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8割が「根拠あり」と主張【機能性インシデント ②開けられたパンドラの箱】 食表課、撤回指示の判断留保

2023年 8月 3日 12:00

 さくらフォレスト事件の問題は、届出表示そのものを対象として、「根拠」に踏み込んで不当表示を判断したことだ。消費者庁が景品表示法で「根拠なし」と判断したにもかかわらず、同種の製品を扱う企業は、8割が「根拠あり」と主張している(7月27日時点)。

 「ついにやった」。ある業界関係者はそう感想を漏らす。届出表示そのものを対象に「根拠」に踏み込む法執行は、何度か遡上にあがりながら立ち消えになってきたからだ。

 「食品で痩せるはあり得ない」。17年、「葛の花由来イソフラボン」を配合する機能性表示食品に対する景表法の執行に際し、大元慎二表示対策課長(当時)はそう言及した。広告で「内臓脂肪を減らす」という機能を超える表示をしていたとして処分。会見で、食品自体の機能を否定する踏み込んだコメントはしたが、あくまで広告の問題で、「根拠」そのものを否定する法適用は避けられた。

 「ある意味よいネタをもらったという観点もある。企業、業界としてそれならエビデンス合戦ですね、という対応も検討の余地がある」(業界関係者)。今回、消費者庁食品表示企画課は、措置命令を踏まえ、同一根拠で届出を行う88件の「確認」を行った。ただ、撤回の申し出がわずか15件だったことも、企業側の納得感が得られていない表れといえるのではないか。

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 確認を進めているのは、食表課。食品表示法上の対応は、届出撤回の「指示」、これに従わない場合「命令」になる。

 機能性表示食品の定義は、食表法に基づく食品表示基準に「機能性関与成分によって健康の維持・増進に資する特定の保健の目的が期待できる旨を”科学的根拠に基づき”容器包装に表示する」と定められている。その要件を欠くことを前提に同一根拠の製品の根拠確認を進めている。表示対策課の「根拠がない」という判断に基づけば、これら製品は違法状態で販売されていることになるからだ。

 回答を受け、消費者庁は、「根拠あり」と主張する企業に対し、景表法や食表法など法令に基づき対処する方針を明らかにしている。庁として「根拠なし」と判断したことを前提にすれば、食表課の対応は撤回の指示が自然だ。ただ、現状は要件を「満たす、満たしてないかを判断しているわけではない」と明確な判断を示していない。企業が根拠を適切に説明した場合、問題ないと判断するかには、「そういった対応もあり得る」とする。

 景表法で「根拠なし」と判断されていることには、「(さくらフォレストが)弁明の機会に根拠が十分にあると説明できなかったため、今回の措置になった。食表法の基準の関係とは分けて考えてもらいたい」と、個別案件である旨を説明。処分は、企業の説明の巧拙で判断されるものではないが、「措置命令については表対課に聞いて」とする。当初、変更届による対応を認めたものの、その後撤回を要請したものもあるようだ。

 表対課は、食表課の通知は承知しているものの、「どういう基準で出しているか、関知していないため分からない」。同一根拠の製品があり、違法状態にあることには、「あくまで措置命令は個別事業者との関係で不実証広告規制により根拠提出を求め、提出根拠がこれに合致していなかったということ。さくらフォレストの表示に適用したもので、他製品に関係するものではない」とする。今後、他製品への対処には、「従前から調査を行っているかを含め、一切答えられない」。あくまで個別判断というスタンスだ。

 広告は各社の創意工夫が反映されるが、根拠は、成分・製品の生命線。根拠に踏み込む判断は、多くの企業を巻き込み波紋を広げている。(つづく)

 
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