"ネット販売のインフラ"の行方

2012年10月18日 17:49

2012年10月18日 17:49

 日用雑貨のネット販売を巡り、ここに来て慌しい動きが出てきている。かねてから話題を集めていた法人向けオフィス用品通販最大手のアスクルによる日用雑貨のB〓C通販サイト「LOHACO」が10月15日から始動。日用雑貨ECの最大手、ケンコーコムは約7年間にわたって実施してきたアマゾンとのドロップシップ契約を来年1月に解除する。住商系で日用雑貨のネット販売を行なう爽快ドラッグは12月から開始予定の大手携帯電話キャリアの直販サイトを介して日用雑貨の販売を始める。

 こうした動きの背後には、インターネットビジネスのインフラを支配してきた"巨人たち"、つまりヤフー、楽天、NTTドコモの存在が見て取れる。ヤフーは今年5月にアスクルの筆頭株主となっているし、楽天も今年6月にケンコーコムを子会社化している。爽快ドラッグが連携する相手先の大手携帯電話キャリアとはドコモである。日用雑貨EC各社の直近の動きには、この3社の意思が強く働いていることは間違いあるまい。そして"巨人たち"をこうした動きに駆り立てる理由は現状、ネット販売の王者として君臨する「アマゾン」に対する焦りだろう。そのため、日用雑貨に強い通販企業に出資したり、連携することで日用雑貨ECのシェアを抑えにかかっている。今、ここを抑えておかねば、のちのちアマゾンにネット販売のインフラを牛耳られる恐れがあるからだ。

 ネット販売が世間から認知されて久しいが、一般消費者が日常的にネット販売を買い物の1つの手段として利用するようになったのはつい最近のことで、スマホやタブレット端末の普及により、これから本格的に、そうした傾向は顕著になっていくことが予想されている。ネット販売が通常の買い物手段となっていくと必然、ECの主役に躍り出ることになるのは日用雑貨であろう。
 日用雑貨は重くてかさばるものが多く、そもそも通販購入の利点は多い。また、誰もが生活する上で必要不可欠であり日々、購入せざるを得ないモノである。そうした商材の購入先となれれば、入ってくる売り上げのボリュームも大きなものになるだろう。そして何より大きいのは消耗品である以上、頻回な利用が見込め、「馴染みの店」になれる点だ。

 日用雑貨のECで一定のシェアを獲得できれば、業績面でも顧客数でも他社よりも優位に立て、何より「普段、日用雑貨を買っている馴染みのところ」として、他の商材もここでまとめて購入しようという"ネット販売のインフラ"という存在となれる可能性が出てくるわけだ。そうなればECのみならず、「有望な売り場」としてモール事業など関連サービスにおいても圧倒的に有利なポジションを獲得することも可能となってくるわけだ。

 現状、その地位に最も近いと目されるのは多様な商材を安価に揃え、配送も迅速かつ無料であり、圧倒的な存在感をみせるアマゾンだ。"ネット販売のインフラ"に向け、急ぎ足で歩みを進める同社を止め、この牙城を崩せるのは先の3社か、または新手のダークホースなのか。いずれにせよ、ここ数年が勝負となりそうでその行方が注視されそうだ。

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