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消費者庁、機能性の制度改革へ<「規格基準型」を構想> 「企業自治」の魅力削ぐ可能性

2023年10月12日 12:00

 消費者庁が機能性表示食品に「規格基準型」を導入する構想を描いている。届出実績が豊富で科学的根拠が一定程度定まったものを対象にする考え。来年度以降、導入に向けた調査事業や議論を予定する。ただ、さくらフォレスト事件を機に提示された改革案は、制度維持を目的にした消極的な育成策。企業自治による柔軟な表示が可能な制度の魅力を削ぐ可能性もある。
 








「健康食品に過度の期待ない」

 「残念ながら健康食品は、健康・栄養政策の中で過度な期待を持たれているわけではない」。10月4日、健康食品産業協議会主催で行われたセミナーで、消費者庁の依田学審議官(食品担当)はそう切り出した。

 セミナーは、審議官の出席と併せ、機能性表示食品に対する景表法適用が演題として告知されていた。さくらフォレスト事件を受け、今後の展望に不安を抱く事業者の関心を集め、定員70人のところ、定員を超え、多くの立ち見が出るほど詰めかけた。発言は、ようやく実現した機能性表示に湧く業界に冷や水を浴びせた。

 依田審議官は、消費者庁のスタンスを「健康・栄養政策を担う厚生労働省の考えを消費者に伝える立場」と説明。来年度に始まる健康日本21(第三次)は、栄養バランスの取れた食事、適度な運動、睡眠等を中心としたもので、「栄養の偏りや生活の乱れを安易に健食で解決しようとせず、補助的なもの。健食を食べなさいとは言っていない」と、釘を刺した。

 機能性表示食品制度は、安倍晋三元総理の号令を受け、15年4月、健康寿命の延伸への貢献を期待されてスタートした。食と医の狭間で制約を受ける機能性表示に、事業者裁量による「届出制」を採用することで門戸を開いた。制度の過去への回帰を告げる審議官の発言は、国の健康政策の転換を意味する。

届出実績豊富な成分を規格化

 制度改革で、消費者庁が構想するのが、機能性表示食品への「規格基準型」の導入だ。

 保健機能食品制度は、建付けの異なる表示制度が混在する。栄養機能食品は、国の規格基準に沿い、事業者が自由に活用できるが、表示範囲は限定的かつ分かりづらい。トクホは、国が個別に許可するが、審査手続きの時間とコストが課題。解消を図り誕生したのが機能性表示食品だ。

 だが、届出表示の「根拠」に踏み込む景表法処分は、同一根拠の届出製品を含め騒動が拡大した。依田審議官は、さくらフォレスト事件の一因が行政の関与が一切なく、制度的に不安定な環境に置かれる届出制にあると指摘。

「(国が)許可したものでないとなる規制当局が合理的根拠とは言えないとなれば景品表示法の対象になりうる。制度的に繰り返されないとも限らない」、「永続的にこの制度に安住してよいのかと申し上げたい。もう少し国に関与させてほしい」と、改革に理解を求めた。

 消費者庁は、来年度の予算要求(科学研究費)で諸外国の表示制度を調査。国際整合性を意識した制度設計の見直しを検討する。

 規格基準は、ギャバやEPAなど、届出実績が豊富なものを選び策定。制度内でこれを実現するか、トクホ、栄養機能食品など隣接する制度を含め設計の見直しを行うかは「今後議論する」(依田審議官)という。これと併せ、食品安全委員会、消費者委員会への諮問が必要なトクホも審査手続きの簡素化を検討する。

表示の自由度がなくなる

 「規格基準型」のメリットは、企業努力で研究レビューの質向上を図る必要がないことにある。トクホのような疾病リスク低減もうたえるとする。許可表示となれば、景表法処分のリスクも減るだろう。依田審議官は、国の策定した規格に合わせることで、海外のヘルスクレーム制度との相互調整など、国が海外進出を積極的にサポートするという。「許可制」と「自己認証」の要素を併せ持つ安定的な制度は、景表法リスクに不安を覚える事業者に魅力的に映るが、果たしてそうだろうか。

 最大のデメリットは、表示の自由度がなくなることだ。健食と機能性表示食品の関係と同様、国が定める「規格基準」の誕生は、機能性表示食品の位置づけを相対的に下げる可能性もある。

 海外進出のサポートを掲げる背景には、昨年末、「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」が示されたこともあるだろう。輸出促進のネックは、諸外国と異なる食品表示制度。規格化で国際的な整合性を取れば、国間の円滑な協議が進むという狙いだ。ただ、実行戦略で語られている重点品目は、生鮮食品、日本酒、醤油、味噌など一部の加工食品。サプリメントへの言及はない。「農水省主導で、規格化も生鮮食品の機能性表示食品を念頭に置くのではないか」(業界関係者)との声がある。

 規格化は、消費者庁にもメリットがある。届出数の増加に伴い、届出業務は煩雑化している。平均50日とされる届出の差戻し日数、担当者により異なる対応の指摘に辟易しているのは、消費者庁自身だろう。

                       ◇

 消費者庁は、「許可制であれば消費者庁が責任を持つ。届出制の廃止はないが、健全な形で発展していきたと思うとビジネス上もどうなのか。誇大広告で打たれれば、同一根拠の製品も一網打尽になる危うさがある」(同)と、現行制度の維持を図るための規制の必要性を説く。ただ、消極的な育成策に将来を見出せるか。ようやく手にした「自由」を手放してよいか、業界は、「規格基準型」構想に慎重に対応する必要がある。


透明性高く機能うたえる、国が一定関与し海外展開も後押し

<「規格基準型」構想の狙い>

 消費者庁の依田学審議官に発言の真意と「規格基準型」検討の狙いを聞いた。

 ――そもそも規格基準型の話はどこから出てきたのか。

 「消費者庁からの問題提起だ。あらかじめ省令や基準を告示することで、要件に従い許可申請すれば販売できる。審査期間もない」

 ――導入の影響は。

 「届出実績が豊富な成分は差別化できない。誇大広告をすれば景表法の規制当局が目をつける。自由な表現はできないが、エビデンスの挙証責任を個々の事業者が負う必要はない」

 ――機能性表示食品制度の中でやるのか。

 「今後の議論。トクホのバリエーションを増やすやり方もある」

 ――行政もこれまで以上に関与する。

 「審議会で有識者の意見を聞いて基準を作る。そうなれば差戻し日数、担当者の対応のムラはなく、トクホ同様、透明性高く機能をうたえる」

 ――ルール化の検討はいつ始める。

 「来年度予算で科学研究費を要求している。まずは諸外国の表示制度を調査する。いずれにしてもオープンで議論する。健康政策の中で、健食は皆さんが思うほど厚労省に期待されていない」

 ――発言は疑問だ。健康政策の中で機能性表示食品のウエイトは小さいのか。

 「それほどない」

 ――制度は、成長戦略の一環で導入された。

 「経済産業省を中心とするヘルスケア産業の観点では期待されているのだろう。ただ、健康政策の面では、健康長寿の延伸にサプリメントを摂る方がよいというデータはない」

 ――なぜ調査しない。

 「そこは厚労省(の所管だ)」

 ――健康長寿の延伸という社会的要請の中で導入された。

 「理念は分かる。健常者に効くとは何か。予防医療になるが、(ある状態を)放置したら悪くなるものを維持できますという立証は中々難しい。だから事業者も苦労している。例えば肥満に効くと言った時に、どう考えても(広告で強調されるほど)解消するはずはない。だから規制当局も優良誤認と断じる。届出制もあまり悪ノリせずやらないと景表法が乱発され、制度そのものがおかしくなる。さくらフォレスト事件を機に保健機能食品のあり方を真剣に考えないと今後の発展性に危機感を持っている」

 ――それほど重く受け止めた。

 「いくら事業者がエビデンスをブラッシュアップしても、表示との関係では合理的な証明にならない。許可であれば行政庁が営業権を付与することになる。どちらを摂るのかということだ。届出制を否定しないが法的には非常に危うい。許可以上の表現をしないトクホの方が継続的に流通できるのではないか」

 ――景表法上の根拠の考え方と制度上の根拠の考え方は違う。

 「違う。今までは不文律的にエビデンスがあるから大丈夫となっていたと思うが、そこに踏み込んだ。規制当局は科学的かどうかは関係ない。実験のやり方がおかしい、合理性があるかどうかを詰めている。すべて弁護士がやる」

 ――根拠の是非の判断は難しい。

 「エビデンスが妥当かは悪魔の証明だ。ある地点で合理的な根拠として届出しているからよいともならない」

 ――問題点が明らかにならないと今後の届出に活かせない。

 「景表法と食品表示法の整合性をとった運用をしなければならないとは思う。ただ、透明性の高い基準を作らないと届出制を維持するだけでは難しい。許可制でもう少し関与させてもらえないかということだ」

 ――根拠確認で事業者の回答に消費者庁が回答しないのはなぜなのか。

 「是正命令に至らない段階で撤回の申し出があった」

 ――2件残っている。

 「それは今相談している。平等原則、公平性の観点からも個別に措置する可能性があることは申し上げている。さくらフォレストで優良誤認と判断された根拠と同じ証拠、表示をしていれば当然、景表法の執行当局としては動かざるを得ない」

 ――販売していない。

 「していなくてもだ」

 ――景表法執行において平等原則はあまり意味を持たない。

 「ただ景表法サイドとしては届出根拠が合理性を欠くと判断した。同じ判断は他にもあってしかるべきだろう」

 ――平等原則を言うなら、86件も対象だ。

 「もちろんだ」

 ――食品安全行政の移管について。健康被害情報収集はどのような考えを持っているか。

 「指定成分の指定は厚労省と共管になる。情報も消費者庁に集まる。販売禁止をする権限もくる。これまで効果の有無で景表法の問題があったが、安全性の判断もする組織になる。健食に対する消費者庁のスタンスは変わる。食品表示部部局は業界の健全な発展を願っているが、消費者庁全体のスタンスは、健康政策の中で摂りすぎてはいけない。受診勧奨、消費者啓発という意味で健食は必ずしもウエルカムではない」

 ――規制のスタンスが強くなる。

 「それがもともとのスタンスだ。加えて安全性もある。推奨するという立場にはならない。将来的に健食の健康機能をうたってよいのか、という時代になるかもしれない。規制強化と言われても、持続的に発展させていくには行政が一定程度関与した方がよいのではないか。相互認証を通じて世界展開を図る上でもそのほうがよい」
 
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