通販各社のアジア進出に期待

2013年03月07日 11:06

2013年03月07日 11:06

 ジュピターショップチャンネルがタイに進出する。親会社の住友商事や現地の有力小売事業者とともにタイに現地法人を新設し、日本と同様の"24時間ライブ放送型テレビショッピング"というビジネスモデルで通販専門放送を6月からスタート。JSCの礎を築いた同社の元社長である大橋茂氏をタイ現地法人のトップに送り込むなど、万全の体制を整え、5年後にはタイで最大規模のテレビ通販事業者を目指すという。日本のテレビ通販最大手がどこまでやれるのか、まずは期待したい。

 ここ数年を振り返ると、日本の通販企業のアジア進出は順風満帆とは言えないものだった。これまでアジア進出の主戦場と言えば、急激な経済発展を遂げた中国だったわけだが、その中国に楽天をはじめとする仮想モールやスタートトゥデイといった有力ネット販売事業者などが日本で培った事業ノウハウを軸に事業展開を進めていった。しかし、結果としては「惨敗」。その後は潮が引くように撤退もしくは事業の縮小、戦略再構築を余儀なくされた。

 尖閣問題など致し方ない問題による逆風はあったが、失敗の主因は「日本で成功したビジネスモデルに依存しすぎたこと」ではないか。昨年、楽天が中国での仮想モール事業から撤退する際の敗戦の弁は「類似の通販サイトの参入が増え、過当競争になっていた」とのことだった。楽天が日本で成功を収めることができた要因は当時、そのビジネスモデルがほかにはないユニークなものだったためであろう。中国ではすでに国内勢が様々な通販サイトや仮想モールを展開しており、そこに後発で、しかも今となっては特段、珍しくもないモデルの日本の仮想モールが出てきたところでうまくいくはずがないのは道理なのかも知れない。

 また、「日本のものは優れているので海外でも受けるはず」という思い込みもあったのではないか。しかし、商品の良さだけではモノは売れない。アパレル1つとっても、例えば日本では「皆が持っていない知る人ぞ知るブランド」が人気で、そうした商品をラインアップするECサイトも事実、活況だが、中国ではまだ「誰もが知っている有名ブランド」に人気が集中する。国が異なれば消費者の"感覚"も異なるのは当然だが、日本での成功体験と「思い込み」から容易には脱せず、惨敗を喫する羽目になったのではなかろうか。

 しかしながら、海外、特に成長著しいアジア市場は通販事業者にとってもやはり魅力的なマーケットであり、失敗を繰り返したとしても挑戦する価値はある。ショップチャンネルのみならず、日本の通販関連企業のアジアへの進出については、再び盛り上がりを見せ始めており、トライステージはベトナムで、オークローンマーケティングもタイおよびフィリピンで事業を開始する意向。マガシークも中国の大手仮想モールへの出店を加速させている。矛盾するようだが、過去の成功体験は捨てつつも、それらを進出先の国々にあわせて柔軟にカスタマイズして、「日本での"強み"とは少し違う"強み"」を作り上げて欲しい。そしてアジア各国で「日本の通販」が当たり前に席巻する日が来ることを期待したい。

カテゴリ一覧