと店舗スタッフの業務負荷が増える」


 ――年間どれくらいの店間移動が発生しているのか。

 「当社では、客注として店舗からほかの店舗に動かしている商品が年間22万点あり、約2億5000万円の経費を使っていた」

 ――店舗出荷の対象店舗数は。

 「当社は全国に約380店舗を構えているが、まずは200店舗でマイクロフルフルフィルメントシステムの運用を進める」

 ――自社ECに店舗試着予約の機能も実装する計画だ。

 「『RFOP』を導入したので、年内をメドにスタートしたい。実は3年前からトータルロジスティクスコントロールの仕組みを、ゆくゆくは導入したいと考えていた。倉庫に在庫を集め過ぎるとリアル店舗の在庫は薄くなってしまうため、店舗に在庫をしっかり持ちながらも機会ロスを減らすには店舗出荷しかないだろうと思い、さまざまなテストを行ってきた」

 ――楽天のシステムを選んだ理由は。

 「自社でそうした仕組みをすべて開発するのは時間とコストがかかることもあって、何かの機会に楽天さんに相談させてもらい、より業界のインフラとして活用できるように共同で開発してきた経緯がある」

 ――店舗試着予約はECで決済をしてもらった上で、希望の店舗に取り置く形だ。

 「当社では決済されていない商品は動かさないというポリシーだ。お客様には事前に決済してもらうが、売り上げは試着予約を受けた店舗に計上する」

 ――OMO戦略の基盤が整った。

 「システムを導入してもまだ3割で、残り7割のオペレーションが伴わないといけない。接客の中でスムーズに案内できるようにするのはもちろん、店舗出荷では商品を正確に、良い状態で届けられるようにするには商品のステータス管理も必要になる。エラーを出さずにオペレーションが回るまでのチューニングには労力と時間がかかる」

 ――今後の課題は。

 「これからの世の中を考えたときに、ムダな販促費や不要な値引きをせず、定価で売り切ることにチャレンジしないといけない。従来型のセールを見込んだモノづくりはダメ。今期は約9割を定価で販売する設定でしか商品を作っていない」

 「在庫量は減るが、それでも売り上げを下げないためには、機会ロスを削減することが大事で、どこかに在庫があれば販売できる仕組みを整えておくことがリアル店舗にとって武器になる。機会ロスを防ぎ、より少ない在庫でプロパー販売比率を高めていくことが、これからのファッションビジネスには不可欠な要素だと思う」(おわり)
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