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実店舗との戦略統一を【AOKIのEC戦略の現状と今後㊦】 自社に合うOMO施策構築へ

2023年 8月17日 12:00

 前号に引き続きスーツ専門店のAOKIでWEB事業部の責任者である林亮介氏に、現状の取り組みや今後の展望などについて聞いた。

 ――今期のEC事業の立ち上がりについては。

 「昨年から継続してビジネスアイテムが非常に好調に推移している。今年はより、実店舗との連動を高めていくことがテーマになる。前述のOMOもそうだが、今までのコロナ禍では実店舗への集客があまり進まなかったこともあり、セールも含めてEC独自の内容が多く、実店舗とはばらばらの動きになりかけていた。今期はそれらを一つにまとめながら、ECを販売チャネルという位置づけに加えて、実店舗の売り上げ拡大にも寄与するインフラになるように進化させていきたい」

 ――具体的には。

 「4~6月はECでのセールを少し前年よりも抑制している。実店舗との歩調を合わせながらブランド全体で打ち出していくことを行っている。そのため前年度と比べて成長率ではやや落ちたが、それでも増収となっているので、抑制をかけている中でも着実に成長ができている」

 ――実店舗とECとのバラつきとは。

 「例えば、売り方に関してセット内容がEC限定のものを作っていて、実店舗ではシャツが3枚で1万円だったが、ECでは4枚にしていたりするなど違いがあった。また、実店舗でセールを行っていない時期にECでセールをしたりすることもあった。あとはECサイトのビジュアルが実店舗の演出と少し異なり、一体感に欠けていた面もあったかもしれない。

 今期はそうしたところを一つにまとめていく。今のところ、(セール抑制なども行ったが)立ち上げりは想定ほど客数も落ちておらず、むしろビジネス系のアイテムは前年よりも伸びている」


 ――実店舗への送客で考えられる取り組みは。

 「まさに『取り置き予約』や『店舗受け取り』などの施策だと思う。これからではあるが、アプリやメールなど配信系のもので送客を促したりすることもあるだろう。ECでも実店舗でもどちらでも買えるような統一的な施策を考えていく」

 ――近年、オーダースーツなど高額商品がECでも売れるようになったことについて。

 「価格と価値が十分にマッチしていれば高額商品でもネットで売れるということが分かった。例えばスーツではないが、『エアクールパンツ』という商品をECでも販売している。このシリーズは税抜価格3990円や同5990円などの低価格帯があるにもかかわらず、ECで一番売れているのは高価格帯の同7990円のもの。やはり、機能や効能をしっかり伝えられていることが売れている理由になるのでは。高いものはネットで売れないという固定概念をあまり持たずに、良い商品の価値をしっかり説明できるようにしたい」

 ――伝え方が重要になるということか。

 「これまでは”ささげ”の文章をただ書いていただけだったが、ネットで伝えられる手段がスタッフコーデやブログ、インスタライブなど、今は色々と増えている。やはり、人による語り口調での説明など、商品認知を拡大したい。

 また、実店舗での体験も重要。例えば(デザイナーブランドの)『JUNKO SHIMADA』のロイヤルラインのスーツがあるが、ファンが多くてこのブランドしか着ないという顧客もいる。もちろんサイズが分かっていればECで購入できるが、実店舗でしっかりと価値体験を提供することも大事だろう」


 ――そのほか、今期の取り組み予定について。

 「繰り返しになるが、実店舗との融合を進めてその中で良い購買体験を提供したい。一言でOMOと言うが、当社の取り扱い商品や購買の頻度を考えると、一般的なカジュアルウェアのOMOとは違う形になると思う。当社に合ったOMOが大事であって、変わらずに思っているのは実店舗レベルのサービスをECでも提供できるようにするということ。

 探しやすさなど最短距離で買い物ができる仕組みはむしろECの方が優れているので、そこはUI・UXなどを今後も磨き上げていく。ただ、そこは他社でも取り組んでいるところ。やはり、当社が独自で有しているスタイリスト制度などは重要な資産となるので、そういったノウハウをどうやってECで再現して、当社の商品に対する疑問や不安、悩みを解決できるかを追求したい。

 また、目標としては今後も成長率を維持したい。コロナの影響でEC利用が伸びたのではなく、利便性を向上させたことでしっかりと成長できたと胸を張って言えるようにしたい」(おわり)


 
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