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薬とオーバーラップ【機能性インシデント⑤「食」と「医・薬」の相克】 「未病」への対応期待も、取締りに比重

2023年 9月14日 12:00

 機能性表示食品は、イメージ(抽象的表現)でしか訴求できなかった健康食品に具体的な機能の表示を可能にした。ただ、「食」と「医・薬」の相克は意識する必要がある。

 これまで「健康」と「病気」は切り分けて考えられてきた。規制のあり方も「食」が「医・薬」に踏み込むことがないよう薬機法による監視指導を受けていた。

 制度は、「健康寿命の延伸」を目的にする。健康長寿社会の実現に向けて健康と病気の間に存在する「未病」の段階における運動不足や生活習慣の改善を重視され、機能性表示食品は、連続的に変化する「未病」への対応を期待されて誕生した。一方で、「病気」と隣り合わせのこの領域は表現に慎重さも求められる。

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 広告は、一部を切り出した表現にすることでその印象が強まることがある。消費者庁はこれを”切り出し表示”として問題視してきた。制度の導入以後、医薬品の効果表現との近接が初めて問題視されたのは「歩行能力の改善」をめぐる問題(18年)。届出表示の一部を切り出し、「歩行能力の改善」などと広告したことで、処方薬と同じ表現になり、「ひざ関節など一部への作用を超えて『歩行能力』全体に効果があるように受け取れる」(監視指導・麻薬対策課)として厚生労働省が薬機法違反のおそれを指摘。消費者庁の指導により届出撤回が相次いだ。

 昨年4月には、消費者庁による健康増進法に基づく115社の一斉指導が行われた。対象は、「認知機能の維持」等の表現。「図形を覚える力」など確認された機能が認知機能の一部であるにも関わらず、認知機能全体に機能を及ぼすかのようにみえることが、医薬品的効果表現につながるとして問題視された。

 これを受け、業界団体の健康食品産業協議会は今年6月、広告自主基準を改定。「血圧を下げる」等の届出表示の切り出しにより医薬品的表現になる場合は、「サポート、助ける、役立つ等」の補完用語をつけるよう例示し、”切り出し表示”をルール化した。

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 ”切り出し表示”を直接問題にしていないが、さくらフォレスト事件で違反対象になった領域は、「血圧低下」「中性脂肪低下」「コレステロールの酸化抑制」。いずれも生活習慣病治療薬が存在する慢性疾患領域だ。「医・薬」に近接する領域として、行政サイドも制度育成より監視に比重が置かれているように思える。

 慢性疾患領域をめぐる「食」と「医・薬」の相克も強まっている。今年2月には、大正製薬の「アライ」が、肥満症の治療薬として30年ぶりに承認を得た。「肥満」と病気の「肥満症」は異なる。利用には、体重や腹囲の記録、定期的な健康診断などの条件を薬剤師が確認した上で販売するなど購入のハードルがあり、市場への浸透は限定的との見方もある。ただ、国内でOTC医薬品として承認を得るのは初めてだ。

 また、日本OTC医薬品協会は今年8月に行った会見で、慢性疾患領域におけるスイッチOTC化を政治や行政に働きかけていく方針を発表した(6面に関連記事)。協会は、今回の処分について、「OTCはエビデンスがあり国が認めたもの。機能性表示食品はそうではない。品質でいえば気分の問題、安心感もあるだろうし最終的には生活者の選択。ただ、違いが分かるようにするのは企業の責任。あたかも疾病の改善につながるようなことを言うのはアウトだ」と見解を話す。「未病」をめぐる「食」と「医・薬」の調整がどう図られるかも今後の規制に影響を及ぼすことになる。(つづく)

 
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