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WNGと唐木氏、緊密な関係【「論文評価委」の短慮⑤】 学術的権威とメディアの権力

2023年 6月 8日 12:00

 「機能性表示食品『届出論文』評価委員会」は5月、第1回目の会合を開催した。明確な評価基準がない機能性表示食品の「科学的な質」の評価をどう規定するのか。

 評価委は、届出の質向上を目的にする。指摘するように、実際の届出に研究者による評価が分かれるものはある。機能性表示食品の届出は事業者裁量にゆだねられ、質的評価は確立していない。「事業者責任」で行うルールだ。

 評価委の委員は、3人。わずかな人数であれ、研究者が自らの見解を述べることに問題はない。だが、それだけでは求心力を持ちえない。「『科学的な質』は研究者でも見解が分かれ、線引きができない。これを規定できるとすれば、それをできる組織・人が一番偉い」(業界関係者)。評価結果の正当性を担保するための仕掛けが、学術的な権威と、メディアという権力の組み合わせだ。

 委員長の唐木英明氏は、東大名誉教授であり、08年~11年に日本学術会議副会長も務めている。今年5月の春の叙勲では、瑞宝中綬章(教育研究功労)を受賞した。

 利益相反が懸念される評価委の取り組みの妥当性について、受章の推薦の取りまとめを行った文部科学省、栄典の審査を行った内閣府賞勲局ともに「答えられない」とする。推薦した東大も「答える立場にない」としている。ただ、唐木氏の経歴は、評価委の権威づけとしては十分だ。

 もう一つ、権力を担保するのが、事務局を務めるメディアだ。ウェルネスニュースグループ(=WNG)は、事務局を務めることに、「事務作業に協力することがメディアの中立性・公平性を歪めるとは考えていない」とする。評価にも一切口出ししないため中立性は保たれるとする。だが、メディアを通じた評価結果の公表を「脅迫に近い」と感じる業界関係者もいる。

 本来、評価委の評価結果に疑問が生じれば、メディアとしてこれを論じることも必要だろう。ただ、その評価委の委員長を務めるのは、自らの学術顧問を務める唐木氏だ。「一切口出ししない、というより、学術顧問も務める唐木氏の評価に『口出しできない』のが実際ではないか」(WNG会員)と指摘する声もある。

 唐木氏は、WNGが事務局を務めることに「支援すれども支配せずの原則は厳守され、利益相反の問題は起こらない」と言うが、利益相反の懸念の払しょくのため、評価委とメディアは互いに距離を保つことが重要だろう。

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 評価委は、評価結果を広く他メディアに提供しない理由を「WNG会員を評価委の会員とみなすため」と説明する。ただ、メディアが事務局を務めることは、他のメディアを沈黙させる十分な理由になる。

 かつて健康食品業界は、乱立する業界団体の一本化、法制化を視野に大同団結を模索した。実現しなかった背景には、業界と関係するメディア関係者が参画したこともある。会員サービスとして評価を提供するなど一部メディアとの緊密な関係に利益相反の懸念があれば、他のメディアの関心は薄れ、独善的に映る。

 届出の質向上を図り、業界の底上げを目指すのであれば、その手法を見直す必要がある。(おわり)


 
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