ヤマトは品質への期待に応えよ
ヤマト運輸が展開する「クール宅急便」で、一部の営業店が社内ルールから逸脱し、不適切な温度管理の中で仕分け作業をしていたことが明らかになった。10月25日に朝日新聞が報じたもので、情報提供者が撮影したとされる作業風景の動画から、ヤマト側も現場で不適切な作業が行われていたことを認めている。全国約4000の営業店に対して行った緊急の聞き取り調査で、全体の5%に相当する約200店でルールが守られていない恐れがあることが判明するなど、事態は深刻だ。「クール宅急便」はヤマト運輸の看板商品であり、食品を扱う通販事業者の利用も少なくない。ヤマト運輸は、商品配送を中心に通販業界を支えるプレーヤーとして、サービス品質への信頼を揺るがしかねない今回の問題を真摯に受け止める必要があろう。
朝日新聞の報道は、情報提供者が提供した都内の営業店での「クール宅急便」の仕分け作業映像などをもとにし、保冷用コンテナの扉が開けられたまま仕分け作業、「冷蔵」のシールが張られた荷物がクールコンテナの外に置かれた状況など、温度管理の不備を指摘している。
ヤマト運輸の営業店では「クール宅急便」について、他地域から届けられた荷物や、担当エリアで集荷した荷物を幹線輸送用の保冷コンテナへの積み下ろしや仕分けなどを行っており、1ボックス(容量20リットル)の仕分け作業を5分以内、外気に触れる時間を30秒以内とする社内ルールを設けているが、同社でも問題の映像を確認した結果、ルールから逸脱した仕分け作業が行われていると判断したという。
その後行った全営業店への聞き取り調査で、全体の5%に相当する約200店でルールが守られていない恐れがあることを把握。この調査結果について、同社の森日出男常務執行役員は「(現場でルールが守られているかどうかの)最終的な確認が不足していた」と説明したが、やはり、営業店の管理体制に隙があったと言われても仕方があるまい。
無論、全国4000の営業店を完璧に管理することは難しい作業ではある。だが、「クール宅急便」に限らず、一般の消費者や通販など荷主事業者が、"クロネコヤマト"のサービス品質に期待していることを考えれば、現場の最前線である営業店のオペレーションをよりキメ細かくチェックされるべきだったと言え、サービス品質の一層の向上を図る上でも、重視すべき事項であるはずだ。
ヤマト運輸はこれまで、荷主の先にいる受け手の顧客の視点に基づいた独自性の高いサービスを開発・提供し、通販市場の拡大に寄与してきた。その功績は評価されるべきものだろう。今回の「クール宅急便」のルール運用問題は、ベースにある"顧客視点"の考え方をどこかで見落としてしまった観もあるが、グループの「バリュー・ネットワークキング」構想に基づき、さらに高度化されたサービスを提供していくことを考えれば営業店の役割は大きくなるはずだ。その意味でもヤマト運輸は、早急に再発防止策を策定し、現場のルール運用と"顧客視点"の徹底を図り、サービス品質に対する通販事業者などの期待に応える必要がある。
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朝日新聞の報道は、情報提供者が提供した都内の営業店での「クール宅急便」の仕分け作業映像などをもとにし、保冷用コンテナの扉が開けられたまま仕分け作業、「冷蔵」のシールが張られた荷物がクールコンテナの外に置かれた状況など、温度管理の不備を指摘している。
ヤマト運輸の営業店では「クール宅急便」について、他地域から届けられた荷物や、担当エリアで集荷した荷物を幹線輸送用の保冷コンテナへの積み下ろしや仕分けなどを行っており、1ボックス(容量20リットル)の仕分け作業を5分以内、外気に触れる時間を30秒以内とする社内ルールを設けているが、同社でも問題の映像を確認した結果、ルールから逸脱した仕分け作業が行われていると判断したという。
その後行った全営業店への聞き取り調査で、全体の5%に相当する約200店でルールが守られていない恐れがあることを把握。この調査結果について、同社の森日出男常務執行役員は「(現場でルールが守られているかどうかの)最終的な確認が不足していた」と説明したが、やはり、営業店の管理体制に隙があったと言われても仕方があるまい。
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